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岡山総括防災調整官 |
橋本企画部事業調整官 |
近年、台風や豪雨による浸水被害、土砂崩壊などの自然災害が多発し、全国各地で被害をもたらしている。災害発生にあたり当該自治体では対策本部を設置し、復旧に向け措置を講じることとなるが、その中では初動期における対応が重要となる。その被災状況をいち早く把握し、情報を収集するために国土交通省ではTEC―FORCE(緊急災害対策派遣隊)を全国の地方整備局に設置、自治体からの要請に応じて被災地に派遣している。こうした中、近畿地方整備局の岡山公雄・総括防災調整官と橋本豊治・企画部事業調整官に同局におけるTEC―FORCEの活動について聞いた。 |
まず先遣隊が被害調査 状況に応じて専門部隊 |
■まずは、TEC―FORCE設立の経緯から教えて下さい。 |
岡山 |
自然災害が多発し始めた平成16年頃から、国民の生命や財産を守るということは国の基本的責務であるとの理念の下、災害の発生毎に職員派遣による緊急支援を実施しておりました。しかしながら、災害発生の都度の対応では即時性がなく、準備も不十分であること等から、平成20年度に全国の地方整備局にTEC―FORCEが設置されました。以来、今年5月現在で全国に6609人の隊員がおります。この中には各地方整備局と国土技術政策総合研究所、本省のメンバーも含まれています。 |
■TEC―FORCEのメンバーになるための資格や何らかの実績は必要になりますか。 |
岡山 |
特に資格は問いませんが、近畿地整の場合、TEC―FORCE研修を受講した者をメンバーとしております。原則的には全ての職員が研修を受けることとしておりますが、現地に行けない職員についても後方支援など、何らかの業務に携わることとしております。国交省では、職員全てが災害当事者であることを基本としており、全員がTEC―FORCEを目指すこととし、全員が災害対応に携わることとしております。 |
■派遣メンバーの構成は。 |
岡山 |
研修会受講者を対象に指名したメンバーで、班長を含め4人で1つの班を構成し、各班毎に派遣します。複数の班を派遣する場合は隊長を置くことになります。班のメンバーは日常的には、それぞれの通常業務を行いながら、砂防や道路啓開支援等の訓練を実施することになります。また、研修を受けていなくても、既に派遣実績のある者は隊員として登録することになります。現在、近畿整備局には663人の隊員がおり、これまでに平成21年兵庫県西・北部豪雨をはじめ、東日本大震災、紀伊半島大水害に派遣しています。 |
■活動内容を。 |
岡山 |
派遣にあたっては、被災した当該市町村からの要請を受け、近隣の事務所からメンバーを派遣することが基本になりますが、近畿整備局から他の地方整備局に派遣する場合、近畿整備局のメンバーも派遣先整備局の指揮下に入ることになります。指揮系統の統一化ということで平成24年度からその体制になりました。派遣先では、先遣隊がまず現地の被害状況の調査を行い、その調査報告を基に必要に応じて人員を振り分け、長期間になれば第2陣、第3陣と派遣します。また、それとは別に、現地の災害対策本部との連絡調整等の後方支援業務を行うロジと呼ばれる現地支援班をはじめ、情報通信班や高度技術指導班、被災状況調査班、応急対策班が、状況に応じて随時、派遣されます。ただ、当初から被災状況が明らかな場合は、最初から現地調査班を派遣します。 |
■現地での役割はどのように。 |
橋本 |
第1陣の活動としては、だいたい5日間程度で、後続部隊はそれ以上になります。先遣班の役割としては、被災の規模等の状況把握とその状況に応じてどの専門部隊を要請するかを本部に伝えるものです。TEC―FORCE自体は災害査定の調査をするわけでも、その調書を作成するものでもなく、災害申請が可能かどうかを当該自治体に報告するもので、それを受けて当該自治体がきっちりと被害算定を行うことになります。 |
■なるほど。 |
橋本 |
今年8月に派遣された福知山市の場合、内水被害が多く、河川や道路の公的な被害が少なく、先遣隊と同行していた技術班がそのまま被害調査を実施し、残調査は後続部隊に引き継ぐこととしました。ただ、現地での状況に応じては派遣期間が長期にわたることもあります。特に、東日本大震災では、地理的に離れていることもあり、当初10日間を予定しておりましたが、最終的には18日間にわたり滞在することになりました。 |
■現地での宿舎や撤収はどのように。 |
橋本 |
派遣先での宿舎の手配は、当該自治体の手を煩わすことなく、ロジ班が全て担当し、第1陣が現地入りした時点で手はずは整っております。撤収に関しては、要請されていた調査が終了時した時点で引き上げることになりますが、撤収にあたっては第1陣の場合は中間報告を、後続部隊は最終的な報告書をまとめて提出しますが、報告書は、1日の作業を終えた後に作成するため、夜遅くまでかかることもあり、隊員には負担を強いることになっております。 |
首帳との情報共有必要 地元建設業バックアップを |
■災害派遣に関してはTEC―FORCEのほかに、リエゾンがありますが、その役割分担はどのように。 |
橋本 |
リエゾンは、現地で不足している物資など、何が必要かといった情報を対策本部に伝え、その対応結果を被災自治体に伝えるといった、言わば情報の橋渡しの役割を担っております。 |
岡山 |
リエゾン自体はTEC―FORCEの役割に位置付けられており、TEC―FORCEと同時に創設されました。 |
橋本 |
先の福知山市では、対策本部会議で市長から「内水浸水など、河川や道路ばかりに気をとられていたが、山間部での山崩れがあったが、その情報がない」と指摘され、我々に被災状況を含め、二次災害の防止対策についての要請があったことから、リエゾンとして情報収集を行い、その情報を本局に伝え、それを受け防災ドクターを派遣してもらいました。 |
岡山 |
防災ドクターとは、主に道路や山の斜面に関する学識者等の専門家のことで、TEC―FORCEに同行して調査を行うものです。 |
■実際に被災地に入った時と予想していた状況は違いますか。 |
橋本 |
テレビで見るのとはかなり違っています。紀伊半島大水害や奈良、京都の大雨被害では、家屋の倒壊や土砂の流入の様子は、被害の大小はありますが、壊れ方に関しては同じ様な形ですね。東日本大震災は被災地が広範囲なため全体では分かりませんが、細かく見ていけば、だいたい同じ様な状況と言えます。また、豪雨の場合、河川の越水や堤防破損等に注意が向きますが、山間部では山崩れも多発することが多いですね。 |
■断片的な情報だけでは判断できないことが多い。 |
岡山 |
近年では記録的短時間大雨情報が発令されますが、これが発令された場合はどこかで浸水が発生する確率が非常に高く、発生した場合には、地元の意向を踏まえながら、まずリエゾンを派遣し、排水ポンプ車を出動させるといった即時対応をとっています。この場合、本局に災害対策本部が設置されていなくとも実施されます。勿論、空振りに終わる場合もありますが、日頃からの備えが大事です。 |
■橋本さんは、これまでリエゾンとしての派遣があり、またTECーFORCEとしては現在もメンバーとして現地に行かれておりますね。 |
橋本 |
私の場合、東日本大震災が最初で、その後、那智勝浦、宇治、津和野、最近では福知山と延べ7回になります。このうち東日本はリエゾンとして派遣されました。リエゾンもTEC―FORCEも最初に被災地に入りますが、リエゾンは現地の対策本部に配置され、TEC―FORCEは現場に向かいます。その場合は道路啓開も何も行われていない状況で、そこで先遣隊は後続部隊のルート探しなども任務の一つとなっております。 |
■それら経験を通して得た教訓等はありますか。 |
橋本 |
自然災害に勝つことはできないことを痛切に感じましたね。その中で一つ感じたことを述べますと、以前、河川事務所にいた時に、水害に強い地域づくり協議会を立ち上げ、各首長に、どの段階で避難勧告を出すかどうか、その判断材料になる資料づくりをやっておりました。こういった取り組みを全国的に広げ、各地方整備局と首長がホットラインでつながるようにすれば、被害を少なくすることができるのではないかと想いますね。国と首長が情報共有できる体制づくりが必要ではと思います。災害に対して行政機関は、発生してからでなければ動けないこともある。人的被害をなくすには自治会等の最小単位の組織で号令をかける人が必要かなと。 |
■これら災害対応における建設業界の果たす役割は。 |
橋本 |
建設業の役割というものは、やはり大きなものがあります。特に地元の建設企業は、TEC―FORCEの先遣隊と同様に真っ先に現地に入るわけで、東日本大震災でも道路啓開などの作業を行い、自衛隊をはじめ後に続く支援部隊を支える役割を担っており、広島の土砂災害でもその活動は聞き及んでいます。 |
岡山 |
昨年の台風18号で浸水被害を受けた福井県と滋賀県、京都府では、国の要請の有無にかかわらず、地元の建設業界が昼夜を問わず応急復旧作業に従事され、また不足した資機材の供給にも応えていただいております。こういった災害等の緊急時に我々の要請に応えていただける地元の建設企業に対しては、我々もしっかりとバックアップしてくことが必要だと思いますね。 |
■本当にそうですね。災害対応におけるTEC―FORCEメンバーのご尽力に敬意を表します。ありがとうございました。 |
(聞き手・渡辺真也) |
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