日刊建設新聞社   CO−PRESS.COM
大阪府住宅まちづくり部  佐野裕俊部長  【平成25年01月21日掲載】

「大阪を元気に」の施策推進

グランドデザイン・大阪、耐震化促進など


 大阪府におけるまちづくりや住宅政策はもとより、建設業の振興策まで幅広い分野での施策に総合的に取り組む大阪府住宅まちづくり部。昨年には、大阪の将来像を描いた「グランドデザイン・大阪」が策定され、同部に対しては、その実現に向けた新たな役割が期待されている。佐野裕俊部長は、「グランドデザインの策定は大きな動き」としながら、住宅の耐震化やニュータウン再生事業、府営住宅のあり方など、従来からの課題にも積極的に取り組んでいる。その佐野部長に、昨年の取り組みや来年度の見通しなどを語ってもらった。

(渡辺真也)

■まずは昨年を振り返って

 大きな動きとしてはグランドデザイン・大阪を策定したことです。府市統合の作業として大阪市内の将来像を描くことで、将来の大阪に希望をもたらすことができるようなデザインを打ち出せたことは大きいと思います。また、これに続くものとして、大阪市以外を対象としたグランドデザイン・大阪都市圏の策定に向けても動き始めるなど、新しい動きが出た年でありました。グランドデザインと住宅まちづくり部としての関わりで言えば、LRTの整備やうめきた2期での緑化等の実現に向け、経済団体等と連携した協議会を設立しました。また、グランドデザインで示された6つのエリアのうち、大阪城周辺エリアの森之宮地区と成人病センター、夢洲・咲洲エリアについても、住宅まちづくり部が取り組むことになりました。

■泉北ニュータウンの再生事業では。

 泉北ニュータウン再生に関しては、堺市や公的団体とともに泉北ニュータウン府市等連携協議会を設立し、昨年度は、公的賃貸住宅の再生事業による地域の再編などを志向した再生指針を策定しました。また、これまでに地元NPOと連携して、公営住宅の空家を福祉的に活用するなど、地域活性化に向けた試みを行っております。再生にあたっては、堺市による再生指針が策定されておりますが、その方針や目標を基本に、さらに官民連携の視点から、民間が公的資産を活用し、自律的かつ持続的に再生に取り組むことができる仕組みなど、より具体的な方向性を示した将来像が必要でしょう。特に、泉ヶ丘駅周辺は、泉北ニュータウン全体の再生にインパクトを与える地域であると認識しておりまして、住宅以外の機能、例えば学校等の教育施設を呼び込めないかと考えており、今春にオープンする東大谷高校の誘致などを行ってきたところです。

■昨年策定された住宅まちづくりマスタープランの中で、住宅セーフティネットの一つとしてバウチャー制度が提案されましたが。

 昨年3月に国に対して制度提案を行っております。バウチャーの場合、単なる家賃補助、金銭だけの支援ではないことが肝心です。府の提案では、適正な負担で適正な規模や水準のアフォーダブル住宅への入居を目標としております。部屋も広くバリアフリーも施しているような一定の水準を確保し、なおかつ適正な負担で入居できるといった仕組みをハードでなくソフトで実施することがバウチャー制度です。現在、その対象者は60万世帯と見込んでおりますが、その方達に税金をつぎ込むことを府民が納得するかどうか。そこでの議論は残りますし、適正な規模や水準がどの程度のものかを定める必要もあり、課題はあります。

■一時は、府営住宅を半減するのではといった見方もありましたが。

 現在、府営住宅は約13万8,000戸あり、これを半減すれば約7万世帯の人に何所かへ移って頂かなければなりません。ただ一方的に戸数を削減するのではなく、この7万世帯に対する対策が必要と考えております。

■さて来年度ですが事業の見通しや展望はどのように。

 継続事業が中心となりますが、新規事業としては予算要求の段階であり予算が付くか付かないかは別としましても、建物防災の強化が重要であるとして、戸建住宅の耐震補助と避難路の確保、大地震発生時に緊急車両の通行を確保するため、避難路沿いの建物を強固なものとするため耐震診断を義務付け、補助金交付する条例の制定に向けた要求を行っております。

■グランドデザイン関係では。

 LRTやJR桜島線延伸等の鉄道部分の調査、御堂筋緑化に向けての調査などを予定しております。このほか、りんくうタウンでのクールジャパンフロントのまちづくりの実現に向けて、事業主体を立ち上げるためのコンペも考えています。府営住宅に関しては、平成27年度までに耐震化率九割達成を目標としていることから、目標達成に向けて、建て替え事業と耐震改修事業の平成25年度予算要求を行っております。いずれにしろ今年度は予算、特に府営住宅の整備に係る国費が不足したことで思ったような工事発注ができず、業界方々には申し訳なく思っております。

■入札契約制度では、予定価格の事後公表が拡大されました。

 予定価格の事後公表の拡大と最低制限価格の見直しなどにより、落札率は上がってきており、効果はありました。各建設業団体からも歓迎されているようです。ただ、職人さんが不足しているということで、今後の工事への影響が少し懸念されます。現在、社会保険加入に向けた取り組みが進められておりますが、これに関して府では入札条件にはしておりませんが、許可申請や経審でチェック機能を強化しております。ただ、実現に向けての課題も多く、まだまだ時間を要すると思いますが、これをやらないと業界に若い人が入ってこないことも確かです。これら建設業の振興も含め、大阪を元気にするという観点からも今後ともまちづくりに取り組んでいこうと思っております。

■ありがとうございました。



Copyright (C) NIKKAN KENSETSU SHINBUNSHA. All Rights Reserved.
当サイトを利用した結果に関するトラブルなどに関しては、当社としては一切責任をとりかねます。