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座談会 近畿整備局 伊藤建政部長×造園3団体トップ 【2021年07月26日掲載】 |
近畿地方整備局建政部 | 伊藤康行 建政部長 |
日本造園建設業協会 | 坂上信明 大阪府支部長 |
大阪造園業協会 | 矢野幸吉 会長 |
大阪市造園業協会 | 住友達也 会長 |
伊藤部長 | 矢野会長 | 住友会長 | 坂上支部長 |
都市におけるオープンスペースである公園や緑地は、地域の憩いの場としてまちに潤いをもたらし、コロナ禍にあっては家族が楽しめる貴重なスポットとして人気を集めている。これら公園や緑地の樹木の剪定には、専門的な知識や技能が必要だが、現在の維持管理で主流となりつつあるPark―PFI制度では、技能者を有さない業者が参画するケースが増えていることに、造園業界は危機感を募らせている。こうした中、近畿における公園緑地行政をリードする近畿地方整備局建政部の伊藤康行部長と、大阪の造園団体の日本造園建設業協会大阪府支部の坂上信明支部長、大阪造園業協会の矢野幸吉会長、大阪市造園業協会の住友達也会長に、公園緑地行政の方向性や施策とともに、人材確保をはじめとした造園業界の課題について語ってもらった。 |
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処遇改善に一体となって | ||||||||
担い手確保対策 | ||||||||
■まず、建設業における担い手確保に関して、国土交通省における現状と担い手確保の取組み等について、伊藤部長からお話願います。 |
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伊藤 | ||||||||
初めに建設業全般についてお話します。建設業は、我が国の経済発展の基盤となる社会資本を整備する重要な基幹産業であり、また、国民の暮らしや安全・安心の確保を担う地域の守り手として、極めて大きな役割を担っています。 |
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■担い手の確保について国土交通省では、公共工事設計労務単価の引き上げ等により社会保険加入や給与水準の向上等の技能労働者の処遇改善に関して、各種の施策を推進されています。 |
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伊藤 | ||||||||
社会保険への加入促進については、これまで建設業界や関係機関と連携し、社会保険加入対策や技能者の処遇改善を推進しています。建設業における社会保険の加入状況では、企業別では99%、労働者別でも88%の加入率で、平成24年の加入対策を開始した当初と比べて大幅に改善されています。近畿地方整備局でも、引き続き社会保険加入の徹底と法定福利費の内訳明示した見積書の活用について、あらゆる場面で働きかけていくことで加入促進に努めていきます。 |
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■担い手の確保については造園業各社でも苦労されていると伺っていますが。 |
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坂上 | ||||||||
若年層の入職者が減少し続けており、ここが一番頭の痛いところです。今は造園に興味を持った学生が非常に少なくなっています。また例えば、専門の高校で造園に関する様々な資格を取得しても、卒業して造園業界に就職する生徒は半分程度しかいない。それが現状です。 |
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矢野 | ||||||||
当協会の会員会社についても同様で、入職者が少ないことはもとより、定着についても厳しいところがあります。今後、若い人の入職を促し、定着を図るためには、国の設計労務単価の引き上げや4四週8休などへの取組みは非常にありがたいことであり、業界発展に向けては何としてでも取り組まなければなりません。3K(きつい・汚い・危険)が続くようではどうしようもありません。 |
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住友 | ||||||||
大阪市内の業者についてもみなさんと同様に若い人の入職は少ないうえ、なかなか定着してもらえません。また、未経験の人を採用し、実務経験を積ませて施工管理技士の資格を取得させるまでには大変な苦労があります。 |
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■働き方改革についての取組みをお聞かせ下さい。 |
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伊藤 | ||||||||
働き方改革をさらに進めて行くには、新3Kの一つにある「休暇が取れる」という状況が必要です。建設業界における働き方改革として週休2日が一般化され、幅広く浸透していくことが重要な課題で、新・担い手3法に基づく工期の適正化や施工時期の平準化など、週休2日に向けて働き方改革を推進しています。 |
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CCUSの普及 | ||||||||
■建設キャリアアップシステム(以下、CCUS)の運用も始まりました。 |
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伊藤 | ||||||||
建設業で働いている方や建設業への入職を希望される方に対し、建設業が新3Kの一つである希望が持てる産業でることを実感してもらうことが極めて重要であると考えています。国土交通省では、公共工事設計労務単価の設定や社会保険への加入徹底を進めるとともに、若い世代にキャリアパスと処遇の見通しを示し、技能と経験に応じて給料を引き上げていくためCCUSの普及と活用促進に向け、様々な取り組みを行っています。 |
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■造園業界におけるCCUSへの取組みと現状はどのような状況でしょうか。 |
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坂上 | ||||||||
土木や建築と比べて、造園業の取組みは遅れていると感じています。一部の企業では進めていますが、全体的にはシステムを勉強中です。CCUS自体については、現場技能者の処遇改善につながるものと期待しています。 |
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矢野 | ||||||||
CCUSについては、登録することによるメリット、しないことによるデメリットについて、われわれ自身も十分に理解できていない部分は確かにあります。ただ、技能者の育成面からすれば登録する必要はあると考えています。かつてのISOの時のように、経営事項審査にさらに反映させるなどのメリットがあれば、造園業界での登録者数ももっと増えるとみています。 |
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伊藤 | ||||||||
CCUSについては、説明会等の普及啓発に力を入れていきます。CCUSが最終的に目指すものは、現場に入る全ての人に所持していただくことです。また、技能レベルに応じた評価についてもある程度登録数が増えていけば進んでいくと考えています。 |
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国営公園整備など多様に | ||||||||
国の公園緑地施策 | ||||||||
■国交省の公園緑地整備等に係る施策については。 |
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伊藤 | ||||||||
国の公園緑地施策としては、持続可能なまちづくりへの対応と安全・安心な都市形成への対応、歴史と文化等に根ざした美しい地域づくりへの対応、参画社会への対応、ポストコロナ時代を見据えた新しいまちづくりへの対応の5つを政策課題としています。 |
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2つの資格制度 | ||||||||
■なるほど。 |
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坂上 | ||||||||
日造協では魅力あるまちづくりに寄与するため、独自の資格として街路樹剪定士と植栽基盤診断士の2つの資格制度を設けています。現在、街路樹剪定士は全国で約1万4000人、植栽基盤診断士は後発制度で1600人程度おります。 |
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矢野 | ||||||||
確かに、東京、京都では資格取得者が現場業務にあたり、萌芽や伸長など来年、再来年のことを考慮しながら剪定していますね。 |
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坂上 | ||||||||
現在、近畿整備局管内で街路樹剪定士の配置を特記仕様書に明示している自治体は、福井県と福井市、京都府と京都市、神戸市、芦屋市、和歌山県と和歌山市となっています。もちろん、全国ではもっと多いですが。 |
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伊藤 | ||||||||
やはり資格者の数が少ないことが課題です。特定の地域に集中し過ぎず、各地域に資格者が一定程度いないと入札の公平性が保てなくなります。ただ、街路樹の剪定を資格者に任すことで仕上がりが違うということは大いにアピールする必要があります。 |
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前向き女性活躍 | ||||||||
■女性活躍についてはいかがです。 |
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坂上 | ||||||||
当社にも女性技術者はおりますが、資格取得に関しても積極的に取り組んでおります。ただ、結婚や出産を機に辞めていく人も多いですが、女性は熱心で前向きな人が多いです。 |
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矢野 | ||||||||
確かに、そういった向きはありますが、せっかく資格を取っても現場で十分に活かし切れていない部分もあります。 坂上 仕事の内容が変化してきていることも要因で、今は管理が主体で技術を活かしにくくなっている。この業界に入ってくる女性は現場に出たいという人たちが多いと思う。そこにわれわれがどう応えていくかでしょう。 |
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*オブザーバー出席した女性技術者の話 |
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結婚・出産の問題については、例えば、書類作業の日には子どもに何かあればすぐ帰れますが、いったん現場に出てしまうとなかなか早退しにくい。そういったところをこれからどう対応していくかがポイントだと思います。 |
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伊藤 | ||||||||
先程、定着率が低いという話を伺いましたが、若い人が辞める理由はどういったものでしょうか。 |
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矢野 | ||||||||
学校で造園の専門知識を学び、夢を持って入社しても、実際に現場を一人前に切り盛りできるようになるにはある程度年数がかかります。残念ながら、それまでに離職してしまう人が多いように感じています。 |
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坂上 | ||||||||
私が現場に出ていた頃と比べ、今は働く環境がとても改善されている。われわれの時代は検査前には徹夜が続くことなど当たり前だった。現在ではそんなことは殆どありませんし、造園業界も週休2日に向けて着実に進んでいる。やはり夢と現実のギャップが大きいのではないか。しかし、1年〜2年定着してもらえれば立派に育てられるとも思っています。 |
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同女性技術者の話 |
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私は実際に現場で剪定などの仕事をしたいと思ってこの業界に入りましたが、書類作成などデスクワークが多くて、なかなか木にさわれない時期もありました。今は現場で職人さんから学ばせてもらう機会が多いのでとても楽しく仕事ができていますが、やりたいことと実際の仕事に乖離があるのではないでしょうか。一方、今は若い人の転職に対する抵抗感も減っているのではないでしょうか。 |
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同若手技術者の話 |
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3Kのうち、きついと休みが少ないが大きな要因ではと思います。造園業界が新3Kに向かって進んでいるというアピールがもっと必要だと思います。 |
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■来年は、奈良県で「みどりの愛護のつどい」が開催され、2025年には大阪・関西万博も控えており、造園業界としても大きな期待があると思いますが。みどりの愛護のつどいに関して伊藤部長から一言お願いします。 |
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伊藤 | ||||||||
奈良県奈良市で第33回みどりの愛護のつどいが開催されます。これは全国の公園緑地等の愛護団体やみどりの関係者が一堂に集い、広く都市緑化意識の高揚を図り、緑豊かな潤いのある住みよい環境づくりを推進するため毎年、開催されているもので、大阪では第1回が国際花と緑の博覧会の会場で開催されました。また、平成17年に淀川河川公園で開催され、私も公園調整官として携わらせていただきました。今回は、奈良県コンベンションセンターと国営飛鳥・平城宮跡歴史公園の平城宮跡地区を会場に予定されています。これからしっかりと準備に取り組んでいきます。 |
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■最後に造園業界として万博への期待を矢野会長から、閉会挨拶を坂上会長にお願いします。 |
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矢野 | ||||||||
大阪・関西万博には世界中から多くの人が集まります。われわれとしても大阪の造園業者の技術力を存分に発揮し、アピールできる絶好のチャンスだと捉えています。業界全体としても、今後、若者の入職を促し、将来の担い手を確保・育成していかねばならず、そのために夢と魅力にあふれた業界にしようと取り組んでおり、大阪での国家的プロジェクトの工事には是が非でも元請として参加したい。われわれとしては大阪の業者に造園工事を発注してもらえるよう引き続き働きかけていきます。結局、仕事の絶対量と適正な利益が確保でき、経営が安定してこそ、社員および技術者・技能者の処遇改善、そして担い手の確保・育成を推進することができると考えています。 |
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坂上 | ||||||||
本日は造園三団体のためにお時間をいただき、お話をお聞きいただきましてありがとうございました。われわれも建設キャリアアップシステムや働き方改革などに頑張って取り組んでまいります。 |
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■ありがとうございました。 |
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