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近畿地方整備局 豊口佳之河川部長 【2020年09月28日掲載】 |
豪雨頻発・激甚化に立ち向かう河川整備 河道掘削、堤防強化など加速 ダムの「貯める」「流す」機能高める あらゆる関係者と連携し「流域治水」推進 |
河川氾濫による浸水被害は、人命や財産等への被害はもとより、交通網やライフラインの途絶による社会活動にも大きな影響を与えることとなる。近年では、台風や豪雨の自然災害の頻発化・激甚化により、その対策が急務なものとなっている。近畿圏における河川行政をリードする近畿地方整備局河川部では、事前防災はじめ、河川改修やダム等を組み合わせた対策等を進めているが、その河川部の豊口佳之部長に現在の整備状況や今後の取組みを聞いた。 |
■近年では、台風や豪雨による河川氾濫等の被害が増えていますが、まず河川整備の基本的な取組みからお聞かせ下さい。 |
河川整備にあたっては、長期的な目標などを定めた河川整備基本方針と、それに沿って中期的な目標や具体的な整備内容を定めた河川整備計画を策定し、それに基づき河川改修やダム建設などを進めています。 |
■近畿でも大きな水害が発生しています。 |
平成23年9月の台風12号による紀伊半島豪雨では、新宮川水系熊野川で河川整備基本方針の目標を上回る洪水が発生し、これによる浸水や河道閉塞も含めた土砂災害が発生しました。この災害を契機に、河川激甚災害対策特別緊急事業に着手し、河道掘削や堤防強化などの対策を加速化するとともに、河道閉塞箇所の対策や砂防堰堤の整備等を実施しています。 |
■なるほど。 |
その後も近畿では豪雨が頻発しています。例えば淀川水系では、平成25年台風18号と平成29年台風21号では、淀川水系全体の被害を軽減するため、瀬田川洗堰の全閉操作を行う必要があるほどの洪水となりました。平成25年の全閉操作は実に41年ぶりのことでしたが、そうした豪雨が4年後の平成29年にも発生したことからも、豪雨の頻発化がうかがえます。平成25年台風18号では、琵琶湖の水位上昇により湖岸で内水浸水が発生、淀川本川では30年ぶりに高水敷が冠水、支川の桂川では嵐山地区で家屋浸水が発生しました。 |
■河川氾濫の防止にはダムや河川改修など様々な手法があります。 |
河川の流量は、季節や天候等によって常に変動しており、時には洪水が発生し、河川の整備水準を超える場合には氾濫してしまいます。それを防ぐ対策として、川幅を広げるなどにより「流す」能力を大きくする方法がありますが、川幅を大きく拡大しようとすると、守るべき地域への影響が大きくなってしまいます。そのため、大洪水のピーク流量はダムで「貯める」ことも有効な方法であり、「流す」と「貯める」の適切な組合せが必要となります。河川や流域の特性、これまでの整備状況はそれぞれ異なりますので、築堤、河道掘削、宅地嵩上げ、ダム新設やダム再生、遊水地など、各河川の状況に応じた適切な組合せにより対策を講じています。 |
■現在の河川整備状況は。 |
多くの河川が、目標に対して未だ整備途上にあるのが現況です。 |
■気候変動の影響により対策も変化していきますか。 |
今後は気候変動により洪水の発生確率は2倍から4倍に、すなわち100年に1度の発生確率の洪水が50年に1度、25年に1度とその頻度が上がると予測されています。これまでの河川整備は、過去に発生した洪水規模を当面の目標としてきました。そして、着実な整備の結果、従来の目標と現状の整備水準とのギャップは小さくなってきています。 |
■ありがとうございました。 |
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