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建設産業専門団体近畿地区連合会 北浦年一会長 【平成24年03月05日掲載】 |
「社会保険加入 法制化を」 ダンピング重層構造 その根源は職人の保険未加入に このままでは優良業者が苦境 |
社会保険未加入企業の排除に関して、国土交通省では先頃、その対策に向けた方針を打ち出したが、その対策について建設産業専門団体近畿地区連合会の北浦年一会長は「保険加入を法制化し、最優先で取り組むべき」として法令化に向けて今後、働きかけていくとしている。また、保険加入までの猶予期間についても、既に保険に加入して職人を抱えている業者から「このままでは持たない」との声が上がっていると危機感を示し、対策のスピードを上げる必要があると指摘する。対策を巡る専門工事業界の動きについて北浦会長に聞いた。 (聞き手・中山貴雄) |
■保険加入そのものについては。 |
保険にも入れないような業界に将来はない。厳しい環境だが現状のままでは現場の職人が続かない。建専連西日本ブロックの意見としてはすでにまとまっており加入に向けて動き出すこととしている。抜本的改革は賛成だが、ただ、未加入企業は不良不適格業者と認定するとしながら、その規定が省令であり法令でないことが気になる。我々が訴えてきたことがようやく形になり取り入れられてきたが、省令となれば骨抜きになる恐れがある。 |
■専門工事業界としても変革が求められる。 |
当然、我々がしっかりしないとだめだ。国や元請まかせではなく、自らすべきことは何か、そのためには何をすべきかを考え主張することが必要だが、それができない。なぜなら職人を抱えていないからだ。少なくとも一次業者はもとより、二次業者でも3割程度の職人を直用で抱えないと健全な企業にはならない。三割程度の、それも職長クラスの職人を抱えてきっちりとした体制を整える。勿論保険には加入する。直用で職人を抱えていないとだめだ。今は営業社員や技術者は直用で保険にも加入しているが、職人は必ずしもそうではない。 |
■対策では職人の加入も求めてはいますが。 |
今回の対策でも、どうもその辺りが曖昧となっている。もっと職人に焦点を充てるべきだ。このままだと保険料は自己負担と捉えられる。だから法令でその辺をきちんとすべきだ。それをやらずに放置すれば自己負担を避けるために一人親方が増えるだけ。周知啓発や指導期間で四年としているが、このままずるずると行ってしまえば、既に職人を抱え保険に加入している健全な業者が持たない。私がいつも言っている「良い業者が潰れ、不良業者が残る」ことが加速することになる。対策は企業や社員、技術者に焦点を合わせたように思われ、職人には焦点を合わせていないと強く感じる。上からの目線では絶対にだめだ。下からの職人からの改善を先に進めないと業界の未来はないだろう。 |
■建専連西日本ブロックでは、そのあたりの考えで一致している。 |
各業者ともその辺のことは分かっているはずだが、目先のことにとらわれてしまっている。職人を抱えていれば分かることで、現に保険加入率の高い広島や九州の業者は「対策のスピードを早めていかないと会社が持たない」と悲鳴を上げている。元請も猶予期間があれば単価の安い業者に仕事を回すから、そうなると一人親方となっていくところが増える。未加入企業を排除するにしても、保険料問題等の加入に際してのより具体的な対策は示されていない。 |
■問題は、職人を直用にして保険にも加入したいが、お金の流れがはっきりしないことがネックになっている業者が多い。 |
法令で決めてほしいというのはそこで、法律で定めれば元請も遵守する。それを啓発や指導であれば期間内は現状のままとなり、まともな業者は苦しく、人を切るか廃業するか、潰れるかの選択肢しか残っていない。本気でやるならペナルティーを付けるべきだ。保険料の負担にしても元請は下請の責任とし、下請も一次は二次の責任とする。結果、自己負担となるという現状のままで変わらない。現実をもっと見るべきだ。恐らく指導期間内は何も変わらないだろう。もっとスピードを上げてやらないとだめだ。 |
■保険加入の法制化とスピードアップを図る。 |
また、都市部と地方部の温度差、特に関西と東京では受け取り方がぜんぜん違っていることも問題だ。東京ではある程度の仕事量があり、単価も大阪に比べて高いことから比較的余裕がある。先程も言ったように国と地方自治体に温度差があるように、業界内でも温度差がある。ただ、加入率の高い中国、九州地区でもまとまっているとは言いながら、この状況が続くようなら直用を切り替えて職人を一人親方とする方向も検討しており、国の方策に逆行することになる。 |
■今後の対応は。 |
西日本ブロックとしては法制化に向けて訴えていく。苦しいがこれを乗り切らないと業界の未来はないとの思いで一致している。団体としては法制化を求め、 業界に対しては各事業主は勇気を持ち、時代の流れを読みながら、言うべきことは言わないとだめだと言いたい。自分の会社は自分で守る気概が必要だ。逆に言えば一次業者も 二次業者も職人を抱えていれば生き残れるチャンスだということだ。 |
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