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近畿地方整備局 住田浩典営繕部長  【平成25年11月11日掲載】

防災拠点へ耐震化対策を推進

「西」の伝統と文化に融け込んで


 公共建築の中でも、官庁施設は、時代のニーズに対応しながら、まちなみや景観形成を先導するとともに、建築技術の開発や技能継承の上においても、わが国の建築文化発展の上で大きな役割を果たしてきている。さらに近年では、大規模災害発生時における避難場所や救援・救助活動の対策本部としての機能が求められている。こうした中、国立施設をはじめ、所管する公共建築の維持保全に努めながら、公共建築の耐震化や長寿命化を計画的に進めている近畿地方整備局営繕部の住田浩典部長に、公共建築の役割や管内の状況について聞いた。

 (編集部・渡辺真也)
 

■まずは、公共建築の意義、役割についてお聞かせ下さい。

 公共建築は、国や地方公共団体等の建物だけでなく、民間施設であっても公共性の高いものを含んだ、広い概念としております。その用途も行政はもとより、医療や福祉、文化など様々な分野にわたり、国民や地域の方々にとって重要な役割を果たしています。国の機関では合同庁舎をはじめとする事務庁舎のほか、司法や治安、試験等の各機関、地方自治体でも同様に様々な施設があります。
 これら公共建築の役割は、住民の安全を守り、快適で豊かな暮らしを支えるための場を提供することであり、そのために、一定の水準を保ちながら必要な機能を発揮することは意義のあることだといえます。
 また、建築物全体で見ると、公共建築の占める割合は少なく、民間建築物が圧倒的に多くなっておりますが、耐震対策やバリアフリー化、環境への配慮等の分野において、民間建築をリードしてきた実績でもわかるように、今後も同様にその整備推進にあたっては、民間建築を先導していくことも公共建築の大きな役割であり、それを実施していくことも意義のあることだと思っております。

■ある意味で、民間建築の手本となっているわけですね。近畿地方整備局管内の公共建築の現状はどのように。

 管内にある国の建築物については、平成24年7月の時点では、延べ面積ベースで471万平方b、全国では4,847万平方bですから全体の9.7%に相当し、施設数では1,542施設、全国が1万4,900施設ですから近畿は全体の10.3%となり、1割近くが近畿管内に所在しております。このうち建設後30年を経過したものが39.4%あり、全国平均の35.2%を超えていることから、全体的に老朽化が進んでいる状況にあります。
 このため、適正な保全を行い、既存ストックを健全に維持し、長期耐用年数を確保することが従前にも増して重要になっていると考えます。勿論、建て替えが必要なものや新たな法令等により必要となるものに関しては新築することになりますが、それ以外については、大規模リニューアル等を実施して長寿命化を図ることも有効だと考えております。

■なるほど

 また、近畿管内の公共建築物には、非常に特徴的なものが多く、例えば国立の京都国際会館や京都、奈良の博物館、迎賓館等があります。元来、近畿地区が日本の西の拠点であり、長い歴史と伝統や文化を有していることから、関連する施設や地域に根ざした施設があり、これらを含めた公共建築が地域の活性化に貢献することを期待しております。

■公共建築物にはまた、防災拠点としての役割を求められておりますが、行政庁舎等は災害時に対策本部が置かれるなど特に重要な拠点となります。

 災害時には、各種の情報発信や救援、救助の拠点となる施設が必要となりますが、拠点自体が被災した場合、国民の安全を守ることができなくなりますから、防災拠点となる公共建築の整備は非常に重要となります。官庁施設の中でも、それら防災拠点となる施設については、これまでも優先度の高いものから耐震対策を進めてきております。
 近畿管内の国の建築物では、平成25年3月末現在で、面積で見た場合、耐震化率92%で全国平均を上回るペースで対策が実施されております。特に近畿では、阪神淡路大震災を経験しており、あと1年2カ月で発生から20年を迎え、一つの大きな節目となります。耐震改修に関しては、今後も100%達成を目指して順次、進めてまいります。
 現在では、神戸地方合同庁舎、神戸第二地方合同庁舎や京都法務総合庁舎等で耐震改修工事を実施しております。耐震化にあたっては、施設の特性等に応じて耐震改修や耐震補強とするか、あるいは全面建て替えとするかになりますが、いずれの場合でも、防災拠点となる施設については、構造体だけでなく、天井等の非構造部材や設備面においても耐震化していくことが重要となります。

■耐震対策はもとより、近年では津波対策も大きな課題となっておりますが。

 津波対策については、東日本大震災の教訓を踏まえ、社会資本整備審議会から今年2月、「大津波等を想定した官庁施設の機能確保の在り方について」の答申が出されました。その中では、避難計画等のソフト、耐震改修等のハードとの一体的対策により、津波レベルに応じた業務上の機能確保の目標を達成することや、津波防災診断の実施等の方向性が示されました。このため近畿管内では、和歌山をはじめ、南海トラフ巨大地震に対する備えが必要となることから、営繕部としても必要な対策を講じていくこととしております。
 国が管理する施設以外については、各自治体等で実施していただくことになりますから、総合耐震・対津波計画基準や津波防災診断について周知を図っていくことになります。また、学校や病院につきましても、我々が準備しているツールを活用していただけるよう呼びかけていきます。

■いずれにしろ、民間技術の先導や防災機能など、公共建築の果たす役割には大きなものがありますね。今後も良質な公共建築の整備に向けご尽力下さい。

住田浩典(すみだ・ひろのり)営繕部長の略歴
 昭和60年3月広島大学大学院工学研究科博士課程(前期)環境工学専攻修了。同年4月建設省採用、平成17年7月大臣官房付(保全技術研究所)、同19年7月大臣官房官庁営繕部計画課営繕積算システム官、同21年7月法務省大臣官房施設課技術企画室長、同23年4月大臣官房官庁営繕部計画課営繕計画調整官、同24年7月同営繕部整備課木材利用推進室長を経て、同25年7月から現職に。広島県出身。53歳。


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