日刊建設新聞社 CO−PRESS.COM |
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魅力溢れる産業として 見えてきた「持続可能な建設業」への道 |
近畿地方整備局企画部 | 小島優部長 |
建設産業専門団体連合会 | 岩田正吾会長 |
小島部長 | 岩田会長 |
[オブザーバー] | ||
関西鉄筋工業協同組合 田中毅理事・田村晃一理事 | ||
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昨年9月、中央建設業審議会・社会資本整備審議会基本問題小委員会では、担い手確保の取組みを加速し、持続可能な建設業を目指す上での早急に講ずべき施策の「中間とりまとめ」を策定した。この中では、@請負契約の透明化による適切なリスク分担A適切な労務費等の確保や賃金の行き渡りの担保B魅力ある就労環境実現に向けた働き方改革と生産性向上―の三本柱を掲げ、建設業法改正も視野に入れて取り組むこととされている。これら施策について、近畿地方整備局企画部の小島優部長と、小委員会メンバーとして取りまとめに関わった建設産業専門団体連合会の岩田正吾会長に、今後の取組みや将来の建設業のあり方等について語ってもらった。 |
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中建審小委員会「中間とりまとめ」が示す三本柱 | ||
3つの柱 |
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■初めに中建審小委員会の中間とりまとめについて、近畿整備局と建専連のそれぞれの立場からお話願います。 |
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小島 | ||
中建審全般としては、建設産業全体が持続可能で魅力的な産業となることがベースにあり、メンバーが問題意識を共有しながら議論されたと認識しております。三本柱で示された中では、公共事業での請負契約の透明化のリスク分担では、まず価格の問題が一番となります。昨今、これだけ急激に資材価格が変動すれば契約時からのコスト上昇分はきちんと価格転嫁できるように環境を整えていくことが重要と思います。 |
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岩田 | ||
仕事量によって価格が変動することについては、総価による一式契約として許容されてきましたが、これが限界にきています。国もこのままでは先進国の中で賃金水準が最低となることから賃上げを打ち出し、多くの企業が賃上げを表明していますが、あくまで自社の取組みであり、専門工事業の現状は依然として総価での交渉となっています。 |
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さまざまな働き方改革 | ||
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■次に働き方改革について近畿整備局の取組みを。 |
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小島 | ||
まずは適正な工期設定が原則です。発注行政の立場では、その中で週休2日の標準化や工期の適正化、余裕期間制度の拡大等を実施しており、近畿での直轄工事では令和5年度から原則、維持工事を除く全工事を対象に法定休日と所定休日を現場閉所とし、加えて大規模工事では祝日も含めて現場閉所とする発注者指定型工事を試行しております。 |
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岩田 | ||
これからは働き手が求める休暇を提供できるような業界に人が集まってくるようになると思っています。万博工事の現場職長に聞くと、今の現場が終われば3週間くらいの休みが欲しいと言います。つまりフレックスです。将来的にはそういった働き方改革が実現できるよう是非、行政の知恵をお借りしたいと思っております。 |
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小島 | ||
休暇について行き着くところは個人レベルの考え方で、それぞれのスタイルがあります。サラリーマン的に土日の休みが固定している働き方を望む人がおり、また、まとまって仕事をし、まとまって休みたいとする人もいる。最終的にはそれぞれの価値観であり、今、言われたような多様な休み方も含めて許容されるような仕組みや社会になっていくことが将来的な姿であろうと思います。 |
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岩田 | ||
しかしながら、その部分での元請側には反発があります。これは現在の経営層の多くは、これまでの慣習でやって来られた方々で、「現場を管理する上で難しい」と言われますが、時代の流れの中では、従来のやり方では技術者も技能者も入ってこなくなる。早く働く者の目線になっていただきたい。建設業だからではなく、建設業ではこういった働き方ができるんだ、給与だけではない建設業ならではのメリットが提供できないかと。 |
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小島 | ||
3Kから目を背けるのではなく、建設業ならではの特徴のある働き方や魅力ある職場環境を作っていくといったアプローチも大事だと思います。そういった方向も多面的に考えながら建設行政や発注行政を考えていかなければと思います。 |
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ダンピング/処遇改善 | ||
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■労務費はもとより社会保険への加入など処遇改善を進める上ではダンピング対策も課題となっております。 |
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小島 | ||
ダンピング対策では、公共工事では中央公契連モデルで対策が講じられており、元請による低価格競争には歯止めがかかっていますが、元請と下請の関係や民間工事での対策については、業法改正の中でも議論の一つの柱となっており、持続可能な建設業と健全な発展の観点からもダンピング対策は極めて重要な課題です。 |
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岩田 | ||
処遇改善にはいろんなものが含まれています。外国人労働者の受入では、先進国の中で日本は休暇も人件費も最低水準で、このため先進国内でどう競っていくかが課題です。我々の感覚では、外国人労働者は来るものであって、迎えに行くものではないと考えがちです。他国でも外力に頼っている中で、賃金について外国人労働者から日本が一番低いと見られていることを自覚して処遇改善を進めないといけない。今回の中間とりまとめでは、国内の全産業平均値まで引き上げるところまではできましたが、業界としては欧米並みにまで引き上げたいと思っています。 |
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小島 | ||
欧米並みの賃金を目指すということでは、技能者の方々だけではなく、おそらく日本の社会全体が置かれている状況で、何年も収入が増えていない状態が続いており、全体として共感を得ることができる目標です。その中で建設技能労働者の方々はまさにその状況にあり、外国人労働者も来てもらえない危機的状況になりつつあることを、我々としてもきちんと説明しないといけない。 |
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人材教育仕組みづくり | ||
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■なるほど。 |
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岩田 | ||
担い手の受入体制が整った後の課題が教育で、この部分でも日本は相当に遅れています。国家資格である専門工事の技能士資格でも、教育訓練施設が国内には一カ所しかなく、それ以外は、事業者団体による任意組織で教育訓練が行われています。助成金や補助金の交付はありますが、それでも維持・運営に苦労しているのが現状でこれを改善しなければならない。 |
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小島 | ||
技能教育についても公的な関与を増やしていくことも必要ではないか。労働人口が多い時代には、企業内教育や働きながら学ぶことができましたが、労働人口が減少していく局面では、民間だけで負うことは難しく、そういった部分を仕組みの中に組み込んで、法的にはいろいろとありますが、関心を持ってやっていくことは重要だとは思います。 |
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岩田 | ||
デジタル技術をどうやって活用するかはとても重要だと思います。 |
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小島 | ||
現場の経験が減り、人も少なくなってくる中ではかつてのような現場で覚えるというようなやり方は成立せず、その中で技能や技術を伝承するにはデジタル技術を使っていくことは大事ではないかと。デジタル技術も使いようによっては技能や技術の伝承も可能ではと思っており、そのあたりの使い方も考えていく必要はあります。 |
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岩田 | ||
アメリカのユニオンやイギリスの機関が制度的に確立しているのは、財源が確保されているからです。分散した拠点でまちまちに活動するのではなく、まず、どうあるべきかを描き、そのために必要なものを付価していくために集中する。この視点が日本の取組みには欠けている部分です。 |
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■職人さんを育成するコストは業者が負担している。 |
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岩田 | ||
そこが請負の悪い部分であり良い部分でもある。職人は技能を身に付けると独立してしまう。だから肝心な部分を教えないこともある。ただ、外国人労働者の場合、業種によっては動画により、基礎的な部分まで学ばせ、後はトレーニングを行っているところもあります。ゼネコンでも品質管理を3Dで行っているところもあり、さらに安全管理等についても各社独自に工夫して取り組んでおりますが、これら取組みを個々の企業でやるのではなく、団体などで統一してできないかとは思っています。 |
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小島 | ||
映像で学ぶことは有効だと思います。我々も道路橋梁や堤防等の点検で活用しています。今は現場に行く機会も減り、教えてくれる人も少なく、職員もかかりきりでできなくなっている。このため、映像を活用して基礎的なことは研修で教えるといった取組みも行っています。こういった取組みは、囲い込むのではなく共有して全体として底上げしていくことは必要だと思います。 |
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共有できるビジョンで前進 | ||
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岩田 | ||
今回、取りまとめた各項目が実現するまでは長い道のりとなりますが、国交省にも専門工事に光を当てていただいており、それに甘んじることなく我々も勉強しながら智恵を出し、かつてのように日本の建設技術を世界でもトップとなるようにしたい。このため建設業ならではのメリットが打ち出せる取組みができるように今後もお力添えをお願いいたします。 |
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小島 | ||
そのための方策として、一つは全体が共有できるビジョンを描き、それに向けて賃金であったり休暇であったりの処遇改善、魅力ある建設業であったりと一歩ずつ進んで行くことで世の中に伝わっていくと思います。また安ければ良い、早くできれば良いではなく、技術を研鑽し、技術を評価するように後押しを行政がする必要があります。今回、いろいろとお話を伺って、行政と業界がそれぞれの立場を理解するためにコミュニケーションを取りながら、進めていくことを改めて大事だと思いました。 |
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■ありがとうございました。 |
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