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大阪府都市整備部 井出仁雄部長  【平成29年05月29日掲載】

鉄道・道路のネットワーク充実

防災対策 着実に進める


 老朽化した道路や橋梁の維持・更新、防潮堤の耐震化、交通アクセスの向上など、府民の暮らしを支え、安全・安心を守る上で欠くことのできない各種のインフラ整備を担う大阪府都市整備部。今年4月に就任した井出仁雄部長は、それら事業を円滑に進めることが同部に課せられた使命としながら、「住み、働き、遊んで楽しい」大阪の実現に向けた取組みにも意欲を示す。その井出部長に、就任にあたっての抱負や今後の事業展開等を聞いた。

■まずは、就任にあたっての抱負から。

 都市整備部では、道路や河川等のインフラ整備を行っていますが、インフラは大阪や関西の成長を支え、さらに府民の安全安心を支えるものです。現在、万博やIR誘致など、大阪の成長を見据えた計画が打ち出されておりますが、それらを確かなものとするためにも、しっかりと整備していく必要があり、また、台風や豪雨等の自然災害へ備えておくことも重要。この2つを支えるインフラの整備と維持管理が、我々に与えられた使命と認識しています。
 さらに、大阪府では、インフラ整備が進んでいることから、それらの老朽化対策も課題です。特に流域下水道は、全国に先駆けて整備したことから、50年以上経過した施設もあり、その老朽化対策が必要となっています。このため平成30年度から地方公営企業法の適用に向けた取組みを進めていきます。これらの取組みにより、「住んで楽しい、遊んで楽しい、働いて楽しい大阪」の実現に貢献することが私の役割だと考えています。

■今年度の事業について。

 大阪と関西の成長に向けて鉄道や道路のネットワークの充実を図ります。鉄道分野では、平成27年度にモノレール延伸事業を意思決定し、今年度は平成31年度の現地着工を目指し、都市計画決定に向けた作業を進めます。道路関係では、淀川左岸線延伸部が事業化されたことから、国において整備に向けた調査や設計に着手される予定です。今年度に関しては、これまで懸案とされていたこれらの事業の芽を育てていくことになります。

■防災や減災対策では。

 地震対策では、南海トラフ巨大地震への備えとして、地震直後に防潮堤が倒壊し、避難する間もなく人命が失われる恐れのある箇所について緊急3カ年計画で実施していた防潮堤液状化対策が昨年度に完了したことから、引き続き残りの箇所についても着実に進めるとともに、木津川や尻無川水門の耐震化工事を実施していきます。
 治水対策では、寝屋川流域総合治水対策での北部地下河川で、地下河川では全国でも初めてとなる大深度地下使用に向けた手続きを進めるほか、寝屋川流域下水道中央(一)増補幹線で今年度末の供用開始を目指して整備を進めていきます。
 安全安心では、昨年9月に土砂災害警戒区域等の指定が完了したことから、今年度は指定区域での具体的な対策をまとめていきます。安全安心については、ハード対策だけでなく、逃げる・凌ぐ・防ぐの観点でのソフト対策も実施します。逃げるでは、住民のリスク認識向上や自主的避難等について、各市町村への情報提供を行うとともに情報共有を図っていきます。また、凌ぐでは、ため池の水位を低下させて雨水を貯留する方策や、河川では、計画高水位を上回った場合に溢れる時間を遅らせ、避難時間を稼ぐため、堤防強化等の手法を検討していきます。

■なるほど。

 また、まちづくりで関係では、箕面森町で企業用地ゾーン第1期20区画のうち残る2区画での誘致を進め、住宅ゾーンの里山住宅地区では今年6月から第2期エリアの販売を開始します。道路関係では、新名神高速道路の箕面・茨木北・高槻それぞれのインターチェンジに至るまでのアクセス道路を本線供用に合わせて供用できるよう整備していきます。このほか、大和川線や国道371号等の府県間道路についても着実に整備を進めていきます。

■現在、建設業界では担い手の確保育成が課題になっておりますが、現状をどうご覧になります。

 土木系大学生の建設業離れが顕著になってきていますが、これは建設業界に限らず、行政側にとっても職員の確保が課題となっています。原因には、いろんな側面はあると思いますが、特に中小企業では休日確保が問題となっております。我々としても、4週8休に向けたモデル工事を昨年度から試行しており、今年度からは土工量1000立方メートル以上の大規模工事を対象としたICT活用工事を実施するなど、人材確保と生産性向上につなげていきたいと考えています。
 また、年度末に工期が集中することから、施工時期の平準化に取り組んでいます。大規模工事では年度を跨ぐ債務契約としていますが、単年度工事の小規模工事では、可能な限り早期発注に努めていきます。このほか、河川工事では出水期前に契約事務を終え、出水期明けは直ぐに工事にかかれるようにするなど、平準化に努めます。
 さらに安全管理の徹底も訴えていきます。工事の安全管理には、発注者と受注者が一体となって取り組むことが不可欠で、双方のコミュニケーションを徹底し、日常的に安全意識の高揚を図り、事故防止に努めながら、3Kのイメージを払拭し、一緒になって業界の活性化に取り組んでいきます。

■ありがとうございました。

井出仁雄(いで・よしお)
昭和58年3月京都大学工学部大学院卒、同年4月大阪府採用、平成4年4月土木部都市整備局交通政策課主査(大阪高速鉄道主幹)、同6年9月土木部道路課主査、同10年4月交通政策室交通計画係長、同12年4月茨木土木事務所課長補佐、同16年4月同建設課長、同18年4月都市整備部交通道路室参事、同21年4月同道路整備課長、同23年4月茨木土木事務所長、同25年4月都市整備部交通道路室長、同26年4月住宅まちづくり部理事、同27年7月都市整備部技監。58歳。


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