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interview
大阪府住宅まちづくり部 吉田敏昭部長  【平成23年1月17日掲載】

転換期 の 府 住宅政策

「まちまるごと耐震化へ」

市場活用とストック活用がポイント


大阪府住宅まちづくり部では昨年、住宅セーフティーネット構築により従来の住宅政策の見直しを図り、府営住宅での指定管理者制度の試行や資産活用を実施するなど新たな試みを図り、また来年度事業についても、まちまるごと耐震化事業など、これまでにない施策の展開を予定している。「昨年は大きな転換期だった」とする吉田敏昭部長に、これまでの取り組みや来年度の見通しなどを聞いた。 (渡辺真也)

■昨年の事業経過から。

吉田部長

「昨年はこれまでの住宅まちづくり政策の見直しを行い、住宅まちづくり部としての大きな転換期でした。特に住宅セーフティネットに関して府営住宅だけでなく、住宅市場全体を踏まえた政策を展開していくという大きな方向性を打ち出しました。これについては、府営住宅の戸数を半減するといった部分だけがクローズアップされましたが、府営住宅の戸数を縮減する中で、現在の入居者や入居対象となるような住宅困窮者といった方々に対してセーフティネットとして新たに政策を立て、その中では府営住宅をはじめとする公的住宅と民間住宅を併せて活用しようとするものです」

■府営や公社、URの住宅に加え民間住宅も含めた枠組みを形成するものですね。

吉田部長

「将来的には高齢者が増加し、世帯数が減少しながらウエイトだけが高まっていくことになるため、それらの方々の住居を確保する必要があり、特に単身者が増えてくることから福祉サービス付きの高齢者住宅をセーフティネットの一つとして位置付けようと考えております。このため福祉部局との連携が必要となり、既に庁内で検討委員会を設けて話し合いを進めております。条件整備を行った上で半減を目指していくものであり、従来の府営住宅を中心にした政策から民間住宅も含めた政策へ転換を図っていきます」

■資産の有効活用も課題ですね。

吉田部長

「資産活用については、380団地で約13万8千戸、延べ1千ヘクタールの膨大な府営住宅の資産を有効活用していくことが求められております。特に駐車場で約7万台分のうち空き区画が約2万台あり、これを従来の月極契約のほか路上駐車対策の意味も含めて時間貸しを実施するため、歩合制を導入して民間事業者に貸付け、現在、100を超す団地で実施しております。府有資産を歩合制で活用するというこれまでにない取り組みで、知事からも評価をいただきました」

■昨年からはさまざまな取り組みも行われておりますが。

吉田部長

「府営住宅の指定管理者制度を北河内エリアの半分で試行実施しております。来年度は残りのエリアでも実施し、これにより住宅供給公社の一管理センターの管理分を指定管理とすることになります。これを一つのステップとして指定管理者制度の本格実施に向けて取り組んでいきます。さらに、民間住宅での耐震化への意識を高めてもらうため、土木事務所に建築職員を配置し、各地域の自治会などに地元市町村の職員とともに直接出向いて耐震化を働きかける取り組みも実施しております」
 「また環境面でも新たな取り組みを開始しました。これまでのCASBEE制度で、内容が複雑であったものをシンプルにしようとCO2の削減に的を絞った指標づくりを行い、80項目を超える評価項目を10項目程度に絞り、その評価結果を星印により、一般の方々に分かりやすく表記するラベリング制度を新たにスタートさせました。府民にとって分かりやすく、環境に配慮している事業者にとってもPR効果のあるものとなっており、今後は他の施策にもこのような手法を生かしていきたいと考えております」

■来年度事業の見通しについて。

吉田部長

「来年度予算で『まちまるごと耐震化』支援事業を要求しております。府民の生命を守るための住宅とまちの安全確保の視点から、これまで民間住宅の耐震化に向けた取り組みを進め、今年度は有識者による検討会を設置してこれまでの効果を点検し、その結果を踏まえて施策の改善見直しを進めており、来年度は『個人』に加えて『まち』単位での取り組みを考えているところです」

■具体的には。

吉田部長

「府と市町村が協同して、実施地区や民間事業者団体等を選定し、行政と連携しながら民間の創意と工夫により、啓発活動から耐震改修までを一括に実施するもので、これと併せ、民間の取り組み体制を強化するための場として、民間と行政が連携した協議会を設立し、一体となった取り組みを進めていきます」

■府営住宅の建て替えなど建設事業では。

吉田部長

「建設事業に関しては住宅ストックの再編について、全て建て替えでやるのかどうかなどの議論をしております。単に老朽化しているからといって建て替えるという考えは改めなければなりません。ただ、安全面から耐震性能を満たさないものについては、建て替えか耐震改修かを検討しなければなりません。さらに用途廃止も視野に入れるなど、複数の手法で考えていきます」
 「このほか、住宅まちづくりマスタープランの改定と府営住宅ストック総合活用計画も見直しの時期にきており、これらについては先程申しましたセーフティネットを織り込みながら、今後十年間の実施計画をまとめていきます。また、府有建築物のハード面に関してはマネジメントを計画的にやっていくため、主な施設の中長期的な修繕実施計画の作成作業に入っています。

■今後の社会基盤整備にあたっては従来からの発想を変えていく必要がありますね。

吉田部長

「社会基盤整備に関しては、全て公共でやることには限界があります。今後は新しいものを造るより良質なストックを生かす。これは住宅だけに限らず府有施設全般に言えることですが、市場活用とストック活用が今後のポイントとなっていきますね」



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