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土木学会関西支部 酒井和広支部長 【平成24年11月19日掲載】 |
安全・安心のインフラ整備 東南海・南海地震への備えも多角的に提言 |
毎年11月18日の「土木の日」とそれに続く「くらしと土木の週間」は、土木が果たす役割を広く理解してもらうことを目的に「公益社団法人 土木学会」が昭和62年に設定したもので、今年で26回目を迎えた。相次ぐ自然災害により、社会資本整備の重要性が再認識される中、その社会資本整備に土木事業は不可欠なものとなっている。土木事業の現状やこれからの課題を土木学会関西支部の酒井和広支部長に、同支部の活動を含めて聞いてみた。 |
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■土木の果たす役割についてお考えをお聞かせ下さい。 |
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一言で言えば、国民の幸せと安全・安心のためのインフラ整備というのが土木の果たす役割だと考えております。産・官・学など係わる人の範囲が広いですし、実際に土木学会の中で扱っている分野も純粋に学術的なものから土木の歴史に至るまで非常に広範囲にわたっています。また、一般の方には取り付きにくいものがある一方で、人々の社会生活に密接に関連した文化や歴史、文明などとの繋がりが深いところもあります。学術としての専門性は深い所までの追求が必要ですが、あまり専門に分化しすぎないで、総合的な学問として、バランスを保つことが重要な役割であると思います。生活に密着した現実の世界とサイエンス(科学)との間を埋めるため、ある割り切りを行うのが工学の世界だと思います。 |
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■学問として以外の土木の現状について。 |
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学問などで知りえた事柄を何か形にするところに土木の存在価値があると思います。一方で土木の現実の世界では、常に天災と背中合わせであるところに課題があると思います。構造物の製作において設計上の想定を作りますが、想定以上のことが起こることへの不安に対処しておく必要があります。土木が扱っている材料は、コンクリートを含めさまざまな物質の集合体で、性質も均一ではなく、また自然による外力を相手としているので、2倍3倍と安全率を掛けますが、阪神大震災では、想定以上の揺れで高速道路が倒壊し、日本の高速道路は地震に強いという安全神話が崩れました。しかし、原因が分かるとすぐに設計上の変更をし、耐震補強を行いました。真摯に現実を受け入れて、その都度即座に改良を重ねていくことが、土木にとって最も重要なところだと思います。 |
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■これからの課題は。 |
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あえて課題を3つあげれば、1つ目は、強くしなやかな国土をつくり、災害への耐性を高める工夫をすること。土木学会として具体的な提言をしていくことです。2つ目は、これも重要な課題ですが、高度経済成長を支えたインフラの老朽化に直面しています。構造物を効率的に点検し、その結果を評価する技術の確立です。緊急に手当てをしなければならないところ、5年・10年のスパンの中で手当てをするところの仕分けをするための調査技術を打ち立て、検査システムを構築し、合理的な投資をすることです。これは地震の問題と並行して進めていかなければならないことです。3つ目は、公共事業バッシングが相変わらず続いているのですが、土木・建設事業に係わる人、特に若い人が将来性を感じられる、夢が持て、まだ発展する余地のある分野であると感じてもらえるような下地づくりをしていくことです。 |
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■減災・防災における土木について、災害対応も含めてお聞かせください。 |
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阪神大震災以降、日本列島の地震活動の活発化が始まったと言われています。ハード対策とソフト対策の組み合わせにより、減災・防災を行うことが大切です。人間の寿命というサイクルの中での対応と、もっと長いサイクルで考えた時の対応を分けて考える事も必要だと思います。大震災の経験を経て、安心・安全のために必要なものを作ることの重要性を社会全体が再認識しました。対策費も考慮して、研究者だけでなく国民全体でのコンセンサスの中で災害対応を行わないとだめだと思います。そのためにも土木学会は重要な位置にあると考えています。いろんな利害関係を乗り越えて、中立的な立場で発言できる集団が、土木学会だと思います。 |
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■関西支部としての活動について。 |
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東日本大震災直後から津波被災地での現地調査を踏まえた研究に着手し、東南海・南海地震による津波災害を出来るだけ最小限に食い止めるための施策について多角的に提言するために、本部とは違う体制で研究しております。報告会を既に4回開催しており、来年の3月に5回目の報告会を開催する予定で研究の成果を今まとめているところです。 |
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■今後を期待しております。ありがとうございました。 |
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