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横山英幸大阪市長(大阪維新の会幹事長) 【2024年01月04日掲載】 |
2025起点 経済のさらなる飛躍へまたとない好機生かせ |
夢洲で開催される「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」を契機に、IRをはじめ新たな都市機能をベイエリアに組み込む基盤が整い始めている。さらには大阪府市一体による成長戦略のもと、大阪市においては、東西南北を軸に「多くの人が集まり、活気にあふれ、魅力あるまちづくり」を掲げ、各拠点で様々なプロジェクトも動き出す。 |
動き始めるベイエリア 大阪・関西の成長をけん引 |
■将来のベイエリアの核となる夢洲において、大阪・関西万博の開幕が来年に迫り、IRも具体的に動き始めました。 |
IRについては昨年9月に事業者と関連協定などを締結しました。これから2030年秋頃の開業をめざして動いていくことになります。また、万博会場の建設工事に関しては、今年、いよいよ佳境を迎えることになります。引き続いて建設業界のみなさんの協力も得ながら、しっかり取り組んでいきたい。あわせて、もっと前向きな報道がなされるよう、発信についてもテコ入れしていく考えです。残念ながら、本来の開催目的である進歩や将来展望といったものがあまり伝わっていないとも感じています。 |
■万博の建設現場の前線で働く人たちはそれなりの使命感を持って取り組んでいると聞きます。その点でも発信は重要ですね。次に万博跡地利用の検討状況についてはいかがですか。 |
万博跡地の活用、いわゆる第2期まちづくりに関しては、マーケットサウンディングが終了し、複数の民間事業者から提案がありました。詳しい内容はここでは話せませんが、IR事業との親和性が高く、ベイエリアにおける賑わいの拠点となるようなものです。現在は条件整理に向けた検討作業を進めているところです。2025年の万博開催、2030年のIR開業、続いて第2期まちづくりと段階的に事業を推進することで、夢洲を起点に大阪湾ベイエリアも大きく変わっていくでしょう。 |
■夢洲が軌道に乗れば隣の咲洲と舞洲のまちづくりにも強い追い風となります。 |
ベイエリアのポテンシャルは非常に高い。にもかかわらず、物流機能以外は殆ど手つかずのまま放置されてきた。それが今回、万博とIR誘致を契機に、新たなインフラが構築されつつあります。私は長期的にみて、今がベイエリアを底上げするラストチャンスだと本気で考えています。 |
■世界から人が集うまち。国際観光拠点を掲げていますね。 |
夢洲においては、万博開幕にあわせたイベントとして「メルボルン大阪ダブルハンドヨットレース」が記念開催されます。これは姉妹港であるオーストラリアのメルボルン港を出発し、太平洋を縦断してゴールである夢洲を目指すものです。開催期間中の4月〜5月頃には夢洲の桟橋に世界中から参加したヨットが次々と到着する予定です。言い換えれば、コンテナターミナルを中核施設としていた夢洲に、世界からヨットが来航し、人が集い、賑わうマリーナが誕生する。こういうことを意識すると印象も変わってくるのではないでしょうか。 |
■富裕層を対象にした観光振興を本格化させると。 |
昨年10月に訪れた姉妹都市であるメルボルン市のウォーターフロントには、プライベートの係留施設を備えた高級住宅がたくさんあり、桟橋には豪華なヨットが並んで停泊していました。こんな風景が大阪湾ベイエリアにもっとあってもいいのではないかと。そして例えば、世界の富裕層にIRで楽しんでもらうことは当然ですが、大阪で世界最先端の再生医療を受けてもらって、最終的には拠点を構えてもらうとか。いくらでも可能性は広がっていきます。 |
万博機に深まる広域連携 |
■夢洲には海の玄関口としての役割も期待される。 |
海上交通においては、今最もホットな場所である淡路島と夢洲を行き来できる新たな周遊ルートの検討も始めました。淡路島がリゾート地としてさらに発展していけば、大阪との連携はいっそう深まる。同時に瀬戸内海への舟運ネットワーク拡大も視野に入れています。夢洲を起点に沿岸の自治体をより広域でつないでいくわけです。おりしも万博成功に向けて、経済界も一緒になり広域での連携強化を推進しているところです。 |
東の拠点「大阪城東部地区」 周遊性・回遊性テコ入れ |
車中心から人中心 新今宮のポテンシャル |
■万博をきっかけに連携が促進される。これはポジティブな話題ですね。それでは大阪市中心部における取組みについてお聞かせください。 |
まちづくりは東西南北の軸で考えています。南北においては、北のシンボルは言うまでもなく「うめきた」。ここは今後も順調に動いていくでしょう。また、南北をつなぐ御堂筋では側道歩行者空間化を推進しています。昨年11月には歩行者空間「なんば広場」もオープンし、既に難波駅前から道頓堀間の整備を終え、現在は長堀通まで工事を進めています。最終的には御堂筋100周年(2037年)をターゲットに、「人中心〜フルモール化」をめざします。南に関しては、特に新今宮周辺にポテンシャルを感じています。やはり、JR環状線と関西空港に直通する二つの路線が乗り入れている新今宮駅は価値が高い。2022年に星野リゾートさんが進出してくれましたし、今後は「あいりん総合センター」の建て替えも控えている。2031年にはなにわ筋線も開業します。新今宮の利便性がますます高まるにつれ、南エリアのイメージも大きく変わっていくはずです。 |
■市長は成長にかなりの重点を置いておられるように感じます。 |
先ほどもふれましたが、市長就任後に姉妹都市であるメルボルン市とシカゴ市を訪問し、いずれの都市においても、すごい前向きさを感じました。その反面、私は今の日本に強い危機感を持っています。これほど高い技術や文化などを持ちながらも、「安いニッポン」から脱却できない。残念なことに、とても内向きになっているのではないでしょうか。私は英語教育の重要性を常々訴えています。どれだけネット社会が進んでも、海外とのつながりを深める基本は、やはり対面によるコミュニケーションです。その面において日本は閉鎖的になっているようにもみえます。 |
■万博は海外とのつながりを改めて意識する機会にもなります。 |
ごく単純な話になりますが、万博の海外パビリオンに行けば、その国の人に会えるし、その国の食文化も経験できる。これは何ものにも代えがたい。大いに刺激を受けてほしい。日本に住んでいて何となく窮屈だと感じている若い人たちに「世界は広いんだ」と気づいてもらう。そんなきっかけとなる万博にしたいですね。やはり、大阪はこれからも外に開かれたまちでなければいけない。私自身、香川県から大阪にやってきて政治家になりました。その経験から大阪の人は挑戦に寛容であり、失敗にも寛容であると身にしみて感じています。まさしく「やってみなはれ」の精神です。よそ者を受け入れてくれる。このような前向きな気質は海外の人に対してすごいアピールポイントになる。大阪府市では将来の成長を見据え、国際金融都市を掲げています。まだまだ大阪にはチャンスがあふれています。 |
新大阪 日本を代表する交通結節点に 副首都実現めざす |
■副首都の実現に向けて、新大阪駅周辺も重要になりますね。 |
新大阪駅においては、阪急・新大阪線連絡線の乗り入れ、さらに将来、北陸新幹線およびリニア中央新幹線の全線開業が見込まれています。まさに、東西二極の一極「副首都・大阪」の実現に向けた「西日本最大の交通結節点」に様変わりするでしょう。一昨年には新大阪駅周辺地域が国の都市再生緊急整備地域に指定されました。これから民間投資が促されるよう規制緩和を進めていきます。民間のみなさんに「事業がやりやすい」と思ってもらえる環境を整備し、新大阪を軸に十三、淡路のまちづくりを推進し、このエリア一体を再生・成長させたいですね。 |
■ところで、担い手確保など建設業界における諸課題について、維新の会の議員の方々にはなかなか伝えにくいようにみえます。 |
私はまちづくりに主眼を置いていますので、建設業を含め、まちづくりに携わる事業者のみなさんと、是非、様々な意見交換を行いたい。 まちづくりと経済活性化をいかに連動させるか。これは重要な課題であり、活発な議論ができればと思っています。建設業界のみなさんのご意見もお聞きしたいですし、 それこそ変な付き合い方ではなく、政治家に声を届けてもらうことはとても大切です。 |
■橋下徹さんが2008年に大阪府知事に就任され、その当時、市長は府の職員をされていました。庁内の状況はいかがでしたか。 |
本当にすごかったですよ。橋下さんが知事に就いて大ナタをふるった。あれがなければ今の大阪はなかったと思う。橋下さんが役所の体質を根本から変えました。私は職員として改革の渦中に身を置きましたが、「これは変わるな」と確信しました。「変わる時にはこのくらいしなきゃダメだ」と。部局間では毎日のように大げんか。庁内にはそれくらい緊張感がありました。その後、大阪府議会議員として橋下さん、松井一郎さんと行動をともにします。面と向かって怒鳴られることも多々あるなか、府民市民のみなさんと対話を重ねて取組みを進めてきました。決して「維新の風」だけでやってきたわけではありません。やはり、あの時の「橋下・松井改革」があったからこそ、今、様々なプロジェクトが動き出し、民間投資を大阪に呼び込める土壌が整ったといえます。 |
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