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UR都市再生機構 伊藤治西日本支社長  【平成26年10月20日掲載】

うめきた2期 2番バッターの役割を

ストック住宅のオペレーション課題


 良質な住宅供給やニュータウン開発、さらに都市再生事業を手がけている独立行政法人都市再生機構では、社会経済情勢の変化を受け、既存団地の再生やニュータウン事業を終了するなど、その役割は、大きな転換期を迎えている。こうした中、西日本を管轄するUR西日本支社では、うめきたの第2期開発を含め、密集市街地支援・補完など、都市再生事業への取り組みに各自治体や民間企業からの期待も大きい。今年7月に就任した伊藤治西日本支社長は、数々の部門に携わってきた経験を活かしたいとする。その伊藤支社長に抱負や今後の取り組みについて聞いてみた。

 (松木朋子)
 

■支社長就任にあたって、抱負をお聞かせください

 UR都市機構には、都市再生、賃貸住宅、ニュータウンと大きく分けて3つの部門と、他の企業とも共通する部門がありますが、自分自身の強みがあるとすれば、全ての部門を担当した経験でしょうか。一方、大阪での赴任は初めてで、不動産を扱う事業者の基本として、まちや地域に愛がなければならないと考えておりますので、たくさんの場所を見て、大阪、関西という土地柄や風土に早く馴染んで仕事に活かしていきたいですね。地域の特色を理解し、これまでの経験を実践に活かすことが当面の抱負になるのではないでしょうか。

■東京から関西を見て感じたことは

 東京に比べると、関西は多極構造ではないかと思います。大阪、京都、神戸などそれぞれの個性が感じられ、特にまちづくりの分野に関しては、その違いを強く感じております。事業の組成にも工夫が必要なのはやむを得ない事ですが、その分「チーム関西」というような団結意識の高さを感じます。公共団体の構想を民間事業者のビジネスにつなげていく―。都市再生において機構の仕事は、いわゆる橋渡しであり二番バッターの仕事だと思っておりますが、関西は土地柄商売が定着していて、むしろ民間事業者と連携するにはとても良い地域ではないかと考えております。

■西日本支社の課題は

 都市再生分野では、良質な事業をどれだけ構築できるかが期待されていて、東京よりも立ち上げに苦労を伴いますが、積極的に取り組みたいと考えております。
 賃貸住宅に関しては、住宅の古さや規模など商売をするには難しい課題を抱えながら現状は健闘していると思います。少し古い物件については、ストックの劣化防止などいろんな手を打っていかなければなりません。リノベーションなどハード面も行いますが、団地の持つソフトのインフラ、例えば居住者の方々のコミュニティの充実など良い特性をプラスに活かして資産を長く運営していくことが、結果的に居住の安定や機構としての新しい企画にもつながります。地域貢献もしながら経営の安定もできるということが課題です。
 ニュータウン事業については、今後5年間で約450ヘクタールを販売しなければなりません。利用のためのソリューションが必要な販売物件が多く、大変難しい仕事ですが、施工と販売との良い連携が根付いている西日本支社に期待をしております。

■ストック住宅の今後の展開は

 ストック住宅の問題は機構だけでなく、日本社会全体の問題です。古いストックをどのようにオペレーションしていくかは、最先端の課題に取り組んでいることになりますし、それは、民間事業者の方の参考にもなるはずです。集合住宅建設でのトップランナーであった我々機構が、時を経てストック住宅のオペレーションを行うことは相応しいことであり、今後我々の知恵の出しどころだと思います。

■注目するプロジェクトは

 都市再生の分野では、やはりうめきた2期事業ですね。2番バッターのような役割を果たしていきたいと考えておりますし、要望やご期待に応えるかたちで参画させていただきたいと思っております。また、府・市の審議会メンバーにも参画していることから密集市街地についても大きなプロジェクトとして受け止めております。
 賃貸住宅については、無印良品との連携や京都女子大学とのリノベーションなどさまざまな企画を行ってきました。それがやりっ放しにならないようそれぞれ評価をしてアレンジしていく時だと思っています。もっと若い人への情報発信を行っていきたい。若いURファンを増やすことは経営の安定や地域の活性化にもつながり社会のお役に立てることと思います。

■建設業界に期待することは

 是非、たくさんURに要望をいただきたい。マーケットの一員であることに誇りと喜びを感じて仕事をしておりますが、民間との連携を柔軟に行うように政府からも示されておりますので、足りない部分へのご指導をいただいて、それを受け止め、仕事の形にしていきたい。

■今まで印象に残った仕事は

 宅地の販売業務で、あえて民間の事業者と同じ所に現地案内所を設置して朝礼を合同で行い、意見交換をしながら一体的な販売活動を行いました。また、民間事業者に土地を仕入れていただく際、書類作成を代行するなど、デベロッパーの方によくやって下さったと褒めていただいたことが一つ。
 もう一つは、社内で建て替えないという方針が決まっていた団地において、なかなか入居者の方々へのご説明ができないことがありました。しかし、入居者の方々思いを考えた時に、自分の責任で本社の発表よりも早くお知らせしたことがあります。その後、感謝の言葉をいただき、勇気を持って報告したことが、ちゃんと皆さんの胸に届いたのだと感慨深く印象に残っております。

■今後を期待しております。ありがとうございました。

 趣味は歩くことと囲碁。囲碁は5段の腕前。バランスを考えながらゲームを進めるところは仕事にも通じるところがある。心掛けていることは「プロの仕事をしよう」ということ。視野を広く持つことがプロの第一条件という。先を読み、人を説得する能力を持ち、客観的、具体的に語ることが重要とする。それは周りにも求めており、ファインプレイがファインプレイに見えない守備位置をとることが大切とする。

 伊藤治(いとう・おさむ) 
 昭和56年3月東京大学法学部卒業。同年4月日本住宅公団採用、平成11年7月住宅・都市整備公団東京支社多摩ニュータウン事業本部業務部宅地分譲課長、同15年7月都市基盤整備公団本社企画調整部調査役、同16年7月独立行政法人都市再生機構本社経営企画部経営管理チームリーダー、同20年6月東京都心支社総務企画部長、同22年7月本社住宅経営部担当部長、同24年4月都市再生部長、同25年4月住宅経営部長、26年7月理事・西日本支社長。愛知県出身、56歳。


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