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対談 未来のパワフル建設業に直結 担い手確保その取組みの核心 【2023年01月05日掲載】 |
未来のパワフル建設業に直結 担い手確保その取組みの核心 |
近畿地方整備局企画部 | 奥田晃久部長 |
建設産業専門団体連合会 | 岩田正吾会長 |
奥田晃久部長 | 岩田正吾会長 |
[オブザーバー] | |||
中川六雄氏(中鉄代表取締役) | |||
現在、建設業の担い手確保・育成に関して、労働時間短縮や週休2日の定着等の働き方改革、適正賃金の確保等の処遇改善に向けた取組みが進められているが、これら取組みにあたっては、国と建設業界の連携が不可欠となっている。こうした中、近畿において国の施策を推進する国土交通省近畿地方整備局の奥田晃久企画部長と、全国の専門工事業団体で構成される建設産業専門団体連合会の岩田正吾会長に、それら取組みの現状と課題について、それぞれの立場から語ってもらった。 |
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岩田 | |||
初めに私の方から、建専連が進めている取組みについてお話しさせていただきます。現在、課題となっている建設キャリアアップシステムと処遇改善についてですが、専門工事業者の中には、何故、こういった取組みが行われるようになったのか、また、負担ばかり押し付けられていると思っている業者も多くおります。 |
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■ありがとうございました。では、まず週休2日制の定着に向けたモデル工事の推進など、近畿地整におけるこれまでの取組みからお聞かせください。 |
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奥田 | |||
週休2日制につきましては今年度より、維持工事等を除く全ての工事で、現場閉所による週休2日工事を発注者指定型で実施しています。ただ、災害復旧工事等の工期的に困難な場合は、交代制としての週休2日をモデル的に行っています。特に3億円以上の一般土木工事では、これまでの取組みを一歩進めた形で土日閉所の指定型として、土日を休むことをスタンダードにするために試行工事を実施しています。 |
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岩田 | |||
週休2日に関しては、今言われたように国の指導により一定の成果は出ています。ただ、専門工事の立場からは民間工事が一番の問題です。特に建築工事では、民間工事が主流の業者が多く、また、民間発注者はじめ元請、下請とも考え方がそれぞれで、実際、プロジェクトによっては24時間体制を求められるケースもあります。あくまで特別なケースですが、「この現場だけは」と休日に稼働している現場が多くなると職人はそちらに流れてしまう。このため、そういった特例のようなものをなくすためにも全ての現場で統一することが必要だと思っています。 |
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働き方改革にゴールなし 「3Kだから」こその賃金に | |||
■確かに、その点はネックになっています。 |
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岩田 | |||
時間外労働の上限規制に関しても職人は本音では無理だと思っている。建専連の会員企業でも実際に取組みを始めている業者もおりますが、建築工事で民間主体の業者はそうではなく、発注者や元請が決めた規則に合わせることになります。賃金が安定することにより働き方改革は進んでいくとは思っていますが、現場閉所を実施しても日給月給等の支払い方の問題が残っている限り前に進まないのではないでしょうか。 |
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奥田 | |||
現在は、様々な事情から多様な働き方が求められています。その中でも人材を宝として、どうやって働いてもらい、組織を回していくのかが重要になってきました。このため、公務員でもフレックス出勤や在宅勤務が実施されています。そういったやり方をしなければ人材獲得競争に取り残されてしまう。海外では、多様な働き方が受け入れられています。夕方にはオフィスには誰もおらず、成果が出れば帰ってしまう。成果が出ないのは管理者が悪いからと、労働に対する考え方が根本的に違っています。 |
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■なるほど。 |
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岩田 | |||
例えば3Kに対して新3Kというワードが掲げられていますが、私は好きではありません。きつい・汚い・危険はなくならず、隠したところで現場に入れば直ぐに分かります。危ないとの思いがなければ事故は起こりますから。ですから、そこは変えずに「3Kなのに」から「3Kだから」に変えないといけない。3Kだから賃金はこうです、休みはこうなっていますと、他産業との違いを明確にして、働き手に理解してもらえるような取組みが必要です。 |
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奥田 | |||
他産業とどのように競うかと言うと、例えば年に一度の長期休暇があるなど、仕事はきついが、そこそこ給料があり、長期休暇が取れるというのは魅力にはなると思います。 |
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業界のスタンダード変えていく | |||
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■建設業、特に専門工事業の担い手確保は長年の課題です。 |
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岩田 | |||
世界と比べた場合、日本人は働きすぎで賃金が安い。このため若くて優秀な人材が逃げていく。その中で産業平均で競い合っても勝ち目はありません。賃金にしても休暇にしても、企業経営が安定しないと取り組めない。まずは価格を安定させる取組みが必要です。その一方で、我々も支払いの部分もきっちり見せていく。そういった構造にして発注者に理解を求めていく。人を集めるためにはこれだけ必要ですと最低年収を提示し、価格転嫁を訴えていかないと立ち行かなくなります。 |
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奥田 | |||
現在の60歳以上の高齢世代の方々が抜けた場合、現場が回らなくなってしまう恐れがありますね。 |
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岩田 | |||
高齢者層には現場でたたき上げて身に付けた知恵があります。現場では、そういった知恵がないと回らない場合もあり、その知恵を持った世代がいなくなっている。頭数だけ揃えても知恵がなければ安全な建物はできなくなり、そうなれば建設業の信頼がなくなる。だからと言って海外から人を呼び寄せる事態になれば、日本の建設業は崩壊の危機を迎えます。 |
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■技能工や作業員を外国人労働者に依存することになる。 |
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岩田 | |||
コロナ下で入国が規制されている現在でも、全国の鉄筋業の18%は外国人が占め、実に5人に1人の割合です。入国規制がなくなれば、さらに外力が流入してくる。特定技能はまだしも、実習事業は申請書類が通れば下請けでも受入可能ですが、マーケットの需給バランスを考慮せず受入れれば、閑散期になった場合どうするのか。このため現在の実習生を特定技能にして日本人並みの賃金にしないといけない。しかし、その場合でも課題があります。 |
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奥田 | |||
悪貨が良貨を駆逐するではありませんが、技術を持たないところが、技術を持った会社から仕事を奪ってしまう。 |
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岩田 | |||
また、公共工事で、見積が2千万円、出精値引が半額という考えられない事例もありました。 |
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■そのダンピング対策とともに、社会保険加入の取組みと立入調査について近畿地整の実施状況をお聞かせください。 |
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奥田 | |||
ダンピング対策として低入札価格調査基準制度を導入しており、その基準価格を下回った場合は厳しく調査を実施するなど、徐々にではありますが取組みを進めています。最近では一般管理費の比率をさらに引き上げる等により低入札基準価格も引き上げています。また都道府県等の地方自治体や公契連、議会議長に対して、本省からダンピング対策や施工時期の平準化等の実施を働きかけています。さらに、民間発注団体に対しても、労務費等の必要経費を適切に見込んだ適正な価格での請負契約を結ぶための要請を通知しています。 |
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岩田 | |||
おっしゃる通りです。処遇改善や法定福利費の義務化等はそもそも論です。ただ、法定福利費については馴染むまでは別枠計上にしていただきたいと思っています。国の工事では下限価格を設定していますが、これは標準的な価格があるからで、下請工事では、建設業法第19条の3で原価に満たない契約の禁止は明記されてはいますが、基準がないことから下限が分からない。一定の基準があれば、セーフティネットになりますが、民間工事ではそのセーフティネットが整備できない。アメリカには、デービスベーコン法があり、そういったセーフティネットを作るべきではないか。我々も新しい制度や仕組みに対していろいろと愚痴を言ってきましたが、これまでの総価一式契約方式としてきた建設業の慣習と、新たな請負形態に合わせた取組みが必要ではないかと思います。 |
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奥田 | |||
やはり民・民契約も含めて全体の価値観を変えていく必要がありますね。 |
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岩田 | |||
民間工事では材料費が高騰しても、そのリスクは元請の契約に含まれていると言われ、さらには一般ユーザーに安く提供するためにやっていると言われる。この価格転嫁の負のスパイラルを誰かが断ち切らないといけない。賃金を上げ、価格を上げ、消費も上げる。そうしないと外国人労働者にも選ばれなくなる。 |
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奥田 | |||
健全なスパイラルにしないと駄目ですね。賃金が上がらないと外国人労働者も来てくれなくなる。労働する人のいない国として何もなくなってしまう気がします。 |
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■地方自治体への取組みでは。 |
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奥田 | |||
ダンピング防止には、まず公共工事からその風潮を醸成していくことからだと思います。人手が不足していく中で、公共工事が先行すれば民間も付いてくる。このため直轄工事が先導して自治体に浸透させていく。これまで、自治体に対しては通達や発注者協議会等を通じた要請等を行っていますが、渡辺局長からは、各自治体を個別に訪問して説明していくことも必要だと言われております。 |
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岩田 | |||
おっしゃる通りですね。従来の商習慣を見直してやり方を変えていくべきです。地方自治体のダンピングについては、国交省が元請に対して実施したモニタリング調査で、約半分の元請が標準見積書を活用していないことが明らかになりました。このため、建専連では、地区建専連の中に府県単位で支部を設立して、それぞれの府県、市に働きかけることとしました。その上で、各地方整備局にお願いしたいのは、その話し合いの場づくりの仲介をしていただきたいと考えております。 |
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奥田 | |||
いろいろと話を伺う中で、課題に対する互いの共通認識はできているとは思っています。それぞれの手法は違っていても目標は同じであり、価値観を変えるところまで協力してやっていきたい。今後もコミュニケーションを取りながら進めていきたいと思っています。 |
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■ありがとうございました。 |
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