日刊建設新聞社   CO−PRESS.COM
大阪市都市整備局 國松弘一局長  【平成28年05月30日掲載】

安心・安全のまちづくり 不断の前進

密集市街地 効率的に


 日々の暮らし支える生活基盤となる住宅だが、まちなみを形成する上でも大きな要因を占めている。大阪市内において住宅やまちづくり政策を展開する大阪市都市整備局では、多様化・複雑化する市民ニーズに対応しながら市営住宅の整備をはじめ、土地区画整理事業等を通して住みよいまちづくりに努めている。また近年では、大規模地震等の自然災害に備えた安心・安全への関心が高まっているが、同局の國松弘一局長に、それらに対する取組みについて聞いた。

■まず、都市整備局の役割からお聞かせ下さい。

 当局の役割としては、安全・安心な住まい・まちづくりが大きな柱となります。
 はじめに今回の熊本地震で被災された方々にお見舞いを申し上げます。当局では、発災後、被災建築物応急危険度判定士の資格を持つ建築職員を現地に派遣しました。当初1名派遣し、途中から2名に増員して、累計で4名となっております。判定士に関しては、日頃から職員に対して資格取得を奨励しており、当局に限らず市の建築職員の多くが資格を取得しております。
 また、もう一つの支援として市営住宅50戸の無償提供の受付けを開始しております。これは東日本大震災でも実施しており、さらに仮設住宅の建設についても要請があり、3名の職員を派遣しております。

■大阪市の地震対策の取組みは。

 当局としては、公共建築物や民間住宅等の耐震化を積極的に進めており、今年3月には「大阪市耐震改修促進計画」を改定したところです。
 公共建築物については、災害対策施設等の耐震化はほぼ完了しており、大阪市地域防災計画で防災活動拠点に位置付けられた施設の天井脱落対策を進めています。
 また、耐震改修促進法の改正を踏まえ、不特定多数の方が利用する大規模建築物等に対する耐震診断結果の報告に関する取組みを進めているところです。
 今回の熊本地震を受け、民間住宅の耐震診断や耐震改修に関する補助制度について、市民の皆様からの問い合わせや相談が増えています。住まい情報センターを中心に、きちんとした情報提供ができるように対応していきます。

■なるほど。

 安全・安心に関する施策ではもう一つ、密集市街地対策があります。市としてはJR大阪環状線の外周部を中心とした約1300ヘクタールのエリアを対象に、防災性の向上等に向けた施策を推進しています。
 特に生野区南部地区では、住宅地区改良事業や街路事業などの公共事業と、民間住宅の自主建替の促進等をセットにした面的整備事業を約100ヘクタールにわたり実施しております。同地区では、かまどベンチや防災備蓄倉庫等を備えたまちかど広場の整備や、狭隘道路の拡幅や道路沿いの老朽住宅の除却に対する補助等も行っています。
 市内に広範に広がる密集市街地整備を効率的に進めるためには、ここで得たノウハウや、土地区画整理事業を実施してきた経験などを他の地区でも活かしていくことが重要と考えています。また、これら施策の推進には、建築主の理解・協力や意欲が必要となるため、その周知徹底にも努めていきます。

■公共建築物の維持管理の取組みは。

 昨年12月に「大阪市公共施設マネジメント基本方針」を策定しました。これは総務省の求める公共施設等総合管理計画で、インフラ施設を含めた公共施設の総合的かつ計画的な維持管理を進めるための基本方針です。
 市設建築物については、ファシリティマネジメントの時代を迎えており、施設の長寿命化、再編整備、省エネルギー化を進めています。
 今後は、個別施設の維持管理について、施設所管局とも連携しながら計画を作成し、取組みを進めていく必要があると考えています。

■市営住宅に関し、昨年8月に府営住宅1万戸が市へ移管されましたが、これにより市の住宅政策はどのようになりますか。

 移管された住宅を含めた約11万戸全体で市営住宅事業を展開していきます。
 今年3月に「大阪市営住宅ストック総合活用計画」を改定しましたが、これまでの建替事業や住戸改善事業に加えて、耐震改修事業を柱の一つとして取り組んでいきます。また、外壁改修や屋上防水改修をはじめとする計画改修についても計画に位置づけて、着実に進めていきます。

■府営住宅が移管されることのメリットは。

 まず、市内にある公営住宅が全て市営住宅となるため、市民の皆様にとって分かりやすいというメリットがあります。
 また、より地域に身近なまちづくり施策が展開しやすくなるというメリットがあります。
 例えば、入居者募集やまちづくりを進めるにあたり、区役所をはじめ、市の各部局と連携しやすくなることから、住民サービスの向上が期待できます。また、市営住宅の建替えにあたっては、住宅を集約化し、創出された余剰地を地域に貢献する施設や民間住宅の用地として活用していますが、今回の移管により、建替えを一体的に行うことも可能となります。

■様々な施策の担い手である建設業界に対し、ご意見や要望がありましたら。

 建設業界は、公共施設の整備や維持管理、更新等を着実に実施していく上で、その役割は大変重要であると認識しております。特に、工事における品質や安全確保等に関しては、現場の最前線に働く方々に負う部分も多くあり、習熟された技能や技術の伝承に期待しております。このため、発注者として、実勢価格に対応した工事単価の採用や公正で公平な入札契約制度により、業界の健全な発展に資する適正な発注に努めていきます。

■今後も住みよいまちづくりに向けご尽力下さい。

國松弘一(くにまつ・こういち)局長の略歴
 1983年京都大学大学院修士課程修了、同年4月大阪市入庁。都市整備局住宅部設計担当課長、同住宅整備担当課長、同まちづくり事業部長を経て、2014年4月から現職に。京都府出身。59歳。


Copyright (C) NIKKAN KENSETSU SHINBUNSHA. All Rights Reserved.
当サイトを利用した結果に関するトラブルなどに関しては、当社としては一切責任をとりかねます。