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大阪府密集市街地対策推進チーム長 芝池利尚 住宅まちづくり部理事 【平成28年09月26日掲載】 |
不燃化・延焼遮断帯・防災力向上 地元自治体・住民と連携し推進 |
南海トラフ巨大地震等の大規模自然災害の発生時に著しい被害が想定される密集市街地。特に大阪府内では、密集市街地が全国ワーストワンとなる約2248ヘクタールに及ぶ規模となっており、その解消が急務なものとなっている。このため大阪府では、密集市街地整備方針を策定し、平成32年度までに危険な密集市街地の解消を目標に、まちの不燃化や延焼遮断帯の整備など、府内市と連携・協力を図るとともに、施策の実施にあたっては密集市街地対策チームを設置して、事業進捗に努めている。 |
■まずは密集市街地の成り立ちからお聞かせ下さい。 |
大阪府内には、大阪市などに分布する戦災を免れた地域や、大阪市の外縁部などで高度経済成長期に木造賃貸住宅が急激に建てられ、市街地として形成された地域が、密集市街地として広がっています。当時は都市計画や規制誘導が未整備であり、とにかく住宅を増やすことが急務でした。それらが全国でワーストワンの規模となる約2248ヘクタールの密集市街地として現在、残っているものです。その解消が課題となる中、平成32年度までに、著しく危険とされる密集市街地の解消を目標とした大阪府密集市街地整備方針を、平成26年3月に策定しました。 |
■これまでの取組み状況は。 |
まちの不燃化の老朽木造住宅の除却では、平成26年度で564戸、同27年度には776戸の成果を積上げており、今年度は1000戸を目標としております。防火規制に関しては、各市で積極的に取り組んでいただいております。このうち、防災街区整備地区計画については、今年6月に寝屋川市が導入し、守口市と門真市についても手続きが進められており、東大阪市では、今年12月に準防火地域の指定を拡大する予定で、それぞれ地域の実情に見合った取組みを進めていただいております。 |
■なるほど。 |
延焼遮断帯の整備は、都市計画道路に関わることから大阪府の役割が大きく、昨年度から豊中市庄内地区の三国塚口線で密集事業として着手し、今年度は門真市の寝屋川大東線に着手しました。現在、平成32年度までに用地取得を行い、延焼遮断帯となる空間の確保を目指しております。 |
■取組みにおける推進チームの役割は。 |
チーム発足の経緯は、密集対策はハード整備からソフト対策とメニューが多岐にわたり、また関係機関も当該自治体はじめ、府庁においても危機管理部門や道路整備部門、住宅まちづくり部門、土木事務所と多いことから、それら関係先が共通の目標を認識し、連携して取り組んでいくことが不可欠です。そのため平成26年5月に副知事を顧問として発足しました。 |
■実際にチームが取り組む中で、想定していた部分と実際とは違った部分はある。 |
机上の考えと現場の実態には、やはり違いはあります。特に密集住宅の場合、権利関係も複雑であり、市との連携は欠かせません。庁内の連携はもとより、実際に現地を見て、地元の首長も交えて話し合うことが必要となります。このため昨年度は寝屋川市で、今年度は豊中市でそれぞれ、対象地区を見回り、市の担当者と意見交換を行いました。豊中市では、先にも出ました延焼遮断帯の整備等について、協力してやっていくことを市長と確認し合いました。 |
■老朽化住宅を除却する場合、所有者の理解が必要ですが。 |
まち全体をどのように変えていくかについては、地域住民にも参画していただき、自ら変えていくという認識を共有していただくことが必要です。このため推進チームメンバーでもある大阪府都市整備推進センターが、住民が主体となって作成する地区整備構想の支援を行っております。単に「危険だから除却します」とするのではなく、「こういったまちづくりをするためにご協力下さい」といったアプローチです。 |
■密集対策を行う上で建設業界に期待することはありますか。 |
先程も言いましたが、密集市街地は、大阪市やその外縁部にあり交通利便性も高く、非常にポテンシャルのある地域ですが、災害に対して脆弱であるという負の部分があります。密集市街地対策は、それを解消するだけでなく、魅力ある都市に作り替えることで、東京との二極構造を目指す大阪に活力をもたらす取組みでもあります。 |
■そうですね。今後も事業推進に向けご尽力下さい。ありがとうございました。 |
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