日刊建設新聞社   CO−PRESS.COM
大阪府危機管理室 武井義孝室長  【平成29年09月25日掲載】

24時間365日体制 安心のまちづくりに挑む

大地震等の対応、減災基本に

新・地震アクションプラン推進


 地震や台風、局地的豪雨など、多発する自然災害に対する備えの必要性は、年ごとに重要性を増してきている。大阪府における災害対応を担当する危機管理室では、災害発生等の非常時への備えるとともに、防災計画やBCP計画の策定など、24時間・365日体制で業務に取組み、近年では、国民保護の観点から武力攻撃に対する措置までをカバーしている。その危機管理室を統括する武井義孝室長に、各種対策の状況等を聞いた。

■近年は、地震や豪雨等の自然災害が多発しておりますが、これら災害への対応、平時における業務など、危機管理室の体制と役割等についてお聞かせ下さい。

 昨年は熊本地震や鳥取中部地震、今年は7月に九州北部豪雨など、自然災害は多数発生しております。危機管理室では、自然災害はもとより、航空機や列車等による大事故、武力攻撃事態における国民の保護などの危機事象全般に対応するとともに、防災計画の策定や救援物資等に関する業務を実施しています。
 組織構成では、知事の直轄として危機管理監をトップに、危機管理室長が防災企画課、災害対策課、消防保安課の3つの課を統括します。また、7つの土木事務所に兼務職員として地域防災監等の職員を配置しており、私を含め総勢約90人体制で取り組んでいます。
 業務体制では、日常業務に加え、危機管理室と他部局職員の2名体制で当直を24時間365日実施するほか、災害対策要員として副知事、危機管理監、危機管理室長等が府庁周辺の宿舎に常時待機しています。また、休日や夜間に大阪府内で震度五弱以上の地震が発生した場合は、417人の緊急防災推進員が1時間以内に指定施設に参集し、初動体制の確立や被害情報の収集と府災害対策本部への伝達等を行うこととしています。

■非常時の体制は。

 自然災害等の規模に応じて段階的に体制をとります。風水害では警報発令時に防災・危機管理警戒班が設置、震度四では防災・危機管理指令部を、台風や震度5強で同警戒本部、震度6以上で災害対策本部を立ち上げます。これと連動して、各土木事務所が入っている府民センターには地域情報班が設置され、災害の規模等に応じて地域警戒班、地域連絡部と格上げしていきます。これは管内市町村の防災体制の把握や被害状況の情報収集や支援を行い、現地対策本部と府の災害対策本部との連絡調整にあたることとしています。

■これら非常時の体制を効率的に実施するには、日頃の訓練も重要であり、また、防災・危機管理の計画も必要です。

 訓練では、1月に阪神淡路大震災のメモリアルとして全庁で地震津波対策訓練を実施し、5月から7月にかけては河川氾濫を想定した水防活動の訓練である「地域防災総合演習」、土砂災害における風水害対策訓練などを、9月には、府域全域に緊急速報メールを一斉送信し、府民一人ひとりに命を守る行動を確認していただく、「大阪880万人訓練」を毎年、実施しており、今年は5日に実施し、松井知事も貝塚市の実動訓練に参加しました。また今年は、11月に「近畿府県合同防災訓練」を堺2区等で実施する予定です。
 計画に関しては、「大阪府地域防災計画」を、熊本地震の教訓等を踏まえ、今年3月に修正したところです。この防災計画を受け、府内市町村が地域防災計画を修正することとなっています。計画では「減災」の考え方を基本理念に、命を守り、命をつなぎながら、行政機能を維持し、経済活動を含めた迅速な復旧と復興のため、五つの基本方針を定めています。また、ミサイル等の武力攻撃から府民の生命・財産を保護することを目的とした「国民保護計画」も策定しています。

■近畿の場合、南海トラフ巨大地震に対する懸念が強いです。

 南海トラフ巨大地震については、今後30年以内に70%の発生確率といわれ、自然災害の中では一番大きな被害が想定されています。府の被害想定では、津波に対して約13万人が被災し、経済被害は約29兆円と試算しています。津波被害の原因の一つは、地盤の液状化により防潮堤が倒壊することによるものです。
 ただ、津波の到達時間は大阪府の場合、60分から120分とされており、避難する時間があることから、早期避難が実施されれば人的被害は約7800人程度まで減少します。
 府ではこの被害想定を踏まえ、「新・大阪府地震防災アクションプラン」を策定しました。ハード・ソフト対策により人的・経済的被害を限りなくゼロに近づけることを目指したもので、実施期間は平成27年度から36年度までの10年間、このうち集中取組み期間を27年度から29年度までの3年間としています。
 ハード対策では、事前予防対策として、防潮堤の液状化対策や水門等の耐震化、密集市街地対策等で、都市整備部や住宅まちづくり部など、関係部局がそれぞれに取組みを進めています。ソフト対策では、市町村とともに自主防災組織の活動支援、帰宅困難者対策の一環として、一斉帰宅の抑制や従業員用の備蓄等の呼びかけを行っています。

■関係機関との連携については。

 災害対策は行政や個々の防災機関だけではできず、また、それぞれに得意、不得意の分野があることから連携することは不可欠です。発災時は現場に近い市町村が応急活動を実施し、大阪府は市町村の活動を支援することになります。当然、国や他府県からの応援、民間の力も必要となり、それらの連絡調整も大阪府の役割となります。
 それら連携や調整には、「顔の見える関係」が重要であり、危機管理室では、それを今年のテーマに掲げ、大阪府防災会議や市町村危機管理部局長会議、各種訓練等、あらゆる機会を捉えて交流を心掛けています。また、民間事業者とは、250社と130種類の防災協定を締結しています。

■建設業界に期待することなどあれば。

 道路や河川、下水等は利便性の向上と併せ、安全・安心な生活基盤を確保するものでもあります。この中で橋梁や堤防の耐震補強工事、治水工事等は事前予防対策であり、さらに災害時の応急対応など、建設業の方々に常日頃から協力をいただいています。大阪府においても大規模災害が発生した場合、多くの人出や重機が必要となることから、それらを含めて、今後もご協力をお願いいたします。
 また大阪府では、消防団を中心に地域防災力を強化するため昨年、大阪府地域防災基金を設置しており、基金への寄付とともに、2025年の万博誘致に向けた支援と協力も併せてお願い致します。



Copyright (C) NIKKAN KENSETSU SHINBUNSHA. All Rights Reserved.
当サイトを利用した結果に関するトラブルなどに関しては、当社としては一切責任をとりかねます。