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大阪府岬町 田代堯町長  【2020年07月27日掲載】

価値高めて「NEW MISAKI」へまちづくり

自然環境の魅力フルに発信

みさき公園は都市公園に、発電所跡地は企業団地へ


 大阪府岬町では、近年、海と山の豊かな自然を活かした観光産業に力を入れている。しかし、今年3月には大きな観光資源であったみさき公園が閉園し、先に廃止された多奈川発電所とともに、その跡地活用が大きな課題となっている。田代堯町長は、厳しい状況の中でも、福祉施策やインフラ整備を後退させることなく推進し、今後も定住人口の増加を目指した施策の推進に意欲を示している。その田代町長に、今後のまちづくりについて聞いてみた。

■まず、岬町のまちづくりからお聞かせ下さい。

 現在は、2010年に策定した第4次岬町総合計画が今年度に終了することから、次期総合計画の策定作業と今次計画に掲げた目標の達成状況についての検証を行っています。私自身、町長に就任して今年で11年目を迎えますが、町財政は依然として厳しい状況にあります。このため行財政改革を進め、削減できるものは節税に努め、必要であるインフラ整備や福祉事業等はしっかりとやってきました。
 インフラ関係では、道路整備をはじめ、多奈川地区多目的公園の整備と企業誘致、道の駅みさきの整備、学校耐震改修、深日港と洲本港を結ぶ航路再生等を進めてきました。特に道路に関しては、町が活性化するという観点からも、道路網を整備する必要があり、平成29年度には第2阪和国道延伸事業により大阪から和歌山までが全線開通することができました。
 しかし、みさき公園に至る道路網が未整備のため渋滞が発生し、淡輪地区では地区内を縦貫する道路がなく、救急車両も入れない等の課題がありました。このため早くから総合計画の中で、淡輪の海岸線の整備を位置付けていましたが、社会情勢等により今日まで手付かずの状態になっていました。
 私としては、災害時に備え、住民の生命と財産を守るためにも早期の整備が必要として、平成26年度から事業化を行い、平成29年度に町道海岸連絡線として工事に着手し、今年の6月13日に供用を開始しました。また、多奈川地域には理智院、興善寺、産土神社などの文化財があり、多くの観光客が訪れていますが、バスが入れないところもあったことから、多奈川歴史街道線として整備し令和元年度に開通しました。

■なるほど。

 まちづくりとしては、これまで、地場産業の農業と漁業、林業に加え、関西電力をはじめとした大手企業からの税収に頼っていましたが、地場産業が衰退し、さらに関電が撤退を決めたことにより、近年では観光事業を中心に、自然環境をメインにしております。
 特に、第2阪和国道延伸部の開通と道の駅の整備により、道の駅みさき夢灯台を訪れる人が平成29年度は100万人、30年度が90万人、昨年度は100万人を超えました。ただ、今年は新型コロナにより自粛期間前で2〜3割程度の減少となっています。
 また、深日港の航路再生については、阪神淡路大震災では津名港への救援物資の海上輸送にも寄与したことから、3年前から航路の再開を目指して国の補助を受けて社会実験を行っています。これも現在はコロナで中断しておりますが、来年度も継続するかどうかを検討中です。これが実現すれば、港を通じて新たな交流が図れますが、いずれにしろ事業には様々な課題もあり航路の本格的な再開へはハードルが高いと思います。
 新型コロナによる影響は当町に限ったものではありませんが、観光を売り物とする自治体にとっては大変な状況です。当町もコロナ対策に万全を期しており、幸いにもこれまで1人も感染者は発生していません。ただ、今後観光客が増えてきた場合、第2波に備える必要はあります。

■町庁舎建替も課題ですね。

 現庁舎は昭和40年に建設され既に55年が経過しております。建物や設備の老朽化と執務スペースの狭隘化が進み、また耐震基準も満たしていないことから、建替を検討しています。建替にあたっては昨年度に有識者や地元関係者、住民で構成する庁舎整備検討委員会を立ち上げて検討を重ね、12月に整備のあり方についての答申を受けました。
 答申では、庁舎は防災拠点としての役割を果たすためにも建替が必要とされましたが、整備に係る財源確保について指摘を受けました。これは、現庁舎建設時に事業費が財政を圧迫したことを主な原因として準用財政再建団体となり、町民に多大な迷惑をおかけしたことによるもので、その時は、人口も増加傾向にあり、関西電力の多奈川第2発電所の計画も進んでいたことから、再建計画を前倒しでき、解除することができました。
 今回の整備に際しては、そういった事態を避けるため、国の支援制度である「市町村役場緊急保全事業」の活用等を考えています。ただ、同制度は令和2年度までの事業着手が条件となっていることから、現在では大阪府や全国町村長会を通じて、制度の延長を要望しており、制度改正となれば財政状況を見ながら住民の意見を踏まえ検討したいと思っています。

   定住人口を増やすために

■今年3月にはみさき公園が閉園し、また多奈川第2発電所も廃止されますが、これらの跡地についてはどのようにお考えですが。

 みさき公園に関しては、一昨年に南海電鉄から撤退の申し入れがあり、跡地については岬町で運営してほしいと要望を受けました。こちらとしても突然のことで驚きと戸惑いがあり、当初は南海さんの方で後継事業者を探してほしいとお願いしましたが、結局は見つけることができず、岬町として事業者を公募することとしました。
 撤退にあたっては、南海電鉄さんが動物を退園させ、建物に関しては利活用できるものは残し、それ以外は解体撤去することとし、土地は岬町へ無償譲渡となりました。跡地活用に関しては、町立の都市公園として計画し、整備にあたっては住民アンケートの調査結果を参考に検討を行い、計画を立て指定管理者制度などにより民間事業者を公募することとしており、現在手続きを進めています。今年度中には優先交渉権者を選定したいと考えていますが、コロナの影響により遅れることも予想されます。
 今後は新たな公園として、自然を活かし、ゾーニングにより大人から子どもまで楽しめ、何度も訪れたくなる公園を目指していきます。また、多奈川発電所跡地については企業団地として整備する方向です。第1発電所は既に企業1社が決まっています。いずれにしろみさき公園と発電所跡地の利活用は、大きな課題であります。

■今後の課題としては。

 交流人口と定住人口の増加が課題です。交流人口については、将来的にみさき公園を核として、岬町全体をまるごと公園として位置付けるなど、自然環境に恵まれた岬町として、町の価値を高めて参りたいと考えています。また、定住人口を増やすため、若者が住み、働く、職住接近のまちづくりを目指しており、今がその機会かと思っております。
 このため第5次岬町総合計画には、今言ったような課題を位置付けながら取り組んでいきますが、建設業界の皆様においても、岬町のまちの魅力についてご理解いただき、まちづくりにご協力いただければ幸いです。

■今後も発展に向けご尽力下さい。ありがとうございました。

 
 

田代堯(たしろ・たかし)
昭和62年から同町会議員、議長等を歴任し、平成20年に市長に当選、現在3期目。宮崎県出身。



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