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大阪府塗装工業協同組合 磯部明良理事長  【平成27年03月23日掲載】

まだまだ厳しい単価

社保加入 各社取り組みに温度差

中学校の美化指導で社会貢献


 大阪府塗装工業協同組合は、大阪にある4つの塗装団体のうちで最も活発な活動を展開している。昨年就任した磯部明良理事長(磯部塗装椛蜊緕x店長)は、組織の規模や形態が異なる組合各社に対して、「お互いの弱点を補完し合うことで伸びる余地はある」とする。社会保険未加入対策をはじめ、担い手の確保・育成に関しても他団体との連携を図りながら取り組みを進めていきたいとする磯部理事長に、今後の見通しを聞いた。

■まずは、塗装業界の現状や課題についてお聞かせ下さい。

 単価をはじめ業界全体は、まだまだ厳しい状況にあります。特に単価については、国においては公共工事設計労務単価の引き上げをはじめ様々な施策が打ち出され、当組合と近畿地方整備局の意見交換等を通して業界の状況は理解されておりますが、やはり民間工事が課題となっております。民間工事では、元請による受注競争が依然として激しく、低価格での工事が多い。結果としてそのしわ寄せは我々専門工事に向かい、末端で働く職人の賃金が上がっていないのが現状です。

■塗装業界に限らず、専門工事業界全体の課題ですね。

 職人の賃金が上がらなければ、業界として人を呼び込むための土壌がなくなる。その一方で作業員の高齢化が進む状況にあり、少子化の影響とともに若者が3Kと呼ばれる職業を敬遠する風潮の中では、塗装工になろうと考える若者が減りました。かつては学歴に関係なく、技能や技術だけで元請社員より高い賃金を得ていた時代もありましたが、今はそういった土壌がなくなり、進学率のアップとともに若者自身はもとより、親御さんが敬遠する場合も多いと聞きます。

■一般的には、我が子の就職先は社会保険等の整備がされている所を希望されるのではないか、との声はよく聞きます。

 現在、業界にいる職人さんに関しては離職率こそ高くはありませんが、生活のために安い単価で我慢している部分もあろうかとは思いますし、我々としては少しでも単価を上げたいとの思いはあります。ここ1〜年で単価は少しずつ上がってきておりますが、これは工事量の増加に加え、人手が足りないといった労務事情によるもので、塗装に限らず専門職種全体が上昇傾向にあります。事業主の立場から言えば、顧客と職人の板挟みにはあります。

■社会保険未加入対策については。

 各社によって取り組みの温度差があると思いますが、円滑に進んでいるとまでは言えないのではないでしょうか。労働三保険に加入するためには、事業主、本人とも、かなり負担することになりますが、職人の立場から言えば、手取り金額が多い方がいい。勿論、事業主負担も大きなものがあります。保険未加入では結婚も難しくなってくるとは思いますが、ただ、無い袖は振れないとする事業主もいることは確かです。しかしながら、保険加入を徹底して社会的地位の向上を図っていかなければならないことは、担い手の確保という点でも十分に理解しております。

■保険加入の原資となる法定福利費の確保に係る標準見積書の活用状況はどのように。

 法定福利費に関しては、日本塗装工業会が法定福利費の内訳を明示した標準見積書を作成しており、これを提出することで各発注先に支払を要請しておりますが、発注先によっては、認めてくれるところもあれば、すでに契約金額に含んでいるとするところもあり、元請企業によって対応の違いがあることも確かです。地方では7〜8割の加入率とされていますが、実態はどうかという疑問もありますが、ただ言えることは、保険加入を維持できるだけの仕事量が継続して確保できるかどうかという課題が残ります。

■さて、昨年5月に理事長に就任されてからの組合活動に関する取り組みについて。

 幸いにして順調な決算を継続しておりますが、組合運営に係るコスト軽減への取り組みは継続しなければならないと思っております。組合員からの賦課金を上げずに、組合が実施している各種の事業収入で賄っており、維持継続していこうと考えております。その一方で、当組合と日塗装大阪府支部、大阪塗装協同組合、近畿マスチック事業協同組合大阪府支部が、これまでそれぞれで行っていた会合等を合同で開催するなど、共同で行うことにより経費節減に寄与しております。かつてのように右肩上がりで組合員が増えていく時代ではありませんから。また、その観点から昨年は当組合と日塗装大阪府支部との事務所を統合しました。これにより事務所の維持経費をかなり節約することができました。まだまだ先行き不透明な状況が続く中、今後も共同でできるところから取り組んでいきたいと思っております。

■組合員の状況は。

 組合員数もピーク時の平成12年には223社であったものが、現在では110社と半減しております。辞めていく組合員は廃業や倒産など、事情は様々ですが、廃業される業者では不景気によるもののほか、後継者がいないことも大きな要因です。また、後継者となるお子さんがいても現在のように経営環境が厳しい時代では、継がせたくないと考える方もおりますね。ただ、最近は組合員減少傾向に歯止めがかかっているように思います。

■現在の事業活動は。

 事業活動では、6つの常設委員会を中心に実施しており、各委員会とも活発に活動しております。このうち社会貢献活動として、平成13年度から中学校を対象とした校内の美化活動を毎年、実施しております。学校の校舎や外壁を生徒自ら塗り直しを体験してもらうもので、組合から指導員を派遣して行っております。当初は、青少年の街頭犯罪の防止を目的に府警本部からの要請で始めたもので、その後、教育委員会から、中学生の道徳教育の一環として要請がありました。これは、中学生の段階で将来の職業選択の方途の一つとしての狙いもあります。さらに、街並みの落書きを消すための美化活動とその活動を通して地域のコミュニティを強化したいと、近隣の町内会からも要請を受けております。

■なるほど。

 我々の活動が社会や地域の役に立つことは嬉しいことですが、要請が多くなると組合はじめ協力していただいている組合員はもとより、副資材や塗料の販売業者への負担が大きくなることも事実ではあります。ただ、塗装の場合、目に見えるものであり、また、残っていくもので、参加した生徒達からも学校の前を通る時に思い出すと言われており現在では、参加した生徒の名前を記した銘板を塗装した所に掲示しております。勿論、この活動を通して塗装に興味を持ち、将来、塗装業界に入って来てくれる生徒さんが出てきてくれればとは思っております。

■今後の抱負を。

 組合員個々は、同じ塗装業といっても規模や組織形態もそれぞれ違う企業が集まっておりますが、組合という組織の中では、お互いに弱点を補完し、カバーすることが可能となり、そういったコラボや仕組みを形成することができます。また他団体と連携、協調しながら、それぞれの分野を伸ばしていくことも必要だと考えております。特に塗装は、建物や構造部の多くで使用されていることから、視点を変えることで、これまで塗装されていなかった新たな分野を開拓することも可能であると考えております。もっと視野を広げて、リスクを恐れずチャレンジする精神が必要だと思いますね。

■ありがとうござました。



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