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西日本建設業保証(株)大阪支店 宮城正支店次長  【平成25年09月26日掲載】


中間前払金制度の活用を

大阪府内市町村へ採用呼びかけ

円滑な資金調達に有効


 「中小企業者に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律」(中企業金融円滑化法)の終了に伴い、地場を中心とした中小建設業者の経営環境悪化が懸念される中、資金調達を円滑にする中間前払金制度への期待が高まってきている。全国的にも府県レベルはもとより、多くの市町村でも同制度が導入されているが、大阪府内での導入率は極めて低くなっている。このため制度を運用する西日本建設業保証鰍ナは今後、制度導入に向けた働きかけを進めていくとしており、その推進役となる同社大阪支店の宮城正支店次長に、制度のポイント等を聞いた。

■現在の建設業界を取り巻く状況をどう見ておられますか。

 平成10年度以後、公共投資が減少を続け、建設企業の疲弊が進むとともに倒産や廃業が増加、さらにリーマンショックがそれらに拍車をかけ、平成21年度単年度だけで見ましても、西日本の建設企業の倒産は約800社に上っております。このため、中小企業金融円滑化法が平成21年12月に施行されました。この法案により企業倒産件数が減少し、一定の効果が得られたことから、当初、時限立法として平成22年3月までを期限としておりましたが、3度にわたる延長措置がとられ、今年3月末で終了しました。

■いわゆるモラトリアム法ですね。

 この法案の終了後、倒産の増加が懸念されましたが、同法の精神は金融検査マニュアルに継承されております。同法では、不良債権と見なさず、通常債権として取り扱うことが出来るため、 金融機関としても引当金が不要となることから、民間の金融機関が引き続き支援を行っております。ただ、運用にあたっては金融機関によって多少の強弱はあります。
 しかし同法施行中も受注環境は好転せず、倒産企業は減少したものの、債務超過企業の割合が増加、当社の分析では、公共工事を主力とする元請企業の一七%は営業赤字を計上、特に小規模業者の経営状況は悪化しております。 この状況の中で円滑化法が終了しましたが、そこへ国の緊急経済対策が打ち出され、公共工事の増加が見込まれ業界の期待も高まっております。

■補正予算と併せ、今年度の公共工事は増加傾向にあるとされております。

 しかしながら、単に工事が増えたからと言って景気が回復されるわけではありません。確かに工事量の増加により需要は増えますが、経済の血液はやはり現金といえます。これが循環し、下請企業や資材等の会社にお金が行き渡ることで立替金や金利が減り、資金回収が進むことで資金がショートすることもなくなる。それにより利益が上がり給与も上がる。こういった現金回収の効果には大きなものがあります。
 このため、今回の緊急経済対策では、前払金制度の積極的な活用などにより予算を早期執行することとされ総務省と国土交通省の連名で、前払金制度と中間前払金制度が未導入の団体に対して、早期の導入を求めるとともに、支払限度額の見直し、工事代金支払いの迅速化が今年3月に通知されました。

■なるほど

 現在、経営状況が悪化している企業を民間金融機関が支えている形ですが、先行き不透明な部分もある。このため、今回の前払金や中間前払金の積極的活用の通知は、やはりある程度公的資金を投入して支援することの現れでしょう。経営の苦しい企業は資金繰りも厳しく、高い金利での借入をしなければならず、資材調達でも自己資金でないことから信用評価が低く、安く仕入れることができなくなっている。このキャッシュフローを改善することで収益性を高め、資金回転が速くなれば円滑な施工も可能となる。
 現在の建設業は、無理に無理を重ねている状況で、そこへ公的資金をスムーズに流入させれば、他所から借入をせずにすみ、現在の債務を徐々に返済することで現状のままキャッシュフローを改善することが可能となります。
 中間前払金は、立替払いが増加する年末や年度末で利用される場合が多い。中間前払金は請求時点から最短で23日後に支払われますから、月初めに請求すれば月末の支払に充てることが可能となります。支払金額は請負金額の2割となっており、現場検査もなく現金を受け取ることができ、保証料率も0.065%と低廉に設定されております。「今月を乗り切ることができれば会社が維持できる」とする市町村レベルの企業は多く、また実際に「この制度があったから助けられた」とする声も届いております。急場を凌ぐ場合のほか、日常的に利用し、金利を抑えて借入金を抑えるといったことも可能です。

■ある意味、セーフティネットの役割を果たしている。

 ですから府内市町村で積極的に採用していただき、活用してほしいと思っております。中間前払金制度は、平成12年から都道府県と市町村に導入され始めましたが、近畿での採用率は低く、特に大阪府は遅く平成24年度からで、現在では6つの市で採用されておりますが、近畿の他府県と比べ採用率が低いことから今般、未採用の市町村へ働きかけていくこととしました。
 採用にあたっては議会の承認も不要で、内部規則と請負契約約款の改正、要綱制定だけになります。ただ、市町村についてはある程度の資金準備は必要です。制度自体は昭和47年度からありますが、周知されていないのが現状です。特に大阪府の場合、昨年度から採用されたことからより周知を図っていく必要がありますね。

(文責・渡辺真也)
 

 前払金制度と中間前払金制度では、前払金率は4割、中間前払金2割と割合は決まっている。
 割合における支払限度額に関しては全国的には設定されていないが、近畿の場合は上限額が設定されているところが多く、現在の経済対策と合致しない部分がある。大阪の場合、近畿2府4県の平均と比べ、限度額を設定している市町村の割合が、近畿全体の69.2%に対して74.4%、中間前払金制度の採用では、近畿34.8%に比して大阪は14.0%と、いずれも平均を上下するものとなっている。 
 現在、大阪府を除き府内市町村で中間前払金制度を採用しているのは、大阪市、堺市、箕面市、茨木市、柏原市、藤井寺市の6市。



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