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近畿地方整備局 村上幸司営繕部長  【2021年11月11日掲載】

人に優しく、災害に強く進化する地域資産

働き方改革総力で取り組む

「週休2日」など施策をパッケージで

耐震化率100%へ急ピッチ


 公共建築に対する国民の理解と関心を高めるため、平成15年に制定された11月11日の「公共建築の日」と11月の「公共建築月間」。公共建築の日を11月11日としたのは、日付の数字を建築の基本構造・躯体を象徴する4本柱をイメージしたことや、公共建築の代表である国会議事堂が昭和11年11月に完成したことに由来している。近畿の営繕行政をリードする近畿地方整備局営繕部の村上幸司部長は、時代の変化とともに公共建築に求められる多様化するニーズに応えながら、「今後も施策を着実に推進していく」と語る。その村上部長に現在の取組みなどを聞いた。

■まず営繕工事における働き方改革の取組みから。

 国土交通省では、公共建築工事に携わる建設業の働き方改革を進めるため、様々な施策をパッケージ化して推進していますが、令和3年度はこれらの取組みをより強化して進めています。特に週休2日、施工時期の平準化、ICTの積極的な活用、書類の簡素化等については、全国の地方整備局が一丸となって前に進める形で取り組んでいます。
 まず、週休2日の促進ですが、近畿地整管内では、すべての営繕工事を対象として、受注者希望型による週休2日促進工事に取り組んできました。今年度からは、一層の促進のため、新築工事は原則すべて発注者指定方式で発注することとしました。年度の途中での集計ですが、発注済み11件の工事のうち新築工事7件を発注者指定方式で、その他改修工事など4件を受注者希望方式としています。
 施工時期の平準化も建設業の働き方改革には重要事項です。これまでも債務負担行為を積極的に活用してきましたが、ゼロ国債も適切に用いながら完成時期の年度末集中を避けたり、適正な工期を確保しつつ工事着手時期を一定期間ずらすなど、工事ごとに工夫を凝らして平準化を進めています。原則すべての工事について、工事着手に一定の余裕期間を設定する余裕期間制度を適用していますが、より一層の施工時期の平準化に向けて、最大で6か月間の余裕期間を確保した案件もあります。

■一定の成果が出ている。

 働き方改革の推進には生産性の向上も欠かせません。官庁営繕事業における生産性向上技術の活用方針が改定されましたが、中でもBIM活用について一層の試行拡大を図っていくこととなりました。PFI事業がその対象ですが、今後は設計から維持管理段階まで一貫したBIM活用を試行していきます。近畿地整でのBIMの活用の状況ですが、まずは設計から施工までを対象として試行事案を積み重ねていくこととしています。
 例えば、国立京都国際会館展示施設(U期)の設計に今年度着手いたしますが、基本設計に関する標準業務、一般図確定レベルまでの設計図書の作成と納品、施工者へのデータ提供を見据えた段階まで、BIMを活用して実施します。大阪・関西万博日本館(仮称)も同様に、BIMを活用して設計を進めていく予定です。

■なるほど。

 書類の簡素化としても、工事や業務関係書類などの押印と署名を廃止するほか、オンライン化への移行を進めています。また、工事関係図書等について電子と紙の二重提出の実態が認められたことから、先般、官庁営繕部が工事関係図書等効率化実施要領を改定し、二重提出を求めないように改めての周知がなされています。近畿地整版の実施要領も至急改定し、HP掲載をはじめ受注者の皆さんにも周知を図ることで、二重提出防止等を含めて書類の簡素化等の取組を徹底していきます。
 また、原則すべての工事で情報共有システムの活用を必須とするほか、新築の工事現場では遠隔臨場についても試行を開始しています。現在、各地方整備局でもモデル工事に取り組んでおり、その結果も踏まえながら、本省官庁営繕部では遠隔臨場に関する要領など今年度中にも取りまとめる予定とも聞いています。

■今年5月には、営繕積算方式活用マニュアルが改定されました。

 営繕積算方式は、公共建築工事積算基準とその運用に係る各種の取組みをまとめたものです。今回の改定ポイントは大きく2点で、円滑な施工確保対策と新たな課題への対応、これらの記述の充実化です。新型コロナウイルス感染症防止対策にかかる費用等についても整理して追記しています。
 円滑施工確保では、施工数量が僅少の場合など、現場の実態を踏まえて、実際に必要となる労務費や材料費の補正方法について、詳しい事例とともに記載しています。さらに、工事一時中止に伴う増加費用の考え方など積算上の対応も掲載されています。
 新型コロナウイルス感染症防止対策等に関しても工事費積算上の対応についてもわかりやすく記載されました。感染拡大防止のための現場事務所の拡張やパーテンション、マスク、消毒液等の備品、サーモグラフィのほか、遠隔現場管理に必要な機器や通信費用等も感染防止対策費用として計上できることなどを明記しています。このほか、熱中症対策に係る費用についても同様に、費用計上の考え方をマニュアルで明らかにすることで周知を図っています。

■公共建築における防災・減災への備えとしては。

 近年、自然災害が頻発し激甚化する傾向です。近畿整備局管内でも平成30年の台風21号や大阪北部地震が発生しました。自然災害のうち風水害については、その発生もある程度事前に想定できますが、地震のそれは困難ですから平素から備えておかなければなりません。地域共有の財産である公共建築こそ、地震を含めた災害発災時にもしっかりと機能を発揮できるように対策を講じておくことが求められていると思います。
 近畿地整では、所要の耐震性能を確保する耐震対策に力を入れていまして、令和7年度までに官庁施設における耐震化率を100%とする目標を掲げて取り組んでいます。現在では95%まで進捗し、今後は、施工中の大阪第六合同庁舎や他の耐震工事が完成すれば、当面の目標を達成できる状況になりました。
 さらに、地震時には、建築設備が確実に機能できなければなりません。このため、防災・減災国土強靱化のための5か年加速化対策や社会資本整備重点計画においても、電力確保対策の促進が掲げられています。近畿地整においても順次対策を進めており、現在、大阪第3合同庁舎で非常時の電力供給を万全とするための自家発電設備等の改修を実施しており、この後も計画的に、整備を進めていく予定です。
 災害への備えは、国だけではなく、地方公共団体も含めて地域全体の取り組みとして捉える必要があります。公共建築全体を災害に強いものとするため、官庁営繕に係る技術事例や対策等に関し、「災害に強い官公庁施設づくりガイドライン」がまとめられていますので、地域の発注者の皆さんに参考にしてもらえるよう、引き続き広報に努めていきます。
 このほか、気候変動対策としてカーボンニュートラルへの取組みも進めています。建設中の大阪第6合同庁舎は、全国に先駆けてZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)として整備に取り組んできました。完成すれば国の合同庁舎ではZEB第1号となります。今後も近畿地整営繕部としては各種の施策を着実に進めていきます。

■ありがとうございました。



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