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近畿地方整備局営繕部 頼本欣昌部長  【2025年11月10日掲載】

良好なストックとして適切な品質とコストを

公共建築の発注者としての責務を果たす


 社会における様々な分野で、地域の人々に幅広く活用され、活力ある地域づくりに貢献する公共建築。中でも官庁施設は公共サービスの提供の場となるとともに、災害時は防災拠点として重要な役割を担っている。近畿の営繕行政を先導する近畿地方整備局営繕部の頼本欣昌部長は、公共建築の整備にあたっては「品質とコスト、工期の適切なバランスが不可欠」とする。その頼本部長に、公共建築の発注者としての責務と役割について聞いた。

■まずは公共建築の役割について。

 公共建築は、国や地方公共団体によって行政サービスや防災拠点機能等の提供の場として整備されます。民間建築と違い、国等の行政機関が主体となり主に税金を使って整備することから、国民生活に寄与することが求められ、国民等のニーズに対応した過不足のない公共建築としての適切な品質の確保が求められます。
 さらに良好なストックとして機能し続けるため、適切な品質の維持・向上が図られることが期待されています。また、社会のニーズを踏まえ、建築技術の継承や街なみを形成する上での先導役として期待されており、伝統工法に関しても、近年の近畿地整の事例では、平城宮跡の復元工事等で技術の継承が図られています。

   働き方改革と生産性向上への取組み

■その公共建築を整備するにあたって発注者の役割とは。

 第三次担い手3法を踏まえて、地域建設業の維持に向けた環境整備も含めて、適切な予定価格の設定と工期の確保、適切な設計変更など、公共工事の発注者としての責務を適切に果たしていく必要があります。その上で、公共建築工事の発注者の役割については、民間建築工事や公共土木工事と対比しながらまとめられた、社会資本整備審議会の「官公庁施設の整備における発注者のあり方について」の答申が参考になります。この中で、公共建築工事では、その施設を所管する事業部局と工事発注を行う発注者が異なる場合が多いため、工事の発注にあたり発注者は、事業部局が企画立案や予算措置を行う段階で、それらの内容が品質とコストと工期のバランスが取れた適切なものとなるように技術的な助言を行うなど、十分に連携を行うことが求められています。
 事業部局から委任を受けた後は、具体的に建築物や工事に求められる諸条件を把握・整理し、設計者・施工者などに示す発注条件を、相互に矛盾がないよう適切にまとめることが重要になります。そして、その発注条件に基づき設計業務や工事を発注し、適切に実施する必要があります。
 そういったことを配慮しながら、発注者としての責務を適切に果たすため、近畿地整では公共建築工事の発注者として先導的な取組みを行い、あらゆる機会を通じて周知し、公共建築工事の発注者に参考にしていただくとともに、民間発注者にも参考にしていただければと思っています。

■次に営繕工事での働き方改革の取組みについて。

 建設現場における働き方改革については、ニーズを踏まえ、発注者としてできることを引き続き取り組んでいく必要があると考えており、これまで行ってきた取組みを含め、適正工期の設定や施工時期の平準化、週休2日、予定価格の適正な設定などをパッケージ化して取組みを進めています。この中で工期設定に関しては国、都道府県、政令市と調整して取りまとめた、「公共建築工事における工期設定の基本的考え方」や、日建連の「建築工事適正工期算定プログラム」も活用しながら設定しています。また、総合的試運転調整の期間確保のため、発注段階で慨成工期を設定しています。
 週休2日に関しては、今年度から週単位の週休2日、いわゆる完全週休2日に取り組んでいます。新築工事では月単位の週休2日は発注者が指定し、週単位の週休2日に取り組むかは契約後に協議して決めることとしています。また、改修工事では通期の週休2日は発注者が指定し、月単位と週単位の週休2日に取り組むかは契約後に協議しています。現在、土日の現場閉所が求められていますが、改修工事等の騒音や振動を伴う作業を平日に行うことは難しく、協議により現場閉所の曜日を指定できることにしています。

   多様化するニーズへ柔軟に対応

■生産性向上に関しては。

 近畿地整では原則、全ての新築の設計及び工事で発注者情報要件(EIR)を適用し、BIM活用を推進しています。具体的には延面積3000平方メートル以上の設計では、実施設計の一般図まではBIMにより作成するとともに、外観と内観の一部をBIMにより提示することを指定しています。
 また、全ての新築の設計と工事には、BIM活用の推奨項目を設定しています。今後は、設計BIMデータの施工での活用が始まります。設計BIMデータについて工事受注者に説明し、希望する場合はBIMデータを貸与します。
 また、設計段階及び施工段階の生産性向上に向けて、発注者、設計者、工事受注者等の関係者間の調整の円滑化にも取り組んでいます。具体的には、設計段階では適切な設計条件明示や適切な設計図書の作成に向けた設計業務プロセス管理など、施工段階では、遅滞のない設計意図の伝達、情報共有や検討の迅速化等の取組みです。このほか、書類の簡素化として提出を求める書類の削減、省略や集約化とともに、書類の様式も受注各社の独自様式でも可としています。

■公共建築には災害時の避難所や防災拠点としての役割も求められています。

 防災・減災への取組みは最重要課題として取り組んでいます。災害応急対策活動の拠点となる庁舎が、その機能を維持できるよう地震や津波対策に取り組んできたところですが、引き続き取組みを進めていきます。
 その一方で、既存庁舎の老朽化対策も課題です。長寿命化を図るための躯体保護や機能を維持するための設備の改修工事を実施するとともに、施設管理者に対して長寿命化に係る保全指導を行っています。また、ユニバーサルデザインへの取組みについて、今年五月に本省住宅局でまとめられた「建築プロジェクトの当事者参画ガイドライン」を踏まえ、高齢者や障がいのある方に設計段階から関わってもらい意見を聴取し、施工段階でも確認してもらうことで、より使いやすい建物づくりに取り組むもので、万博の日本館でも取組み、評価をいただいております。
 このほか、環境対策として新築建築物は、原則ZEB―Oriented以上として消費エネルギーの削減に努め、木材の活用に関しては一部木造も含め、原則木造化するとともに、目に触れる機会の多い部分の内装を木質化する方針としています。このように求められることが多様化する中で、柔軟に対応していくことも大事だと考えています。業界のニーズや地域のニーズ等を踏まえ、公共建築の発注者としてやれることはいろいろあると考えており、その模範となれるよう引き続き取り組んでいきます。

■ありがとうございました。



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