日刊建設新聞社 CO−PRESS.COM |
住友電設株式会社 菅沼敬行社長 【平成23年1月20日掲載】 |
「攻め」と「守り」―企業の質で勝負 海外事業の拡大・強化へ 原点回帰でレベルアップ |
住友電設(株)の菅沼敬行社長はこのほど、恒例となった新年の報道関係者との社長懇談会(インタビュー)を催した。この中で菅沼社長は、これまで進めてきた経営体質改善の効果が着実に実っていることを踏まえ、「攻め」で海外事業の拡大・強化、「守り」で原点回帰の経営方針に基づき、国内外の市場動向に対応した組織の見直しや人的資源の再配置を行うなど、「企業の質で勝負」する意気込みを示した。 |
■業界の現状をどうみておられますか。 |
菅沼社長 |
2010年度、2011年度の建設投資は40兆円を割り込む見通しで非常に厳しい。1977年度の39兆円のレベルまで落ち込んでいる。当時は国内総生産(GDP)が190兆円であったから、39兆円と言っても建設投資はそのうちの約20%を占めていた。ところが2011年度のGDPは約475兆円と言われている。建設投資が占める割合は8%にすぎず、国内全体のGDPに影響を与える数値としては、極めて低いのが今の実態だ。公共投資については、今後の伸びは期待できない。これまで進めてきたインフラをどう再整備し、どう守っていくかという時代に変わってきていると受け止めている。その意味で一定の仕事量を確保していくためには、国内に留まっていては難しい。新たな海外戦略も含めて、仕事量を確保していくという考え方に立たざるを得ない。これが今、建設業界が置かれている状況ではないかと思う。 |
■経営状況について。 |
菅沼社長 |
2009年度までの決算は、順調に業績を伸ばすことが出来た。社長を引き継いで約5年。この間、量から質への転換を旗印に経営を推し進めてきた結果、体質の強化は確実に進んだと思っている。具体的には赤字受注がなくなり、固有経費も約2割削減できた。現場利益も以前と比べると大幅に上がっている。自己資本比率も改善されるなど、財務体質も強化できた。しかし、2010年に入り事態が急変し、今年度は厳しい決算とならざるを得ない。単体での売上高は約800億円弱と、これまで経験のない落ち込み率となる見通しだ。経常利益は単体で30億円強、連結で40億円強の計上を考えている。来年度にかけても厳しい経営環境が続くと思うが、「企業の質で勝負」したい。 |
■具体的な経営方針を |
菅沼社長 |
2010年度が景気低迷の底と思っている。2011年度の受注・売上が昨年程度であっても、採算重視の姿勢を変えないで、「攻め」と「守り」で利益率を維持していきたい。「攻め」は人的資源の再配置。国内の需要減をカバーしていくために、海外事業の拡大・強化に軸足を置いて進めていく。他社よりも早く海外に進出し、現地に根を張って事業展開を行っており、優位なポジションにあると考えている。インドネシア・マレーシアは30年以上、タイ・フィリピンは20年以上、中国も10年以上の実績がある。この優位性を活かして、今年はさらに海外事業の拡大に力を注いでいくタイミングではないかと思っている。そのためには、国内の優秀な人材を海外に向けて、ダイナミックにチェンジしていかなくてはいけない。これが「攻め」の柱。一方、「守り」では、経費の削減、現場利益の向上などの体質改善について、もう一度「原点回帰」し、さらなるレベルアップを図ること。今は耐えて基礎を創り直す時だと思っている。特に厳しい時代にあっては、ミス・エラーの発生が赤字に繋がる。次第に少なくなってきてはいるが、工事をスタートする時に徹底的に原価検討を行うなど、よりスピーディーに対応できる体制を整え、ミス・エラーを撲滅し、さらなる体質強化を図っていく。 |
■海外の事業展開について詳しくお願いします。 |
菅沼社長 |
2008年のリーマン・ショック(世界金融危機)で、タイを中心に市場は冷え込んでいた。しかし、2009年半ばからタイで自動車メーカーを中心としたサプライヤーが急激に再興し、活発化している。インドネシアは広くて人口も多く魅力的な市場だ。中国は人件費が安い内陸部へ日系企業が進出しつつあり、当社もそれに合わせ対応していくつもりだ。今後、飛躍する最有力はカンボジアだろう。インドも広くて魅力があるが、いずれにしても海外事業はリスクを考えながら慎重に、ステップバイステップで対応していきたい。今後も日本企業の強みである「顧客には誠実に、仕事は丁寧に」をモットーに、海外の事業を積極的に展開したい。 |
■国内での事業展開についてお聞きします。 |
菅沼社長 |
国内では、データセンター、流通倉庫、病院関係の電気設備などの引き合いはある。これらの分野には力を入れていかなければならない。送電線等の張り替えなども安定した需要が期待できる。また環境ビジネスにおいては、一つの事業では、どうしてもコスト競争に巻き込まれてしまう恐れがあるため、太陽光発電だけでなく、ビルマネジメントシステム(BMS)、リロケーションなどを合わせ、複合的に事業を推し進めたい。そのためには組織再編を行い、環境ソリューション事業のようなスタイルに持っていければと考えている。人材育成も大事だ。全社経営研究会的なものを立ち上げたい。また、これからはグローバル化が一段と進むことが予想されるため、海外事業も含めた、将来の幹部候補生を養成したいと考えている。 |
Copyright (C) 2000−2010 NIKKAN KENSETSU SHINBUNSHA. All Rights Reserved.
当サイトを利用した結果に関するトラブルなどに関しては、当社としては一切責任をとりかねます。