厚生労働者らの主唱、建設業労働災害防止協会らの協賛による「全国安全週間」(7月1日〜7月7日)が「危険に気付くあなたの目 そして摘み取る危険の芽 みんなで築く職場の安全」のスローガンのもと展開される。
昭和3年に初めて実施されて以来、「人命尊重」を基本理念に、一度も中断することなく続けられ、今年で97回目となる。
令和5年における大阪府内の建設業における死亡者は13人にのぼり、令和4年と比べ1人増加した。そのうち8人が墜落・転落によるものだ。
大阪労働局では、墜落・転落災害はじめ労働災害の防止に向けて「大阪発・新4S運動」を展開。特に建設業においては「命綱GO活動」の強力な推進を図っている。
災害防止活動の中心的な役割を担う大阪労働局労働基準部安全課の東裕之課長に安全行政の取組みなどを聞いた。
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■昨年における大阪府内の労働災害発生状況についてお聞かせください。 |
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令和5年の大阪府内における労働災害の死亡者数は、新型コロナウイルス感染症のり患を除き全産業で35人となり、令和4年より14人減少と大幅に減少しました。
その一方で、建設業においては13人と、令和4年と比べ1人増加し、さらに死亡者数のうち8人が墜落・転落によるものです。
その発生状況を見てみますと、足場や開口部からの墜落やスレート等を踏み抜いての墜落等災害等、安全衛生法等で求められている安全な作業床の設置や、手すり等の墜落防止設備の設置等の基本的な安全対策が講じられていれば防げた災害ばかりです。
また、令和5年の休業4日以上の死傷者数は、令和4年と比べて29人増加し、645人となり、そのうち37%にあたる237件が墜落・転落災害によるもので、それに続いて、はさまれ・巻き込まれが75件、転倒が60件、飛来・落下が55件発生しました。 |
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■全国からみた大阪の状況についてお聞かせください。 |
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全国の令和5年の建設業における労働災害による死亡者数は223人で、令和4年の281人に比べ58人、20・6%減少と大幅に減少しましたが、大阪では先ほど申し上げたとおり1件の増加です。
また、全国の令和5年の建設業における労働災害による休業4日以上の死傷者数は1万4414人で令和4年の1万4539人に比べ125人、0・9%減少ですが、大阪では増加しました。
さらに、建設業の死亡災害のうち、墜落・転落災害が占める割合は、全国では令和5年は、38・6%でしたが、大阪で61・5%でした。
大阪の建設業でも全国と同様に、長期的には、死亡者、死傷者数ともに減少傾向が続いておりますが、昨年は全国で、死亡者数、死傷者数ともに減少したにもかかわらず、大阪ではどちらも増加しました。
昨年に限らず、大阪においては建設業における死亡災害のうち、墜落・転落災害の占める割合は、例年全国平均よりも高い傾向にあり、建設業全体の死亡災害のうち、半数を超えることも珍しくありません。そのため、大阪の建設業においては、墜落・転落災害の防止が何よりも重要です。 |
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「改正労働安全衛生規則」周知と措置を徹底 |
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■今年度の大阪労働局の目標と重点事項をお聞かせください。 |
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大阪労働局では、昨年度から2027年度までを計画期間とする大阪労働局第14次労働災害防止推進計画を進めており、建設業における目標は、死亡者数を2022年と比較して2027年までに15%以上減少させ、年間10人以下とすることです。
今年度は、14次防の2年目として、14次防の目標を早期に達成することを目標としております。
そのためには、先ほどから申し上げているとおり、墜落・転落災害による死亡災害を大きく減少させる必要があります。
大阪労働局では14次防期間にあわせて、昨年4月から「大阪発・新4S運動」を展開しております。
具体的な取組事項としましては、高所作業におけるフルハーネス型2丁掛け墜落制止用器具の使用徹底を図ることを目的とする「命綱GO(いのち つなごう)活動」、指示された作業を適正に行うだけではなく、自ら考えて行動できる教育を推進する「安全活動」、リスクアセスメントを広く定着させるための「リスク評価推進活動」、日頃取り組んでいる安全活動や職場にひそむ危険等を目に見える形にして災害防止活動を展開する取組の促進を図る「安全見える化活動」の四つの活動があります。
昨年の墜落による死亡災害を見てみますと、墜落制止用器具を身に着けていながらも使用せずに、墜落している事例が見受けられますので、今年度は、「大阪発・新4S運動」をより多くの方に知っていただくとともに、建設業においては、特に「命綱GO活動」の周知をより一層進めることとしております。
また、建設業の死亡災害における墜落・転落災害については、足場からのものも多く発生しております。
足場からの墜落を防止するため、一側足場の使用範囲の明確化、足場の点検を行う際の点検者の氏名の義務化等を内容とする改正労働安全衛生規則が今年四月に全面施行されております。
昨年10月の足場の点検者の氏名の義務化等が施行された後でも、足場の点検がされていない現場がいくつか見られました。
今年度は改正法令の周知をより一層進めるとともに、改正法令に基づく措置の徹底を図ります。
また、管内でも建設工事現場における荷役作業中のトラックからの墜落・転落労働災害が毎年多く発生しており、最大積載量二トン以上の貨物自動車に係る荷の積卸し作業時の昇降設備の設置と保護帽(ヘルメット)の着用等について労働安全衛生規則が昨年改正されておりますので、その措置の徹底を図ります。 |
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■建設業における取組及び注意事項をお聞かせください。 |
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墜落・転落災害を発生させないためにもまずは墜落・転落のおそれのある作業につきましては、現場に入る前の作業の計画段階で事前にリスクアセスメントを実施していただき、高所作業の削減や安全な作業床の設置、高所作業車の使用等によって、墜落・転落のリスクを減らす措置を積極的に講じていただくようにお願いします。
計画段階で墜落・転落等のリスクの低減措置を講じた上で、現場において高所作業を行う際は作業床の端や開口部周辺等の手すりの設置等の法令で求められている基本的な対策を確実に講じていただくとともに、2丁掛け墜落制止用器具の使用の徹底を図っていただきたいと思います。
また、今年も熱中症に注意が必要な季節になりました。 昨年の府内の事業場での熱中症による死傷者数は、54人となり、前年より9人の増加となりました。また、そのうち1人が亡くなっています。
大阪労働局では職場における熱中症予防対策の一層の推進を図るため、本年も5月から9月までの期間「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を展開し、啓発に取り組んでいます。
現場の暑さ対策では、まず作業場所の暑さ指数(WBGT)の把握を行ってください。
その際、環境省、気象庁が発表している熱中症警戒アラートは、職場においても、熱中症リスクの早期把握の観点から参考となります。
暑さ指数が基準値を超えるおそれのある場所で作業を行わざるを得ない場合は、簡易な屋根の設置、通風又は冷房設備の設置など設備対策をお願いします。併せて、睡眠不足や体調不良、前日の多量の飲酒など作業者の健康状況について作業開始前に確認をお願いします。
熱中症は、短時間で容体が急変します。あらかじめ、近くの病院の場所を確認しておき、本人や周りが少しでも異変を感じた時にはすぐに病院へ運ぶか、救急車を呼ぶようにお願いいたします。 |
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