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大阪鐵材商事 梁川泰人社長  【平成29年02月27日掲載】

甲賀市の建材金物店を承継

大阪の鋼材流通が新たな挑戦



 鋼材流通業の「大阪鐵材商事梶v(大阪市浪速区、梁川泰人社長 年商約90億円)の持ち株会社である「潟eツザイ」(所在地と代表者は同前、以下テツザイHD)は昨年12月23日に、建材・金物及び一般資材卸売業の「樋口金物(株)」(滋賀県甲賀市、樋口孝一社長 年商約2億円)の発行済株式を全て取得し、100%子会社とした。あわせて、大阪鐵材商事と樋口金物は業務提携を行い、今後、両社で滋賀県における総合建材販売店として同県でのシェア拡大を目指す。
 両社合計すると業歴約二百年。厳冬の滋賀で新たなチャレンジをスタートさせた梁川社長に、M&Aの背景や今後の取り組みなどを聞いた。。

■今回のM&Aと業務提携の経緯から。

 「当社の持ち株会社、テツザイHDが子会社化した樋口金物。この会社は設立65年以上の老舗企業で、かつ、20年以上も黒字経営を続けている。長年、社長を務められた樋口孝一氏は創業者から3代目。ただ、ご子息に承継させるには相続税や個人保証の問題もあり、ここ数年、後継者をどうするかでずっと悩んでおられた」
 「一方、当社はかねてから滋賀県での販売を何とか伸ばしたいと考えていた。滋賀県には優良な地元ゼネコンが多く、近畿の他県に比べると、市場はまだまだ魅力的だ。また、それだけに多くの鋼材商社が激しくシノギを削るエリアでもある。こんな中で、当社が地元ゼネコンに『どぶ板営業』をかける。もしくは支店や営業所を開設したところで、伸ばせる販路には限りがある。むしろ、このような従来のやり方ではシェアの維持さえおぼつかない。まさに手詰まりの状態だった」

■具体的な話があったのはいつ頃か。

 「滋賀銀行を通じてM&Aの話がきたのが去年の8月。その2カ月後に甲賀市に出向き、樋口氏と初めてお会いした。食事をしながら双方の会社のことを中心にじっくり語り合った。以降、関係者も含めた打ち合わせを重ねる中で、樋口金物は滋賀県では殆どの地元ゼネコンと取引があること。また、そのうち半分は当社がこれまで取引実績のないゼネコンであることなどが分かった。そしてそれなら、既に多くの取引口座を持ち、地元ゼネコンと数十年も取引を続けている樋口と組もうとの決断に至った。その後、昨年11月に基本合意、12月末には調印式を行った」

■M&Aの一番のメリットは何か。 

 「当社としては、滋賀地区での確固たる販売チャネルを手に入れるとともに、なかなか増えなかった地元ゼネコンの取引口座を一気に倍増することができた。言い換えれば、今回のM&Aはそのための時間を買ったということだ」 
 「またこれは余談だが、当社のような流通商社や問屋といったビジネスは人的依存度が非常に高い。そのため、製造業や不動産業などストック型、装置型の産業と比べ、M&Aの成功は難しいと言われている。当社は敢えてそこにチャレンジしていく」

■新たな体制と今後の動きについては。

 「1月16日付で私が樋口金物の社長に、樋口氏が会長に就任した。来月には当社の若い社員が専務として出向する。彼が樋口の社員とともに地場に溶け込み、老舗を引き継ぐ。そして会長の指導と協力のもと、相乗効果の拡大を目指す」
 「樋口金物はこれまで後継者問題から、事業の継続性の点で大きなリスクを抱えていた。だが、昨年末にテツザイHDが全株式を取得、100%子会社としてその経営を引き継いだ。前述したように滋賀県内での樋口の商権は確立されている。これからはその商流にプラスし、当社本業の鋼材をいかにのせていけるか。そこが勝負。シナジー効果を最大限に発揮するための体制を早期に整え、『コストダウン提案企業』『現場のお助け企業』だと。顧客からそのような評判を得られる会社集団にしないといけない」

■長期的には近畿地区の建材市場は縮小が見込まれる。厳しい環境の中で両社の取り組みは。

 「例えば、われわれが取り扱っている鉄筋。これはどこの商社から購入しても、価格、品質ともにあまり差はない。つまり、同業者間での差別化が極めて難しい。その上に、ネット通販やホームセンターという新たな競合が現れた。当然、今後もアゲンストの時代は続くだろう。それでも、われわれ2社は『手間がかかることを、手間をかけてやる』。それを基本方針にこれからも戦うしかない。早朝の現場時間に合わせて午前7時に営業開始する樋口。土曜であっても現場対応する大阪鐵材。まさに人的パワー、アナログ商売の典型だと言える。また日々の業務では、見積書の作成や集金、緊急時における在庫の確保や出荷対応、コストダウン提案や新商品のPRなど。そして、まさしくそういった『手間の部分』こそが、売り手(電炉、鉄鋼、建材メーカー)と買い手(建設会社)の間でわれわれ2社の価値として認められてきた」
 「また、地方には樋口金物のように何代も続き、地域の顔役といえる企業が多くあり、彼らはその信用で商売を続けてきた部分が大きい。実際、樋口金物の客先の多くは親の代から樋口氏と付き合いのある地元ゼネコンだ。もちろん、社員それぞれの能力や百年近くかけて蓄積された商売のノウハウもある。そういった樋口の優れた部分を当社がしっかり引き継ぎ、地域の地場産業の継続と発展に大阪の企業が貢献する。そのうえで、両社の『手間の部分』の価値をお互いさらに生み出せるようにしていく。ところで、M&Aにあたって樋口氏が当社に提示した条件は2つ。樋口金物の社名を末永く残すこと、そして全従業員の雇用を守ることだった」



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