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日本基礎建設協会 脇雅史会長 (下) 【平成30年03月05日掲載】 |
一般競争 施工能力の見極め必要 インフラ整備は景気対策ではない |
■建設業界では、将来の担い手を確保するため、技能労働者に対して処遇改善に向けた取組みが進められておりますが、これに関しての考えをお聞かせ下さい。 |
建設企業としては、全ての作業員を正社員化するわけにはいかず、建設産業全体も多重下請構造になっている。この産業構造が良いか悪いかの議論は必要ですが、仕事全体の流れの中で必然的に出来上がってきたものでもあり、一概に否定できないところもある。この中では十分に仕事が回っているときは、大手ゼネコンは下請企業も大事にしてきた。しかし、経営が厳しくなってくると少しでも安くしようと、指し値や工期、賃金や勤務条件等で締め付けるなど、下請企業は徹底的にいじめられてきた。 |
■仕事を取るためにダンピング受注すれば経営を圧迫し、単価が下がると人が辞めていくという悪循環に陥っていく。 |
もともと建設業等のものづくり職種の人々は、自分だけ儲ければいいという精神構造ではない。一つのものを作るとき、下で働く人のことをどうでもいいとは思わない。そこが金融関係とは違うところで、チームとしてものを作る場合、メンバーにはそれなりに処遇をしてあげたいと思っても、安く請け負ってしまったためにできないこともある。善意だけでもないでしょうが、ものづくりの世界はそういった善意の構造があると信じていますから、契約関係さえちゃんとしていれば、自然に流れていくと思います。かつての元請と下請の関係のようにね。 |
■今後の建設業のあり方としては。 |
人口が減少する中でも1億人以上の人口がおり、先進国として維持していくためのインフラがどれくらい必要なのかは自ずと分かるはずで、そうなると今あるインフラも更新し、機能も維持しなければならない。例えば、家を建てたとしても30年や40年は持たず、維持費も嵩んでくる。日本の道路等の構造物もしかりで維持するためにはコストがかかります。それら維持費は決して小さくはないが、それを無駄なように言う人もいますが、そこはきちんとやらないと国として成り立っていかない。 |
■公共事業は景気対策とする見方もあります。 |
公共事業をキャッシュフローだけで見て景気対策として捉えることがおかしいのであって、ストック効果を見据えた上でやるものだ。経済効果は二の次で、景気対策で公共事業をやるのではなく、インフラ整備が遅れているから実施するという前提がある。景気の悪い時期なら刺激策にはなりますが、本来は景気浮揚のためのものではない。もともと公共事業はストック効果しか見ておらず、それが景気対策にも使われてきたというのが正しい見方で、今さらストック効果の見直しというのもおかしな話だ。 |
■事業量としてはどの程度が適正規模とお考えですか。 |
毎年、同じくらいの仕事をやっていければいいのではないか。業界内でもそれなりの競争があり、やっていけないところは潰れていくでしょうけど、若干のタイムラグはあっても、予算に見合った工事量があればいいのではないかと。ただ、予算の減り方に比べ業者の減り方の方が少ない。いずれは追いついてくるでしょうけど。 |
■ありがとうございました。 |
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日本基礎建設協会は、場所打ち杭協会を前身に、名古屋、大阪、広島、福岡等の関連団体と合併し、昭和47年3月に発足。同51年11月に建設業法による団体に認定され、同52年6月に社団法人、平成24年4月に一般社団法人に移行。現在、地中壁支部と関東、中部、関西、四国、九州に支部を置き、登録基礎工基幹技能者講習の開催等による基礎施工士の育成をはじめ、技術・工法の研究等を行っている。 |
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