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大阪市都市計画局 高橋徹局長  【平成30年05月28日掲載】

大阪のまちづくり

都心・臨海に描く大きな計画

うめきた2期先頭に市街地更新

夢洲 万博・IR―思い切った未来社会をデザイン


 大阪市では現在、都心部と臨海部を二眼レフとし、それぞれにおいて新たなまちづくりに向けて施策を進めている。都心部では、うめきた2期区域の開発と市内各エリアの活性化を目指し、臨海部では、夢洲を中心に万博誘致やIRの立地を描いている。それら計画の推進役となるのが大阪市都市計画局で、高橋徹局長は、「まちづくりの主役は民間事業者であり、我々はそれらを誘導し、支援するのが役割」と話す。その高橋局長に、うめきた2期区域や臨海部での取組みについて聞いた。

■まずは、大阪のまちづくりにおける都市計画局の役割から。

 基本的なスタンスとしては、大阪、関西の成長を支える拠点やインフラの整備とともに、地域の魅力を高めるという、この2つを両輪としてバランスを取りながら施策を進めています。この中で、成長を支える拠点整備では、都心部と臨海部を意識しながら取り組んでいます。都心部ではうめきた2期、臨海部は夢洲を象徴的なプレジェクトとして、二眼レフとして位置付けて、それぞれ計画を進めていきます。
 都心部では、うめきた2期だけではなく、JR環状線の内側の約2800ヘクタールの区域も視野に入れ市街地の更新に取組みます。この中では、都心の再編成を行う地域として、うめきたはじめ、中之島、御堂筋、船場、難波、天王寺の各エリアを重要拠点として、計画的に更新を進めることとしており、そのトップランナーがうめきた2期と捉えています。

■そのうめきたでは、5年前に1期事業がグランフロント大阪として賑わっています。

  1期事業では、中枢拠点として建物を中心とした開発が行われました。大阪の床需要が横ばいとなっている中で、新たな起業を興していくために「ナレッジキャピタル」の概念を打ち出して、事業コンペを実施し、これが成功したと認識しています。これは、ハコモノと中身、機能をセットにした考えで、2期においても空間づくりと中身、機能をどうするかを考えています。既に開発事業者の募集は始まっていますが、募集にあたっては、「緑とイノベーションの融合」を基本テーマとしています。

■なるほど。

 うめきた2期では、区域の中心部約4.5ヘクタールに公園をつくり、機能的には関西の成長を支えるイノベーションを興すような仕組みを構築することとしています。1期では、川下においてマッチングを中心にした起業家を支援する仕組みづくりを行いましたが、2期では公園というフィールドがあることから、それを含めた基礎的なものを含めて、川上から川下も含めたイノベーションを興す仕組みを考えており、他のまちづくりのモデルともなるような先導的なまちづくりにしたいと思っています。
 1期事業のナレッジキャピタルにしても、コンペ当初はその概念をなかなか理解してもらえませんでしたが、結果として事業者の方々には、その概念を見事に具現化していただくことができました。そうしたプロセスを2期でも引き継いでいければとおもっており、2期での成功が、他のプロジェクトにも浸透していくと期待しています。

中之島、御堂筋、難波変身

■今後の取組みについては。

 うめきた2期のまちづくりでは、コンセプトに何を期待しているのかをコンペの中で示し、具体化にあたってはそれを都市計画の中に落とし込んでその仕組みを担保することが我々の役割であると思っています。ただ、まちづくりは、まちをつくった時点より熟成していくことが重要であると思っており、このため1期でも取り入れたエリアマネジメントにより、ビル所有者や地権者自らが街をコーディネートして、街をつくっていきたい、また、絶えず人が訪れるようにプロモーションやいろんなイベントにより賑わいを演出するなどの取組みも支援していきたい。こうした旗振り役も我々の役割だと思っています。
 このほか、中之島や御堂筋、難波においても、うめきたの開発に負けないような取組みを進めていきたい。特に中之島エリアには、川があり、国際会議場や文化施設が立地するなど、うめきたにはないポテンシャルを有しており、これらを十分に生かしたエリアにしたい。また、御堂筋は昨年完成80周年を迎え、御堂筋の将来ビジョンが打ち出されており、夢を描きながらシンボルストリートとして沿道のまちづくりを誘導していく使命もあります。
 難波エリアは、インバウンド効果を最も受けており、土地の公示価格もグランフロントを抜くなど勢いがあり、この勢いを一過性に終わらせず、まちづくり生かしていけるよう支援していきます。現在は、百貨店前の道路を遊歩道化し、賑わいエリアとするため、2020年の整備に向け今年度は実施設計の予算を計上しました。

■臨海部での取組みは。

  夢洲において万博やIRの誘致に向けた取組みが進められております。IRについては、その弊害を指摘する向きもありますが、きっちりと対策を講じ、大阪府市IR推進局が担当していますが、IRの立地が進めばと考えております。現在、夢洲は更地の状態で、既成市街地と違い一からまちづくりを行えるため、思い切った未来社会のデザインが描けるのかなと思います。
 また、咲洲コスモスクエア地区では、インバウンド効果を取り込むため宿泊機能やMICE機能を支援できるように規制緩和を行い、咲洲庁舎の改修やコスモスクエア駅前の土地を民間事業者へ譲渡してホテル等が整備されるなど、動きが出てきています。さらに万博やIRが決まれば、関連事業も動き出すと予想されることから、それらに備えた準備もしっかりと進めていきます。

■まちづくりの担い手である建設業界に対して期待することがありましたら。

 現在、人手不足が課題となっている中で、都心部での事業が動き出し、これに臨海部が動き出すと工事を担う建設業界の方々には多大な苦労をおかけすることになるとは思います。また、働き方改革への取組みと相まって厳しい環境にあるとは思いますが、支援と協力をお願いしたい。さらに、まちづくりの主役は民間であり、その民間のノウハウや知恵が発揮できるように、周辺環境整備や規制緩和、必要なインフラを整備することが我々の仕事であり、調整役、旗振り役となるが我々の役割です。
 大阪の成長とは、突き詰めれば人であり企業であります。人や学校、企業が大阪に戻ってきていただきたい。今は緩和されていますが工場等制限法により多くの大学が出て行った。特に大学を呼び戻すことも重要だと思っており、大学が戻れば若い人達も戻ってくる。若い人がまちに住むということは大事なことだと思っています。

■今後も大阪のまちづくりにご尽力下さい。

 
 高橋徹(たかはし・とおる)京都大学
工学部土木工学科卒、昭和60年3月同大大学院工学研究科修士課程修了、(平成6年6月MIT土木環境工学科修士課程修了)昭和60年4月大阪市総合計画局、同5月同局都市計画課計画係、平成7年4月計画局地域計画課主査、同8年4月財政局財務課主査、同10年4月計画調整局交通空港政策課主査、同11年4月同局都市計画課計画係長、同13年4月同局都市計画課長代理、同15年4月同局都市再生企画担当課長、同19年4月同局都市計画担当課長、同21年4月同局開発調整部長、同24年4月同局計画部長、同26年4月同局理事兼経済戦略局理事を経て、今年4月から現職に。58歳。


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