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座談会 近畿地方整備局×近畿建設青年会議 【平成30年01月04日掲載】 |
「アイ・コン」「週休2日」への取組み 生の声 |
座談会出席者 | ||
近畿地方整備局 | ▽若尾将徳企画調査官 | (近畿地方整備局企画部) |
近畿建設青年会議 | ▽吉井久尚会長 | (奈良県・吉井建設代表取締役) |
▽桑原伝浩副会長 | (滋賀県・桑原組専務取締役) | |
▽才花毅副会長 | (兵庫県・才花建設代表取締役) | |
▽星山和義副会長 | (京都府・城産組執行役員顧問) | |
▽時岡健介副会長 | (福井県・時岡組代表取締役社長) | |
▽山本修嗣幹事長 | (奈良県・キタムラ営業部次長) |
若尾企画調査官 |
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座談会のもよう | ||
国土交通省では、アイ・コンストラクションの推進を掲げ、ICT施工等による建設現場での生産性向上を推進しているが、実際の現場では、これをどう受けとめているのか。 弊紙では、「現場の生の声」を探るべく、近畿地方整備局企画部の若尾将徳調査官と、近畿各府県の建設業協会青年部で構成する近畿建設青年会議のメンバーによる座談会を行い、ICT施工から週休2日への取組みについて語ってもらった。 |
増える実施率、大幅な時間短縮 |
【アイ・コンストラクション】 |
■まずは、アイ・コンストラクションについて整備局の取組みをお聞かせ下さい。 |
若尾 |
アイ・コンストラクションについては昨年度からICT土工を開始し、昨年度の実績では、発注者指定型で3件、施工者希望型はT型30件とU型が36件、契約済み案件で27年度の契約変更で追加した12件の計81件で実施しました。その結果、U型での契約が半分以下と希望者が少なかったことから、発注者指定型とT型を増やすこととし、昨年度まで土工量2万立方メートル以上だったT型を今年度からは5000立方メートル以上として、総合評価で加点することにしました。 |
■次に各府県での取組みを伺います。 |
吉井 |
アイ・コンストラクションの推進は担い手不足対策にも効果があると考えますが、現状では使用する機械等がリースのため使い勝手が悪く、自社で所有できるようになれば活用する機会が増えると思っています。 |
才花 |
事例が少ないですが機械を所有している企業もあります。当社の地域では直轄工事も少なく、兵庫県でも実情が把握できていないような気がします。私自身は民間工事で機械化施工を経験しましたが、単発工事のため継続性がなくノウハウが蓄積できないのが現状です。 |
時岡 |
一部では積極的に取り組んでいる会社もありますが、イメージとしてはコストと手間が掛かる気がしており、実施にあたっては費用負担していただければと思います。県内ではソフトメーカー主催の勉強会も開かれておりますが、未経験の会社は中身がよく解らないのが実情です。福井県は来年度から発注を予定されていることから、真剣に取り組む時期には来ています。 |
桑原 |
働き方改革の中でアイ・コンストラクションを取り入れたことへの検証が必要と考えています。当社も数件の工事を実施し、工期や作業時間短縮等のデータを収集しましたが、目に見える結果が出たとは言いにくく、試行錯誤しているのが現状です。 |
■具体的なメリットが出ていない。 |
桑原 |
社員に聞いても、作業時間が短縮したことはありましたが、それがアイ・コンストラクションの成果かどうか、ハッキリしない状況です。ただ滋賀県でも試行工事が出てきており、実績を積むうちに効果が解るのではと思います。 |
星山 |
ICT工事については当社では実績がなく、工事自体が直轄工事が殆どで京都府でも発注がなく、道のりは遠い感じです。都市土木では難しい面があるのかと思いますが、省人化に効果があれば有効だと思います。 |
山本 |
勉強不足、理解不足、活用不足がありますが、使いこなすだけの体制が業者側になく、便利だと思えるまでには至っておりません。 |
若尾 |
メリットを実感できないと言うことですが、これまでの実績のうち従来工事と比較して、起工測量で13時間、現場施工で240時間、現場測量で488時間が短縮されており、大幅な時間短縮が図れている工事もあります。また、昨年のICT工事は全て無事故無災害で安全性も向上しています。 |
■ICT工事の導入は避けられないものとなってきますが、そのための要望について。 |
吉井 |
今は現役の職員が手掛けている状況ですし、現状でICTの効果が出ていないのは、工事は熟練者がやっているからだと思っており、誰がやっても同等の成果が出た時に初めて成果が出てくる。そうなると需要も高まってくると思います。またスポット的な工事で機材を揃えることは難しく、レンタルでは覚束ない面もあり、自社で所有するには継続した工事や事業が必要になる。当社の場合、国の補助制度を利用して採石場等で転用できないかと計画しております。 |
桑原 |
当社では、建設業に興味はなくてもコンピューターが好きな人を活用できないかと検討しており、そういった切口で人材募集をかけようかと。まずは入口を広げていくことを考えています。 |
すべては担い手確保のために |
【週休2日制】 |
■次に週休二日制の取組みについて。 |
若尾 |
若者が建設業に入ってこない一因に休みがないことが挙げられます。働き方改革を推進する中で、建設業だけが週休1日と取り残されており、国交省挙げて週休2日の実現に取り組んでいます。地整管内では、土日完全休日化促進工事として、成績評価で加点するモデル工事を実施していました。 |
吉井 |
週休2日の必要性は感じていますが、専門工事では日給が減ることを嫌がっている者もいる反面、新規入職者には休みを希望する者もいる。直轄工事だけならある程度対応できますが、民間工事との兼ね合いをどうするか。社会保険に関しても、民間工事に特化したいとする業者も出てきています。 |
才花 |
当社の場合、現場は日曜日の休みを基本として、それ以外は休める時に休むこととしています。 |
時岡 |
当社は日曜祭日と土曜日は月2回としています。しかし週休2日になると作業日数が低下し、どこかで補填する必要があり、給与面に影響が出てくる可能性もある。また災害時には休日返上もあり、そのフォローも考えなければならない。また、ある程度継続して働かないと技術や経験が身に付かない部分もあり、その辺をいかにカバーするかも課題です。 |
桑原 |
休みを増やせば生産性は低下すると思います。その中で給与水準を保つためには一定の利益を確保する必要がある。ランクも落とさず受注も確保する上で、土木はICTにより生産性を確保できたとしても、建築はどうなるのか。また、休みを取るためには現場人員を増やす必要があり、そうなると規模の大きな工事が必要となる一方で、一つの工事に人員を取られれば、他の工事ができなくなるというジレンマがあります。 |
星山 |
若手に聞くと、土木では休みが増えつつあるが、建築はなかなか休めないと言う。どうやって休めばいいかわからず、上司にも相談しにくい。土木でも休みは増えたが、その分残業が増えている。桑原さんが言われたように、休みをとるために現場の人員を増やすと手持ちの受注だけでは利益が出ず、しかも求人募集しても集まらない状況で、このままでは今の若手も辞めてしまう可能性もある。また、日給月給の人が殆どで週休2日にすれば他の現場へいってしまう。社会保険もしかりで、適用除外となるような受注形態を模索しているところもあり、加入しても保険料の負担が経営を圧迫することになる。 |
山本 |
現場監督をしている友人の話ですが、自身が勤めている会社では、事務職は週休2日で、現場は日曜のみのため、一つの現場が終わった後にまとめて休みを取り、年間の休日数を調整するようにしていますが、まとめて休んでも1人で家にいても仕方なく、やはり家族と過ごす休日がほしいと言ってました。それが無理なら休日出勤分を対価で見てほしいと。また、現場の場合、着工から軌道に乗るまでは土曜日に休むことは難しく、落ち着いてからでないと日曜以外の休日は取れないのが実情です。 |
若尾 |
週休2日の場合、ICTと違い現場の規模には余り関係はありませんが、工期や賃金等で共通する課題があり、業界が一丸となって取り組む必要があります。このため、発注者協議会等を通して、府県や市町村での実施を要請していきます。 |
■発注者へ要望がありましたら。 |
吉井 |
全てが担い手確保につながっており、それらに関する制度の改善等をお願いしたい。若者を雇用しても現行制度ではなかなか育っていかない。そのあたりを整備すればスピードも上がってくると思います。 |
時岡 |
工事と工事の間が空きすぎることで、時間を持て余していることも若手にはよくはなく、平準化により継続しての受注が望ましいです。また、災害出動に関してもその後に何ら補償もなく、そういったことに関わった事に対するステータスのようなものが与えられないかと。それらも含めて業界全体で考える必要があると思います。 |
桑原 |
10年後や20年後に重機等を動かせる社員が何人残っているか。災害時に直営でできず協力会に頼まなければならない状態では、地域業者としての役割が果たさせなくなる。既に社員の高齢化も進んでおり、先行きに懸念があります。 |
星山 |
若い人達が入ってくるように、建設業自体がイメージを上げる必要がある。ハウスメーカーに比べて、遙かにやり甲斐のある仕事だと思いますし、その辺が若者に見えていないのではないか。そこをアピールしていくことも重要です。 |
山本 |
工事時期が集中するとマンパワーが不足するため、施工時期の平準化が必要だと感じています。 |
若尾 |
20年後を見据えた場合、災害は必ず起こるものであり、早期の復旧作業のために地域業者を維持していくことについて今のうちに手を打たなければその時になってからでは遅すぎます。しかしながら企業単位でできることには限りがあり、業界全体で何をすべきかを考えていく必要がある。そういった意味からも青年会議の皆さんには期待しております。 |
■ありがとうございました。 |
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