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ビナスチールセンター 犬井佳孝社長 【平成25年01月10日掲載】 |
ベトナムで短納期小口販売の充実目指す プレハブ鉄骨建物向けに特化 独自の機能と役割 |
昨年1月〜11月の対ベトナムFDI(海外直接投資)は前年同期比1.5%の減少。あわせて新規投資契約は同21.4%減。景気低迷もあって低落傾向が浮き彫りになったものの、国別では依然、日本が大きな存在感を示す。また、日系企業によるインフラ整備や工場建設などが続く中、建材の流通・加工分野においても、高い機能が求められ始めた。 |
ベトナム南部で建築用鋼材の保管、切断加工などを手がける「ビナスチールセンター」(以下VSCC)。 |
「3年前、親会社の岡谷鋼機が新日鉄さん(現新日鉄住金)と共同で、ベトナムのプレハブ鉄骨建物の最大手、『PEBスチールビルディングス』(以下PEB社)に出資した。折しもPEB社は主力工場の建設計画を進めており、また当時、鉄骨の母材を外部調達していた。それなら、必要な数量をタイムリーに供給できる体制をつくろうと決めた」 |
岡谷鋼機から出向し、昨年9月にVSCC社長に就任した犬井佳孝氏は設立経緯をこう話す。 |
柱の母材を供給 |
ところで、ベトナムのプレハブ鉄骨建物の部材は日本とは多少異なる。H形鋼やコラム(角形鋼管)は現地であまり流通しておらず、柱や梁については、鋼板をカットしてつくりあげていく。 |
「当社が納めた材料をPEB社の工場で上手く切り板する。ここにノウハウがある。鋼材の使用量は最小限でロスがなく、しかも強度をクリアできる取り合わせ。だから軽量化によってコストダウンできる。そんな工法だ。あわせて素材を共有できるメリットも大きい」と犬井社長。またそれ以外にも様々な特長がある。 |
建築基準や文化的な違いなどから日本では用途が限定される工法だが、アメリカやインド、中東などの多くの国や地域で普及し、広がりを見せる。ベトナムの工場建設では既に主流だ。また、世界市場ではサウジのザミールがトップシェア。PEB社は二番手だという。 |
「今のところ当社の出荷先は、PEB社がメイン。他にローカル業者では、大手のダイウンさん、クアトロンさん、BMBさんなどとも取引している。鉄骨用の板材というのはグレードが高い。これを常時ストックしている業者は、当社以外にはあまりない。そのため、緊急出荷の注文も入る。徐々に実績はついてきた」 |
最近では、トレーラーの荷台用途への採用も決まり、新たな動きも出てきた。とはいえ、取り巻く環境は厳しい。 |
「ここ1年〜2年、ベトナムは特に景気が悪い。インフラ整備も遅れがちで、まさに辛抱という感じ。今は当社の役割を確実に果たし、じっくり足元を固める時期だと思う。ただ当社の場合、一般的なコイルセンターとは少々仕組みが違う。だからこそ結果を出し、次のステップに進みたい。敷地内にはスペースもあり、建屋もつくれる。今ここで踏ん張れば、道は開けると思う」 |
他のアセアン諸国にも期待 |
対ベトナムのFDI案件は日本企業が最も多い。従って現状では、日系工場がPEB社、ひいてはVSCCの主要ターゲットとなる。その一方で犬井社長は、他のアセアン諸国への展開にも期待を込める。 |
「他国でPEB社の実績が伸びれば、当然、当社の出荷も増えて売上も伸びていく。まさにウィンウィンの関係にある」犬井社長はそう言う。もっとも今年は、コイルセンター本来の機能でもある小口販売を強化したい考えだ。 |
「ベトナムでは代金回収が大きな問題で、引っかかったら大変。現地企業への販売に際しては、しつこいくらいの事前協議が必要。また一般的な調査資料も全て正しいとは限らない。実際に社長と面談し、人格などを見極める。それでも不安な客先にはキャッシュ、つまり前金以外で売ることは不可能。引き合いを受けるかどうかの判断は難しく、与信管理のレベルをさらに高めてトライしていく。まだまだ生まれたてのヒヨコのような会社だが、ベトナム人スタッフはみんな若くて優秀。何とか盛り上げて、ゆっくり急いで、やっていきたい」 |
( 中山 貴雄 ) |
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