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大阪労働局労働基準部安全課  安冨 彰課長  【平成28年06月30日掲載】

「安全見える化運動」積極的に展開

「命綱GO活動」が災害減少に大きな成果

二丁掛けハーネス型安全帯の普及を促進


 第89回全国安全週間が今年も7月1日から7日まで、厚生労働省大阪労働局らの主唱、建設業労働災害防止協会大阪府支部らの協賛を得て「見えますか? あなたのまわりの見えない危険 みんなで見つける 安全管理」をスローガンに展開される。昭和3年に実施されて以来、「人命尊重」という基本理念の下、一度も中断することなく続けられている。大阪府の建設業における昨年の死亡者数は13人で、一昨年より1人減少し、2年連続で過去最少記録を更新した。しかし、相変わらず墜落・転落災害が死亡の約6割を占めている。このため安全帯の確実な使用を図ることを目的とする「命綱GO活動」をさらに推進することに加え、墜落時の衝撃を緩和する二丁掛けハーネス型安全帯の普及を促進している。その災害防止活動の中心として活躍している大阪労働局労働基準部安全課の安冨彰課長に安全行政の取組みなどについて聞いてみた。

■はじめに昨年の労働災害の発生状況や建設業における安全行政を取り巻く環境と課題についてお聞かせください。

 大阪府内における平成27年の休業4日以上の死傷者数は、平成26年と比べて、わずかではありますが減少しており、8041人となっています。建設業の死傷者数は、平成27年は722人で、平成26年と比べ114人(13.6%)の大幅な減少となっています。全産業における死亡災害は、平成27年は過去最少の47人を記録し、平成26年に続き、2年連続の記録更新となりました。建設業での死亡者数は13人で、過去最少となった平成26年より、さらに1人減少し、こちらも2年連続で過去最少記録を更新しました。このことは、建設関係者の皆様の日頃からの災害防止に向けた地道な活動の成果であり、その努力に深く敬意を表したいと思っています。

■建設業の死亡災害の発生状況を見てみますと、相変わらず墜落・転落災害が多いですね。

 はい。死亡原因の約6割が墜落・転落災害によるもので、「外部足場の組立て作業中に転落」、「解体工事部材搬出用開口部から墜落」、「脚立作業中に墜落」など、いずれも作業床や手すりの設置をはじめ、安全帯の使用など、基本的な墜落防止対策が講じられていれば防げたものがほとんどです。
 全国の平成27年の労働災害発生状況については、死亡者数972人、前年比8.0%減少、死傷者数11万6311人、前年比2.7%減少、うち建設業では死亡者数327人、前年比13.3%減少、死傷者数1万5584人、前年比9.3%減少となっており、建設業に関しては、大阪、全国とも、他産業と比較して死亡、死傷災害が減少傾向にあることがうかがえます。しかしながら、今年に入って、大阪の建設業の死亡者数は5月末日現在3人と昨年同期の2人と比べ増加し、死傷災害も156件(4月末現在)と昨年同期とほぼ同比であるため、減少傾向が一転することを懸念しているところです。

■大阪労働局の取組みをお伺いします。

 平成25年度を初年度とし、5カ年にわたり「ゼロ災・大阪『安全見える化運動』を展開しています。この運動は、工場や現場、事務所や店舗などの職場に潜む危険を浮き彫りにする、また、安全衛生活動などを目に見える形にすることにより、労使の自主的な労働災害防止活動を促進し、健康が確保され、安全・安心な職場や現場の実現を図るというものです。
 なかでも、見える化運動の一環として、墜落・転落災害防止のため、安全帯の確実な使用を図ることを目的とする「命綱GO活動」に取り組んでいます。多くの現場でこの活動が認知され、大きな拡がりとなる中、災害減少の成果につながっています。安全帯の着用と使用は当然のこととの認識を持ち、高所作業だけでなく、墜落・転落のおそれのある箇所での使用の徹底をお願いしています。また、足場の組立て解体作業や鉄骨など組立て作業では、墜落時の衝撃を緩和する二丁掛けハーネス型安全帯の普及を促進しています。さらには、より安全な措置として、手すり先行工法の積極的な採用を盛り込んだ「足場からの墜落転落災害防止総合対策推進要綱」に基づく対策の実施など、基本的対策の徹底が何よりも重要であると考えています。
 足場については、昨年7月に労働安全衛生規則の改正があり、足場の作業床に係る改正のほか、足場の組み立てなどの作業に就く労働者に対し、特別教育を行うことが義務付けられました。ただし、施行日(平成27年7月1日)以前から既に足場の組み立てなどの作業に従事されている方に対しては、2年間の受講猶予がありますので、事業者のみなさんは、計画的に受講ができる体制を整えていただきたいと思います。建設業で最も多い墜落・転落災害では「はしご等」を起因物とする災害が最も多く約3割を占めていることから、適切なはしご・脚立の使用方法の周知・徹底を図ることとしています。

■最後に建設業界へ望むことについて。

 建設業界では、就業者の高齢化や若い人の建設業界離れなどにより、全国的に技能労働者などの建設人材が不足しています。また、少子化による人口減少は、産業界全体の労働力人口の減少を加速させています。こういった状況下、入職するも、経験年数の少ない1年未満の労働者が被災するケースが増加しています。経験の浅い方や新規で現場に入場する方は、まわりに潜む危険を見ることが出来ず、災害に遭う確率が高くなっています。若年労働者への技術の伝承などができないことに併せて、作業の安全管理もおろそかになりがちです。新規入職者への丁寧な教育をはじめ、安全の見える化、作業ごと部署ごとの危険作業、危険機械などのリスクアセスメントの実施と、それに基づく適切な作業手順の作成、徹底が重要です。
 建設現場で発生している災害の多くは、小規模で安全衛生管理体制が確立していない事業場で発生しています。新規入場者教育をはじめ、危険予知活動の実施、安全の見える化の推進、作業手順の徹底、厳守など、形式だけでない実効ある安全衛生管理活動を実施し、不測の事態にも対応できる体制を整えて作業に臨んでいただきたいと思います。

■経験が浅い労働者が職場に潜む危険を察知できないことを背景として発生する労働災害を、着実に減少させることが要請されているのですね。これからも災害防止にご尽力ください。

(やすとみ・あきら)
昭和60年4月労働基準監督官任官、平成27年4月大阪労働局労働時間課長、同28年4月から現職


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