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近畿地方整備局 白川和司営繕部長 【平成27年11月12日掲載】 |
行政・文化・生活で地域社会に貢献 防災拠点としての機能強化 伝統的な技術・技能継承の役割も |
公共建築は、行政をはじめ教育や文化、福祉等の様々な各分野にわたって、地域の人々や生活に密接な関わりを持ちながら、文化水準の向上とまちなみ景観の形成に大きな役割を果たしている。中でも官庁施設は、各種行政サービスを提供する機能とともに、建築技術の開発や技能継承等の役割も担っている。また近年では、大規模自然災害に対する災害対策拠点や避難所等としての機能も求められるなど、その重要性は増大している。こうした中、近畿圏における公共建築行政をリードし、所管する公共建築の整備に努める近畿地方整備局営繕部の白川和司部長に、公共建築のあり方等について聞いた。 |
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■公共建築の役割について。 |
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国交省の官庁営繕で担当させていただいているものより、公共建築は、より広いものと思います。そういう中で、現在、公共建築協会の実施する公共建築賞の審査が始まっていますが、その中で募集しているカテゴリーの、行政施設、文化施設、生活施設というのが大きなくくりかな、と思います。 |
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■なるほど。 |
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また、公共財産や私有財産の違いについて、最近話題になっている公立図書館の指定管理者制度を活用した運用方法の問題の記事を読む中で、考えさせられるます。民間事業者の良さを公有財産の運用に取り込む、という点で、一定の成果があるものの、公共と私有とのサービスの線引きの難しさがあるな、と思っているところです。 |
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■公共建築には民間の技術開発を先導する役割もありました。 |
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官庁営繕として、政策的な面での先導的な役割だけでなく、公共建築が地域の方々と近い関係で、拠点的な機能を果たすとともに、その地域のより良い公共空間の創造や提案、さらには、周囲に対し、良い影響を与えていく、という点での先導的役割があるのではないか、と思ったりしています。 |
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■伝統工法等の技能継承の役割もあった。 |
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確かに伝統技能は使わなくなれば途絶えてしまいます。そのためにはある程度の仕事量を確保する必要はあるでしょう。その仕事量を確保する中で、若い人達に目を向けてもらうことも必要です。いわゆる担い手三法と言われた法改正の考え方として、製造業並みの処遇を、ということが考えられたと先日伺う機会がございましたが、そうした理念も十分認識しつつ、新たな制度への対応をしていきたい、と思います。 |
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■近年では防災拠点としての役割も求められております。 |
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防災拠点としての官庁施設の役割には、災害対策本部としての機能が求められていましたが、東日本大震災では、津波により庁舎が被災し、地域や住民に関するデータが失われたり、行政サービスが継続できない、といった問題などから、庁舎が災害時、災害後も健全に機能していることの重要性、必要性が再認識されたと思います。庁舎が健全でないと住民データもなく、身元確認等の初動対応に問題が生じたりしたように見受けられました。 |
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■確かに東日本大震災以降、防災意識は変化してきました。 |
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昨年、大船渡にあるリアスホールが、公共建築賞を受賞しました。通常、こうした文化施設の場合、災害時に、被災者を受け入れるというような設計条件で作られているとは、思われないのですが、公共建築という公有財産として、そういった使い方がされたと伺いました。そういう事例を聞くと、公共建築が国民の共有財産であるということから、様々な用途の公共建築の設計条件の中に、災害時の対応を意識したものとする必要があるのかな、と感じました。 |
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■管内での状況は。 |
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近畿整備局が管理する管内の公共施設は約153万平方b、うち合同庁舎が、44万平方bとなっています。保全指導対象施設が1492施設約472万平方bになります。新規では先ほど申しました大阪第六号合同庁舎でPFIの検討調査中ですが、既存施設に関しては長寿命化対策が中心になります。長寿命化は地方公共団体もその方向で進んでいると承知しています。 |
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■各自治体とも財政的にも大型の開発事業はできませんから。 |
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現象として予測される問題点は、そういうことだと思いますが、一概にそれが活力を削いでいくかといえば、そうではないと思います。例えば、ここ大手前には官庁施設が集積していますが、これらの施設が長期にわたって使用されることは、変わらない安心感といったものを周囲に与え、それが周辺開発にも影響を及ぼすのではないか、と思います。もともと行政が持つ土地の性格みたいなものが、長寿命化により行政系の用途として固定化すれば、成熟した町ではプラスになるのではないか、と思います。そういう中で、良い公共空間が充実すれば、それをベースにしたネットワークの形成も可能になると思います。 |
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■そういった面からも公共建築の役割は、まだまだあるわけですね。今後も良質な施設整備にご尽力下さい。 |
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