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村上毅・大阪府都市整備部長   【平成24年01月16日掲載】

来年度は継続事業が柱

後退許されぬインフラ整備

ハイウエイオーソリティ構想 料金体系の確立へ


社会情勢の変化や財政状況の影響により、社会基盤整備のあり方も時代のニーズに合わせたものへとシフトしていくこととなるが、大阪府では昨年、槇尾川ダムの建設を中止するなど、従来型の整備手法からの大転換が図れた。大阪府のインフラ整備を担う都市整備部の村上毅部長は、「厳しい財政状況の中にあっても、インフラ整備の後退は許されない」として、効率的で効果的な事業執行に務めている。その村上部長に昨年の事業状況や来年度の見通しについて聞いた。(編集部・渡辺真也)

■昨年の事業経過から。

ハイウエイオーソリティ構想の第一歩として、阪神都市圏高速道路の料金体系についてNEXCO路線も含め、「国と地方の検討会」において議論することとなり、一定の進展が見られたことは一つの成果ではありました。我々としては、運営主体により料金が違うという道路を造る側の論理ではなく、利用者の側に立った運営のあり方を考えることとしております。料金体系を変えることにより、交通量の分散化による環境対策や物流効率化による空港や港湾、さらには関西経済の活性化などにつながると考えております。

■なるほど。

もう一つは職員の意識改革も含め、新たな治水対策を実行に移したことです。これまで50年以上先の実現を目標としていたものを、10年スパンに区切りながら危険リスクとともに整備効果を開示するといった手法に転換するとともに「逃げる」や「凌ぐ」といった都市計画的な土地利用を含めた考えかたを取り入れることとしました。これは東日本大震災での考え方と同じです。勿論、ミニマムとしての50ミリ対策や床上浸水対策は実施していきます。

■今年度に供用開始したものは。

寝屋川流域下水道での南部地下河川で6つの増補幹線がつながり内水浸水域が6100ヘクタールとなりました。道路事業では和泉中央線アンダーパス、国文の清水高架橋が供用開始され、泉佐野岩出線や連立事業の南海本線泉大津駅が間もなく完成です。あと津波高潮ステーションの来館者が大幅に増えたことからリニューアルの必要が出てきました。

■府民との協働事業では。

みどりの風を感じる事業では、東大阪市の308号などで約80社の企業から賛同を得ることが出来ました。金融関係では沿線での建物建て替え利率の引き下げ、造園関係では緑化資材のディスカウントの実施、緑化敷地の提供など様々な支援、協力を頂きました。さらに、地域や企業と手を携える運動として「笑働OSAKA」運動も着実に軌道に乗ってきました。

■東日本大震災の支援活動の状況を。

震災発生以来、現在までに延べ約30人程度が従事し、このうち16人が大船渡市に長期派遣しております。府では和歌山県とともに岩手県の支援を担当していましたが、台風12号で和歌山と奈良で被害が発生したことで和歌山県の職員が引き上げることとなり、その後任として3人増員したことから現在、19人が現地で活動にあたっております。さらに和歌山県と奈良県にも災害復旧支援要員を派遣しております。派遣職員は希望者を募っており、いずれも士気は高いです。また、府の災害対応の基本は逃げることとしており、津波対策として避難ビルの指定などを行っていますが、中央防災会議の知見を見ながら耐震補強など必要な措置を講じていきます。

■さて来年度事業ですが予算規模としては。

予算規模については、我々の意識では下がるところまで下がっており、ピーク時に比べればかなり落ち込んでいます。このためこれ以上は削れないという気持ちがあります。前年度、今年度と休止した事業もあり、これ以上の事業休止は避けたいという思いがあり、建設事業費に関しては昨年度と同額程度は要求したいと考えています。特に予防保全に関しては3カ年で30億円ずつ増やしていく予定であり、来年度はその2年目にあたることから、維持管理に関してはきっちりと実施してまいります。インフラ整備での後退は許されませんから。

■新規事業より予防保全を中心とした継続事業が柱となる。

建設事業に関しては、早期の完成が見込まれるものは出来るだけ早くに仕上げたいとは考えております。ただ、現在の枠組みでクリア出来なくとも、将来の都市経営や都市活動で考えた場合、必要であるものは財源や整備手法を考えていけるような仕組みをつくる必要はあります。財源が手当て出来ないからといって停滞することは避けたいです。また、東日本大震災以降、高速道路のあり方有識者委員会において、複数の国土軸が必要との観点から新名神高速道路の必要性が認められたところであり、これと併せて都市高速に関しても大阪府をはじめとする関係府県、市とともにハイウエイオーソリティ構想に向けた料金体を確立していきたいと思っています。

■国土交通省では、不良不適格業者の排除の観点から保険未加入企業の排除、登録基幹技能者の活用等を打ち出しておりますが、都市整備部としての取り組みは。

府としても不良不適格業者の排除については、事前公表による最低制限価格への張り付きによりくじ入札が多発するなど、工事の品質と早期完成への観点から様々な施策を実施しております。総合評価方式に関しては特殊工事や大型工事を除き手続きの簡素化を目指すこととしておりますが、企業の社会貢献や災害対応等は評価する必要はあります。特に大阪府は落札率が全国でも最低ということで、その辺りの対策もきっちりとやっていきます。



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