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日本道路建設業協会関西支部 支部長 下垣内 勉氏  【平成27年04月16日掲載】

最大の課題 「担い手確保」に取り組む

調達コスト問題、国などに訴え


 「道建協の基本方針である道路整備の充実と技術の向上、業界の健全な発展に向け、支部として取り組みながら会員の役に立つ活動につとめていきたい」と就任にあたっての抱負を語る。前支部長の退任に伴い、総会を待たずしての就任で、「正直、困惑している部分もある」としながら、支部幹事長はじめ、委員会メンバーの後押しもあったとする。

 道路整備を取り巻く環境については、「関西地区は東高西低の状態」と見る。東北では復興工事が続き、東京ではオリンピック関連工事に沸くが、「関西には主だったプロジェクトがない」。大型案件の発注も昨年度中に終わっており、今年度は実際に始まる工事がなく、公共工事は厳しい状況だ。

 このため、道路各社の利益率に関しては、自社を引き合いにしながら「やはり東高西低で、各社も同様では」との見方を示す。工事量が減少すれば、当然受注競争が激しくなり、「受注価格が下がってくる傾向にある」と懸念を示しながらも、最低制限価格の引き上げなど、国が打ち出す様々な施策により、「徐々にではありますが改善されつつあると思います」。

 また、調達コストに関して、「発注者の積算価格と実勢価格とに差違がある」ことから、採算性が厳しくなっていると指摘し、さらにアスファルト等の供給に関しても、プラントのない地域では「どうしても高くなっている状況」で、特に、工事量が増えている現在では、需要と供給のバランスが崩れているとする。

 こういった現況を踏まえ支部としては、「国交省をはじめ各発注機関に対し、意見交換等を通して、改善を訴えていく」ことが務めであり、「それが会員に対するメリットになる」と述べ、実施にあたっては本部とも連携していくこととした。

 また、入札契約制度に関しては、国交省も「かなり業界側の要望を取り入れていただいている」としながら、地方自治体等では課題は残ると指摘する。

 一方、人手不足に関しては、「現下における最大の課題」とした。人材不足はどの業種でも同じとしながら、「特に建設業では元請も下請も関係なく、人材確保は大きな問題だ」と道路業界だけでなく建設業全体の課題と捉える。

 担い手確保については、国でも社会保険未加入対策や労務単価引き上げなど各種の施策を推進しており、「環境は良くなりつつある」としながらも、屋外作業であり、きつい仕事であることは確かで、「その中で安い賃金で休みも少ないといった悪条件に対して、協会としていかに対応するかは難しい部分はある」との認識を示す。

 しかしながら、「適切な工期の設定や発注の平準化など発注者へ改善を申し入れることで、少しでも良くなれば」と思いも強く、また、会員個々の企業では、地元の小学校や中学校を招いて現場見学会等を実施していりことから、支部としてもこれら見学会を活用した取り組みを考えていきたいとした。

 出身は、奈良県吉野郡下北山村で三重県との県境。学生時代は「奈良市に出るまでバスで五時間はかかった」とし、災害等で道路が使えなくなった場合、「生活ができなくなる」。このため、インフラとしての道路の重要性は、誰よりも「身に染みて感じている」。

 入社後は、中部支店で約30年あまりを過ごす。管理部門での勤務が長く、現場経験は少ないとするが、入社して最初の現場が所長を含めて5人だけの現場で、「休みは隔週、早出、残業はあたりまえ」であり、 竣工間際まで現場に張り付いていた。それだけに「完成した時の喜びは今も忘れない」。この経験があって以後、苦労も苦労と感じず、「今がある」と振り返る。管理のエキスパートとしての支部運営に期待したい。

 
 下垣内勉(しもがいと・つとむ)
 昭和28年生まれ。同49年3月熊野工業高等専門学校卒、同年4月鹿島道路入社、平成13年4月中部支店名古屋営業所長、同16年4月本社生産技術本部工事部施工管理課長、同18年4月中国支店工事部長、同20年11月関西支店副支店長、同25年4月本社生産技術本部施工管理部長を経て、平成26年4月から執行役員関西支店長に。61歳。


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