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樋口金物(株) 金本善成専務 【平成30年05月28日掲載】 |
「地域に溶け込む」 事業承継M&A、本格始動から1年 |
祖業を守って 鉄で攻める 金物店の「原則原理」、会長から学ぶ日々 |
鋼材流通業の「大阪鐵材商事」(大阪市浪速区、梁川泰人社長)の持ち株会社「テツザイ」(同前)は平成28年12月に建設資材販売の「樋口金物」(滋賀県甲賀市水口町)を完全子会社化した。事業承継型のM&Aだ。それに伴い、大阪鐵材の梁川社長、金本善成課長代理がそれぞれ樋口金物の社長、専務に就任。また、創業家3代目当主で前社長の樋口孝一氏は会長として2人を支える。 |
■まずは樋口金物の事業の現状について教えてください。 |
「当社は主に滋賀県の地元ゼネコンを取引先としており、これらゼネコンの甲賀市およびその周辺地域の現場を中心に金物資材を配達・販売しています。私は昨年3月に着任し、この1年間は祖業であり本業の金物資材の営業活動に集中しました。樋口会長の指導のもと、この商売の原理原則を頭と体で理解し、引き継いでいくためです。 |
■売上高が前年比で約2割増加した。その要因は。 |
「経営者は変わりましたが、営業体制は維持し、社員には従来の顧客対応に専念してもらいました。そのうえで、私が自ら飛び込み営業を始めています。もともと当社の営業スタイルは『受動型』で、現場所長や次席から声がかかり、それを受けて営業に向かうケースが殆どでした。しかし、今後の事業展開を考え、これまでは配達地域外だった遠方の現場や取引実績のないゼネコンの現場にも営業をかけ、そのうち数か所から仕事をいただくことができました。簡単に言うと、いわゆる『プッシュ型』の営業によって新規の売り先を増やし、その結果、従来の扱い品の売上が伸びたということです」 |
■一般資材以外にも商材を増やしたということですが。 |
「一昨年の12月に大阪鐵材のグループ会社となり、それと同時に商材の幅も広げました。具体的には、鉄筋やコルゲートパイプ、フトンカゴといった一次製品や二次製品を新たに取り扱っています。ただ前述の通り、昨年は一般資材の営業が最優先であり、鉄鋼製品についてはPRを控えていました。実は親会社のことも今はあまり知られていません。一部のお客さんから『君が後継者の金本君か』と聞かれる程度です。まだまだ地域の金物店という位置づけですが、今年からは鉄鋼製品も地道に売り込んでいきます。やはり、これに取組まないと当社の成長は見込めません。あわせて飛び込みも続け、営業エリアも広げていきます」 |
■それでは、建材を売っていくうえでの強みは何でしょうか。 |
「例えば、今年の4月に『キーストーンプレート』という建材を北陸新幹線の現場に納めました。新体制になって初となる建材の実績で、メーカー曰く『プロジェクト案件』です。当社はこの現場に資材を配達していましたが、ある日、JV業者から『納期で困っている。他の大手商社にもあたったが全く手配できない』と相談を受けました。緊急の納期対応は親会社である大阪鐵材の最も得意とするところです。連携して製造元の新日鐵住金と調整を重ね、埼玉工場からの直送で何とか間に合わせることができました。この事例のように、ワンストップオーダーでの対応力は当社の強みの一つと言えるでしょう」 |
■建材の営業展開についてはどのようなステップで進めていきますか。 |
「今年は成長に向けた種をまき、来年はそれを芽吹かせる。それくらい長い時間軸で、じっくり腰を据えて取り組んでいきます。当社では、甲賀忍者にちなんで『にんじゃ作戦』(忍耐強く・じわじわと・やることは全てやる)と名付けています。 |
(つづく) |
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