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UR都市機構 尾畑和雄 学研都市事業本部長  【平成23年6月30日掲載】

都市マネジメントの時代へ

エコタウンと農(みのり)のあるまちづくり


独立行政法人都市機構関西文化学術研究都市事業本部の尾畑和雄本部長はこのほど、本部長就任にあたっての会見を行い抱負などを述べた。会見で尾畑本部長は、エコタウンプロジェクトや農(みのり)のあるまちづくりをコンセプトとする学研都市が、「都市マネジメントの時代に入った」としながら、まちづくりについて「住む人が街を育て、それに対する提案やサポートをすることでお役に立ちたい」と語った。

大震災で思う都市のあり方

「関西文化学術研究都市は国家プロジェクトであり、その名に恥じないよう取りまとめていかなければならない」と就任の弁を語る。昭和63年に建設促進法が公布されて以来、長期にわたり事業が進められてきたが、現在は節目にきているとし、「いわゆる建設の時代からマネジメントの時代になったということで、それを踏まえて私共もよりよい地域社会になるよう目指したい」と抱負を語る。

いくつかあるテーマの中で、代表的なものとして「国際社会を意識した文化学術都市」を挙げる。研究機関や施設だけでなく「生活の面でも日本をリードするような街づくりをしていきたい」と意欲を見せる。そのまちづくりに関しては、住宅や産業立地ということだけでなく、周辺の地域財産を活かした豊かな街づくりに繋げていく必要があるとする。

「これまでは地区の中だけでしたが、都市マネジメントとなりますと広いエリアを対象とした発想が必要。URの業務分担という意味では、地区の中でも広がりをもった仕事、いわゆる官民連携(PPP)での展開を意識して地域の人たちとより良い社会環境を作っていきたい」

しかし、東日本大震災は都市のあり方を改めて考え直す契機となったとする。「防災、安心、安全というのはあるが、エネルギー問題も大きな課題。例えば震災が起きるまでは、CO2削減や京都議定書に基づいた話題であったが、本当に生活にとってどうなのかというところが切実に皆さん感じてきているのではないでしょうか」。

防災の観点から見た学研都市については「日本の都市全体をどうするのかについて提案ができるゾーンだと思っています」。単に震災があったから住居や企業を移転するということではないとし、BCP(事業継続計画)のビジネスのBではなく、シティのCとしてのCCP(都市継続計画)との発想で考える必要があるとする。

「学研都市は京阪奈の接点であり、程よい緑の中に都市が広がる位置的には近畿圏のへそであり、近畿圏発展ために、大規模災害も考慮した都市の機能配置、バックアップ機能のようなものが考えられると良いと思います」。

今回、震災の影響を受けた企業の誘致も文化学術研究地区という傘だけでなく柔軟に対応したい考えで、それが関西経済圏の発展になればとしながらも、被災地支援は、被災地のみならず日本全国の災害対策の要であり「少しでもそのお役に立てればと」と語る。

エネルギーを「見える化」

一方、エネルギー問題に対処する考えとしてエコタウン構想があり、学研都市では既に着手している。特に同志社山手では、住民が参加して自分たちのエネルギーがどのようになっているのかがわかるエネルギー見える化実証プロジェクトを行っている。

この同志社山手のエコタウンは、CO2の削減目標を50%として現在もチャレンジが続けてられている。見える化が進み、実験の様子が実際表面化されると より鮮明に、この重要性が周知されると期待している。「エネルギーマネジメントは先人がチャレンジした良いプロジェクトであり、そういう理解の元に、 住民の協力も得て深みが出たということだと思います」

また、「震災を踏まえてどのように過ごすべきかが見えてくるとおもいます。見る角度を変えてみると、エコタウンという産業プロジェクトだけでなく、 住民による生活プロジェクトであるというところが見えてくるのではないか。我々はそのフィールドを提供していると考えています」。
7月には宅地分譲の計画もあり、広く関心をもっていただけるようにエコタウンを売り出していきたいとし、宅地分譲としての単位は小さいが、同志社山手だけでなく 「学研都市エリア全体に関心がひろがっていけば」と期待を寄せる。

今後の戦略や目標については、企業用と学術研究用の土地を生活に資する意味でも「一部分用途を柔軟に対応できれば」との考えを示し 「それが街の成熟につながると期待もしています」。
また同志社山手は、コミュニティ単位でのエネルギーマネジメントという発想で、ある意味、政府主導の環境ビジネスでもあるとしながら 「コミュニティツールを利用し、コミュニティ全体で省エネタウンになっていけばと考えます。見える化実証プロジェクトの中で 今後いろんな方針が浮上ってくると期待しています」

エネルギーを通しただけで各世帯のことが分かり、コミュニティの連携に繋がっていくことを理想として求めていく「学研都市ならではの コンセプトに基づいた実験やその成果を新しいまちづくりとして発信していきたい」。

住む人たちが街を育てる・・・

エコタウンプロジェクトも木津地区で進めている農(みのり)のあるまちづくりも、公だけでなく、民間や市民レベルでの連携が 「都市マネジメントのキーワード」と指摘する。理想のまちづくりを推進するため柔軟に、いろんな提案をしながら「住む人たちが街を育てていく段階にきていると思います」

都市マネジメントの時代となり、地域の価値を上げる意味でエコタウンと農のあるまちづくりの二つを挙げるが「実際それだけで生活する訳ではなく、 それらを街の付加価値として織り込んでいくことで都市活動が展開しやすくなるとは思います」。このため、いろんな提言をし、 住民と相談しながら組み立てていく中で「自ずと役割が見えてくるのではないかと思っております」。

ビジネスの方向であれば企業が動き、ビジネスではないがエリアに必要となれば行政や我々がバックアップできればーと述べ、 それらの動きの中で「エリアのポテンシャルが上がれば相当な財産になるでしょうし、将来的にリニア新幹線が設置されれば、それに向けて議論や提案をして いく価値はあると思います」と思いを馳せる。

これまで、ニュータウン事業をはじめ街の活性化事業に数多く従事してきた。地方都市再生では長崎駅前整備や九州新幹線開通に伴う 鹿児島中央駅前整備、別府では温泉街の再生、都心では東京渋谷区の区画整備等に携わってきた。

たしなむ程度の囲碁とともに趣味に挙げるロードバイクは九州勤務時代から。街並みを見ながらの走行は一度乗ったら「50キロは走ります」。 奈良はロードバイクに適した場所に歴史的重要文化財も多く「その景色を眺めながら新しいまちづくりの構想を考えてみたい」。

林望氏の言葉で「致志于身後百歳焉」(志【こころざし】を身後【しんご】百歳【はくさい】に致【いたす】)百年残る仕事、あるいは 百年先を考えた仕事をしなさいという意気込みが大事だという林氏の言葉を座右の銘とし、まちづくりに携わる者として大事にしている。奈良、京都に係わる 学研都市では、百歳ではなく、千歳に変えることも思案中。

尾畑和雄(おばた・かずお)
昭和51年4月宅地開発公団、同56年10月住宅・都市整備公団、平成11年7月千葉地域支社都市整備部事業計画第二課長、同11年10月都市基盤整備公団、同13年6月東京支社多摩ニュータウン事業本部事業部事業計画第一課長、同15年7月本社事業企画室調査役、同16年7月独立行政法人都市再生機構募集販売本部販売推進部次長、同17年7月募集販売本部住宅用地販売部担当部長、同19年6月九州支社都市再生企画部長、同21年6月千葉地域支社副地域支社長、同22年7月東京都心支社副支社長を経て、今年5月に西日本支社関西文化学術研究都市事業本部長に。北海道大学工学部建築工学科卒。帯広市出身。五八歳。


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