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大阪労働局労働基準部 窪田浩和安全課長  【平成26年06月30日掲載】

死亡災増加を懸念

まず安全帯のフック


 第87回全国安全週間が今年も7月1日から7日まで「みんなでつなぎ 高まる意識 達成しようゼロ災害」をスローガンに展開される。昭和3年(1928年)に開催されて以来、「人命尊重」の基本理念の下、1度の中断もなく続けられている。大阪府の建設業における昨年の死亡者数は21人で一昨年より5人増加。なかでも、墜落・転落災害が後を絶たず、全体の67%を占めている。このため、大阪労働局では、建設業労働災害防止協会大阪府支部など関係団体と連携して、今年から「命綱GO活動」を展開する。その活動の中心となる大阪労働局労働基準部安全課の窪田浩和課長に、重点項目や目標などを聞くとともに、取り組みを紹介する。

■まずは昨年における大阪府内の労働災害の発生状況についてお聞かせ下さい。

 昨年の建設業における全国での死亡災害は342件と一昨年から大きく減少し、休業4日以上の災害は若干の増加となりました。しかし、今年に入り死亡災害は増加傾向にあります。大阪府内では、残念ながら、昨年21件の死亡災害が発生し、前年より5件の増加となりました。これは非常に憂慮すべき事態です。今年の5月末の段階でも8件と非常に増加しております。実は昨年の秋頃から増加の兆しが見えはじめており、非常に懸念しております。大阪での建設業における死亡災害の要因として、墜落・転落災害が約70%近くを占め、全国では約47%、大阪より工事量の多い東京でも約44%と、大阪だけが突出した比率となり、行政としても疑問を持ちながら懸念しております。

■依然として転落・墜落災害が多く発生しております。

 そうですね。墜落・転落災害は死に直結している災害です。そのうち死亡災害においては足場からの墜落が18%、はしご・屋根からの墜落が50%となっております。その原因を調査すると、特徴として出てくるのは安全帯を着用はしているが、使用はしていない、つまり、フックを掛けずに作業を行い墜落してしまったという状況です。現場に入る時の外見的には、安全帯を着用し万全な態勢であっても、実際の作業で「自分は大丈夫」とか「簡単な作業だから」という習慣からフックを掛けずに作業を行ってしまい、気がついた時にはもう遅いという状態です。
 また、昨年発生した災害ですが、手摺や中桟が付き、法律上問題のない適正な足場からの墜落・転落です。その要因の一例をあげますと、若い作業員の方で、荷を取り込むために手摺から身を乗り出し「おそらく大丈夫であろう」というその場の勢いで作業を行い、荷の重さに耐えかねて転落したという事例で、同様の災害が数件発生しています。また、今年に入っての災害の特徴は、大手ゼネコンによる死亡災害の増加です。昨年は21二一件のうちでも4.5件でした。しかしながら、今年発生している8件の死亡災害の内50%となる4件の災害が大手ゼネコンによるものとなっています。

■これらの危機的状況をふまえ、大阪労働局としての活動は。

 大阪労働局では「命綱GO活動」を展開しております。安全帯のことを、「いのちづな(命綱)」とも言います。その命綱が命をつなぐ用具であることから「命綱GO活動」とネーミングしました。設備面やハード面で安全を確保することは当たり前のことですが、安全帯を着用し、そのフックを適切な箇所に掛けていれば、死亡という最悪の状態は免れるはずです。仕事中に亡くなるということは、絶対にあってはならないことです。その死亡災害をゼロに近づけたいという意気込みで活動を展開しております。
 ホワイトカラーの方がスーツにネクタイを着用するように、建設現場では安全帯を着用し、必ずフックを掛けて作業を行うということを当たり前にしていただきたい。その意識付けの一環として、現場に入る前に仮の単管などにフックを掛ける動作を行い、その際に「命綱GO・ヨシ!」と指差呼称していただきます。実際にその一連の動作を実施している現場もあり、是非その定着を図っていただきたいですね。

■最後に、窪田課長がお考えになる建設業における災害防止活動の、その先にあるものは。

 今、人手不足が叫ばれる中、作業員の高齢化や若い入職者の減少問題が深刻ですが、工事量増加の上に人手不足となりますと、当然労働時間が長引き、災害に至らしめるリスクが非常に高くなっております。今後、建設業が未来に向かって、さらに発展していくためには、災害を無くさなくてはなりません。災害を減少させることにより、若者が建設業に関心を持ち、そして入職希望者も増えるのではないでしょうか。災害のない、働きやすい環境づくりを業界の使命として、われわれ行政とともに取り組んでいただいきたいと思います。

■本当にそうだと思います。これからも災害防止にご尽力下さい。

 (くぼた・ひろかず)
昭和60年4月労働基準監督官任官、平成17年4月島根局浜田署長、同21年4月大阪労働局総務部企画室長、同24年4月から現職。


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