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大阪府都市整備部 財部祐介住宅建築局長  【2023年05月29日掲載】

安全安心・良質の住環境供給へ

不断の前進


 大阪府営住宅の整備を担う大阪府都市整備部住宅建築局では、良質な住宅の安定供給を目指して各種の施策を推進している。現在では、老朽化対策や耐震化に向けた更新事業はじめ維持保全事業等を実施しているが、整備にあたっては、働き方改革等によるライフワークの変化に対応しながら居住性や環境等に考慮した取組みを進めている。また、他の公的賃貸住宅と連携したニュータウン再生事業にも取り組んでいる。これら施策を展開する住宅建築局の財部祐介局長に、府営住宅の整備状況や今後の事業の見通しについて聞いた。

 府営住宅事業 3つの柱≠ナ 「再編・整備」「機能向上」「維持保全」
 耐震建替1800戸とは別に集約建替5000戸

■まず、府営住宅事業の取組みについて。

 府営住宅の整備にあたっては令和3年12月に、従来の大阪府営住宅ストック総合活用計画を改定しました。この計画は、府の住宅政策の方向性を示した「住まうビジョン・大阪」の個別計画として、今後10年間における府営住宅の取組みを示したものです。改定計画では、予想される人口減少等の社会情勢が変化していく中で、高度経済成長期に建設された府営住宅を、時代の変化に合わせて将来の管理戸数の適正化を図っていきます。
 事業方針では、各団地の建設年代やバリアフリー化の状況等に応じて、集約建替え等を行う「再編・整備」、バリアフリー化等の「機能向上」、計画的な修繕を行う「維持保全」の3つを柱に事業を実施します。集約建替えは5000戸を計画しておりますが、これは前計画で予定していた耐震化のための建替え1800戸とは別に計画しています。
 集約建替えでは、令和8年度以降の工事着手に向けて準備を進めており、今年度は基本計画13団地、基本設計11団地を予定しています。中層住宅へのエレベーター設置事業では1000基を計画し、このうち、昨年度までに205基着工しており、今年度は113基の工事に着工する予定です。また、1800戸の耐震建替えについては、令和4年度までに604戸の工事に着工しており、今年度は369戸の着工を予定しています。

■働き方改革やコロナによるリモートワークの進展など生活様式が変化する中では、府営住宅にもそれらに対応したものが求められる。

 テレワークの増加により在宅時間が増え、確かに生活様式が変わってきています。このため府営住宅においてもワーキングスペースを備えた住戸プランの検討も進めていくことも大事だと考えています。また、府営住宅の空室を民間事業者の方々にコワーキングスペースとして活用してもらうことも検討していきたいと思っています。
 集約建替えにおいては、立地条件や必要となる施設を鑑みてPFI手法を適用することもありますが、基本的には直接施工方式となります。また、集約建替えにより創出された活用用地により地域のまちづくりに貢献しながら、良質なストック形成にも一体的に取り組んでいきます。これら府営住宅の整備にあたっては、今後も将来の管理戸数の適正化を図るため、鋭意事業を推進していきます。

■府営住宅の維持管理については市町への移管も進められています。

 移管に関しては大阪市、大東市、門真市、池田市で計約2万1000戸の移管を予定しており、これまで約1万7600戸が完了し、大阪市については今年4月に全て移管が完了しました。移管については、府営住宅という資産を地域のまちづくりに活かし、福祉施策と緊密に連携した住民サービス等を考えた場合、広域である府ではなく、住民に密着した行政サービスを実施している市町が担うことがふさわしく、知事も公営住宅は基礎自治体が担うべきとの意向を示されています。
 移管によるメリットは、府営住宅の土地や建物を活用しながら地域のまちづくりに資する施設の導入、子育て支援等の入居者に対するサービスの提供など、基礎自治体独自の施策が展開できることになります。府としては、それらによる地域のまちづくりが進むことで、府域全体の都市魅力の向上につながるものと期待しています。

■ニュータウンの再編も課題の一つです。

 現在、ニュータウンは大阪都市計画局の所管となっていますが、都市整備部は府営住宅を所管する事業者として、また、府内の公的賃貸住宅の事業者間連携事業を所管している立場としてもニュータウンの再生や再編に関わっています。泉北ニュータウンについては、府と堺市、UR等の関係機関と泉北ニュータウンデザイン推進協議会を設立して、公的賃貸住宅再生計画を策定して取組みを行っています。府営住宅に関しては、令和4年度には1団地で基本計画に着手しており、令和5年度は3団地で基本計画に着手します。泉北ニュータウン内にある府営住宅の再編整備により10ヘクタール以上の活用地の創出が見込まれていることから、再生計画を踏まえ住宅や商業機能の導入等を図るため、公民連携してニュータウン再生を進めていきます。
 また、公的賃貸住宅の事業者間連携では、令和3年度に、複数の事業者の公的賃貸住宅が存する府内の36市町の全てで地域再生連携協議会を設置して、それぞれに検討を進めていますが、今後は防災等、テーマを絞りながら具体的な検討を進めていくこととしています。

 防災・環境対策
 耐震化率目標達成へ順調/ZEB化を率先

■その防災について、府有建築物の防災対策、また環境対策はどのように。

 府営住宅に関しては、耐震化のための建替えや耐震改修を実施しており、昨年度末時点で耐震化率97%と順調に進んでいます。また、台風等による停電が生じた際の断水に備え、指定管理者と連携し、移動式大型発電機を調達する体制を整えるとともに年2回訓練を実施しています。
 府有建築物については、平成28年度に策定した府有建築物耐震化実施方針で、目標としていた令和2年度までの耐震化率95%は達成しており、引き続き令和七年度までの概ね完了を目指して各施設管理者への働きかけを行っています。このほか老朽化対策では、大阪府ファシリティマネジメント基本方針に基づき、庁舎や保健所などの長寿命化に向けた改修工事を実施しています。
 民間建築物については、宅建業法に義務付けられている水害リスク情報に関する事項の遵守に向け、宅地建物取引業者に対して研修会等で周知を行っているほか、市街化調整区域での開発許可において、開発できない区域を追加するなど防災面での強化を行っています。
 環境配慮への取組みは、平成13年度からESCO事業に取り組んでおり、令和4年度には府新別館はじめ5施設で公募・選定を行いました。これまでに府の111施設で実績があり、令和3年度末までのCO2排出削減量は約25万トン、光熱水費では110億円の削減効果がありました。さらに府内市町村に対しても実施事例の紹介など積極的に情報発信を行い、これまで23市町で事業化され、一定府内市町村へも浸透してきたところです。

■脱炭素化や民間建築への取組みについて。

 府庁全体の取組みとして令和4年度に知事を本部長におおさかカーボンニュートラル推進本部が立ち上げられ、各部が連携して取組みを進めており、都市整備部では複数のワーキンググループに入り議論を進めています。その中で、府有建築物のZEB化は公共の率先した取組みとして、建替えを予定している寝屋川高校での事業化を計画しています。また、府営住宅ではZEH―M Oriented 基準を満たすための検討も進めています。
 民間住宅や建築物への波及に関しては、気候変動対策に関する条例に、建築士の努力義務として施主に情報提供を行うことを追加したほか、民間の先導的な事例を表彰する制度も実施しています。さらに府民や事業者に対する情報提供を強化していきます。

■来年度には建設業の時間外労働の上限規制が始まりますが、これらの対応は。

 時間外労働規制の対応は、建設従事者の働き方改革を進める上でも重要と考えています。このため発注者として適正な工期設定はじめ、令和4年度から原則、全ての工事で週休2日促進工事を実施しており、生産性向上に係るBIM/CIMについても国の動向を注視しながら取り組んでいきます。
 建設業界では担い手不足が大きな課題となっており、特に長時間労働が、安全面はもとより、離職者の増加と若年者の入職を妨げる要因となっていることからその是正は重要であると認識しています。府としては毎年11月、発注者や事業者を対象に研修会を実施して公共や民間を問わず週休2日確保に向けた周知啓発を行っています。
 働き方改革の実現には、現場での意識改革が大事であり、建設業界の皆様方には、施工の効率化や工期設定の工夫等に取り組んでいただきたいと思います。建設産業は国の基幹産業であり、府民の安全安心を担う産業です。大阪では2025年大阪・関西万博の会場建設工事も本格化し、建設業の果たす役割は極めて大きなものがあり、その中で魅力ある業界の実現に向け、ともに努力していきたいと考えています。

■ありがとうございました。



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