日刊建設新聞社   CO−PRESS.COM
大阪府住宅まちづくり部 堤 勇二部長  【平成27年01月26日掲載】

「GD大阪」実現へ一歩

密集市街地、府住移管も推進


 大阪府における住宅政策と都市政策を担う大阪府住宅まちづくり部。昨年は、うめきた2期をはじめとする新たな都市核形成への動きが活発化してきているが、それら施策の推進にあたりタクトを振る堤勇二部長は「着実に一歩ずつ進めていきたい」としながら、今後の事業展開に意欲を示す。その堤部長に、今年度の事業経過や来年度の見通しを聞いた。

■まず、今年度の事業状況からお聞かせ下さい。

 グランドデザイン・大阪で大きな動きが出ました。府市統合本部で大阪市との合意形成ができたことにより、うめきた2期と大阪城東部地区のまちづくりに取り組むことになりました。東部地区に関しては、12月に成人病センター跡地のまちづくり方針を策定し、引き続き大阪城東部地区全体のまちづくり方針を今年度末までにまとめる予定です。
 さらに御堂筋についても、これは梅田から難波、天王寺を結ぶグランドデザインの背骨にあたる部分ですが、この御堂筋で平成25年度からの取り組みとして側道部分を閉鎖した社会実験を実施しており、今年度は、本町から北の東側の側道の一部を閉鎖して、自動車交通の迂回状況を観測しました。これは2050年を目標としたグランドデザインの御堂筋の全面みどり化の実現に向けた取り組みの第一歩であり、ようやくスタートが切れました。

■確かに、様々な動きが出ました。

 もう一つ5月には、密集市街地整備に関して対策推進チームを立ち上げ、職員が現地に入って活動を開始しております。チーム発足にあたっては知事から激励の言葉をいただきました。密集市街地については従来、地元市に任せており、府が直接的に関与していなかったことから取り組みが進んでいませんでした。今年度は予算も倍増し、事業も倍のスピードで実施しました。来年度につきましても今年度に引き続き予算もさらに2倍の増額要求をしております。また、具体的な事業では都市整備部と合同で進める仕組みができました。まちづくり事業でありながら住宅まちづくり部と都市整備部が縦割りで実施していたため、これまで事業が進まなかった部分もありましたが、昨年には国の合意も得たことから今後、一緒に取り組んでいくこととなりました。これは政策イノベーション≠ニいえます。

■なるほど。

 また、府営住宅に関しても動きが出てきました。地域のまちづくりに活用していただくため、府営住宅の土地・建物を地元市町に移管する方針を打ち出していたものの、なかなか実現には至っておりませんでしたが、今年度は13万8000戸の府営住宅のうち約1割にあたる1万5000戸の大阪市内分に関して、大阪市会で承認をいただくことができました。これほど大量に移管が実現した例は東京にもなく、全国では初めてのことになります。このように、今年度事業では、グランドデザインと密集市街地整備事業、府営住宅事業のこれら3つの取り組みが動き出したことが挙げられます。

■昨年はまた、泉北ニュータウンで近畿大学が進出することが決まりましたが。

 近畿大学医学部と附属病院の進出によって、これまでの再生事業の考え方である単なる「リニューアル」ではなく、「都市のリノベーション」として捉える方向転換ができました。府営住宅の建替によって創出した敷地に大学を誘致し、また病院ができれば学生等の若者が流入し、そのエリアの人口構造自体がこれまでと変わってしまう。そうなると歩行者動線はもとより、通院患者に配慮し、車椅子に対応した道路の整備など、都市構造も根本的に変わっていきますから、全体をリノベーションする必要が出てくるわけで、これをこれからのニュータウン再生のモデルにしたいと思っております。

■大阪都市圏の今後の方向性の取り組みでは。

 これに関しては、府内市町村はもとより、他府県では福井県も含めた10府県のご意見を伺うことが大切であることから、府が一方的にビジョンを描くものではありません。このため着実に足下から固めていこうと、まずは府内市町村を訪問することとし、これまでに10市の市長さんと直接意見交換させていただきました。

■手応えのほどは。

 各市長さんとも人口減少を危惧しておられ、人口増加の必要性を訴えておられますね。我々としては、その対策のツールとして密集市街地整備や府営住宅移管等を利用して下さいと言っていますし、また、市側からは観光振興等の具体的方策について議論したいとの意見が多かったです。しかしこれらの課題は市町村単位で解決できるものではありません。明治時代に行政の都合で線引きしたに過ぎない行政区域にこだわらないことを前提として、広域的な観点に立って施策を考えてまいります。
 また昨年には、国土交通省が国土のグランドデザイン2050を策定され、それに関して、地域版の広域地方計画等の策定も示唆されており、それと連動することも視野に入れながら、より深化させたものとするため、これから市町村長さんを訪問するときにご説明をさせていただこうと考えております。

■来年度事業の見通しについて。

 うめきた2期のまちづくり方針が今年度末までにまとまることから、来年度は開発事業者募集に係る条件等の検討や整理を行います。事業者募集は平成28年度になります。府営住宅は大阪府営住宅ストック総合活用計画に基づく整備とともに、先程も言いましたが市町村への移管スピードを上げていこうと考えております。
 また昨年の部長就任に際し、人にとっての「幸せ」の条件は、家族や友人、仕事でありその基盤となるのが住宅であると申しましたが、その住まいを担う唯一の部局が住宅まちづくり部であると思っております。このため、「住まう」をテーマに住む場所と住まい方のあり方までに踏み込みこんだ調査研究を始めたいと考えております。府民への住宅政策はこれまで、府営住宅に頼りながら実態は管理しているだけに過ぎませんでしたが、その移管に伴って、この機会に住まいというものの本質を見つめ直そうと思っております。

■今後の抱負を。

 大阪を「美しい」都市にしたいと思っております。グランドデザインもそうですが、それ以前の将来ビジョン大阪、大阪府総合計画、さらにその原点として、昭和62年当時に実施していた「好きやねん大阪運動」で、内外から訪れたくなるまち大阪として、民間企業や団体とともにボランティア活動に取り組んでいました。確かに当時はまちの景観や河川などお世辞にも綺麗とは言えませんでしたから。電線や電柱などがない綺麗なまちになると犯罪発生率も低下し、住民の地域への愛着も深まりますね。「美しい」都市が実現すれば観光振興にもつながり、治安も良くなれば住む人も幸せになる。それが大阪再生≠フ原点だと思っていますね。

■ありがとうございました。



Copyright (C) NIKKAN KENSETSU SHINBUNSHA. All Rights Reserved.
当サイトを利用した結果に関するトラブルなどに関しては、当社としては一切責任をとりかねます。