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大阪府住宅まちづくり部 山下久佳部長  【平成30年01月25日掲載】

来年度事業の見通し等を語る

密集市街地整備 予算増額しさらに推進

除却跡地の緑化も検討

ベイエリアの活性化に取り組む


 大阪府住宅まちづくり部の山下久佳部長はこのほど、日刊建設新聞のインタビューに応え、今年度事業の経過や来年度の事業の見通しについて述べた。今年度は、密集市街地整備事業の中間年としてこれまでの事業検証と新たに今後の方向性を打ち出し、来年度予算も増額してさらに推進を図るとし、「事業規模も大きくなり、取組み自体もかなり進んだ」と手応えを語る。また、ベイエリア開発と淀川舟運を結んだ取組みなど、今後の事業展開にも意欲を示した。

■まずは来年度事業についてお聞かせ下さい。

 密集事業に関しては、平成32年度までに解消することを目標としておりますが、現在の整備方針を策定して今年度が計画期間の中間年にあたることから、学識経験者による専門的見地からの意見をいただき、これまでの事業検証と今後の方向性に関して昨年12月にとりまとめを行いました。
 その中で、対象区域2248ヘクタールのうち、現在のペースで行くと32年度までに約1500ヘクタールが不燃領域率40%を達成できるとの見通しを出しました。残りの約750ヘクタールについても、目標年次での達成に向けた取組みが必要であり、新たな推進方策による事業のスピードアップを図っていきます。
 来年度予算のうち、密集市街地整備で18億8400万円を要求しました。今年度当初より約10億円の増額で、平成23年度が1億2000万円だったことを考えると事業規模も大きくなり取組み自体もかなり進んだ感があります。

■なるほど。

 従来の取組みに加え、密集市街地では人口自体の密集度が薄れ、小中学校の統廃合が進み出していることから、そういった公共施設用地を活用することで、民間事業者の参画を促していきます。
 さらに木造賃貸住宅に関しては、除却を進めるため除却した跡地を緑化しようと考えています。更地にしたままでは固定資産税が跳ね上がることから、これまで空き家が放置されていることがありましたが、緑化を条件とすれば税率を据え置くこととし除却を進めようとするもので、各市との協議は必要ですが、当面、利用計画のない跡地については芝生化などで広場として暫定利用し、新たに建築する場合でも規制誘導により不燃化を実現すればいいと考えています。
 また、密集市街地内の危険性を区域で色分けするほか、行政としても都市計画道路を整備した後のイメージ図を現地で看板で示すなど、見える化にも力を入れていきます。ただ、議会からも密集市街地は単に危険な区域ではなく、昔ながらの佇まいなど良いものもあるとの指摘もあり、全てを除却するのではなく、地域に応じた方法を講じていくこととしました。

■うめきた2期も動き出します。

 昨年末から2次募集が始まりました。同区域では、都市公園事業と土地区画整理事業、JR東海道線支線の地下化と新駅設置の4つの事業からなり、府市で一体となって進めていきますが、提案の募集にあたっては、公園等の位置も変更可能としており、より優れたアイデアが集まるものと期待しています。まちびらきは2024年夏頃の予定です。また、なにわ筋線も事業化に向けて動き始めたことから、より利便性が高くなるものと考えています。
 このほか、景観の取組みにも力を入れることとし、今年「都市景観ビジョン・大阪」を策定します。この中では夜景を一つの売りにしようと思っています。景観に関しては市町村に権限委譲しつつありますが、このビジョンにより、大阪府として、トータルの景観の考え方を示します。31年度には、高石市と堺市が夜景に関する全国サミットを開催する予定で、これを機に大阪の夜景を紹介しようと考えています。また、百舌鳥・古市古墳群の世界文化遺産登録に向け、周辺地域での屋外広告を規制する条例を施行していますが、来年度、既成広告撤去に関する事業も進める予定です。

■そのほか「グランドデザイン・大阪」「グランドデザイン・大阪都市圏」への取組みは。

 ベイエリアの活性化に向けた取組みを進めます。夢洲では昨年「夢洲まちづくり構想」が策定されましたが、それ以外の築港等も含めたエリアでそれらと連動させながら活性化に取組みます。昨年夏には行政・関係事業者による情報交換も実施し、その中では、多様な交通手段により、各地区が相互のつながりを求めていることが解りました。そのため、咲洲からUSJまで船で巡り接続ルートを検討したり、自転車利用環境の向上も検討しております。
 また、淀川の舟運に関して、将来的には京都から枚方、守口を経て、ベイエリアに至る淀川の舟運拡大を考えています。昨年、まちの賑わいと連携した舟運として天満橋・八軒家浜と枚方を結ぶ観光船の定期運航が開始され、今後は枚方から上流への舟運事業も検討されています。さらに淀川下流においても昨年12月には、近畿地方整備局が十三大橋からUSJまでのルートについて社会実験を行いました。
 こういった舟運の取組みに加えて、淀川沿川の魅力的な歴史街道や沿川文化等を活かしたまちづくりができないかと、淀川沿川で活動されている民間の方々と八月にプラットフォームをつくり、現在、「淀川沿川広域連携型まちづくり戦略」の策定を検討しております。このほか、淀川沿いには自転車道が整備されており、先程も話に出ましたベイエリアとそれらをつなぐこともできればと考えています。

■建設業の担い手確保も重要ですが。

 高校生を対象とした現場見学会や若手技能者を対象とした表彰等を実施しておりますが、来年度は若手技術者や女性技術者を加点対象とした発注を考えております。現在、実施している実績申告型の中で、若手や女性の配置に加点するなど、新たな枠組みを構築していきます。また、業界の方々とも意見交換を行っており、意見や要望とともに、生の声を伺うことで、今後の参考にしたいと考えています。

■ありがとうございました。



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