日刊建設新聞社 CO−PRESS.COM |
株式会社 三誠 丹羽伸治社長 【2020年03月30日掲載】 |
回転貫入鋼管杭市場トップシェア 「鋼管杭を汎用杭に」モットーに事業展開 付加価値さらに高め、未踏の市場へ |
回転貫入鋼管杭市場でシェアトップの「三誠」(東京都中央区)。同社は基礎杭メーカーとしては後発ながらも、自社開発した小中径回鋼管杭の一貫管理体制を確立、「鋼管杭を汎用杭に」をモットーにこの10年で売上高六倍という驚異的な成長を遂げた。昨年2月、同社創立25周年の節目に就任した丹羽伸治社長は「売上200億円を目指し、市場開拓と技術開発をより強化する」と意気込む。丹羽社長にこれまでの取組みや今後の事業展開などを聞いた。 |
■昨年に創立25周年を迎えました。基礎杭の業界においては若い会社ですが、回転貫入鋼管杭市場ではトップシェアの地位にある。まず事業展開を振り返って。 |
「回転貫入鋼管杭は、19世紀半ばにイギリスで桟橋などの基礎に用いたのが始まりとされている。我が国では神戸港の鉄道桟橋(完成1876年)、横浜港の鉄桟橋(同1894年)で初めて用いた記録があり、当初は土木構造物に適用された。一般建築の基礎杭として使用されるようになったのは30年ほど前からで、主に戸建てや2階建てアパートなど小規模建築物の杭状地盤補強工法として適用が始まった。また、既成杭や場所打ち杭に比べ施工機械がコンパクトで場所を取らないため、狭小地の現場での採用が多くあったこともあり『特殊工法』として認知されるようになった。このような背景で当時は非常にニッチな商品で価格もかなり高かった。 |
■G―ECSパイルの商品化により、鋼管杭メーカーとして躍進する地歩を固めた。 |
「従来からの杭基礎工法に比べ、回転貫入鋼管杭は『支持層の不陸に合わせ簡単に杭長を継ぎ足せる』『残土処理もなく現場はきれいで施工機械も小さく安全』『杭製造も簡易であるため納期が短い』などさまざまなメリットがある。そこで当社は『鋼管杭を汎用杭に』をモットーに3つの課題に挑む。まずは対象案件の拡大を目指し杭径アップに取組んだ。もともとは細いパイプの住宅杭からスタートしたが、絶えず改良を重ね、主力製品であるG―ECSパイルの杭径を406ミリまで増やし、ラインアップを充実させた。これで従来の低層建築物から中層建築物まで対応可能となった。 |
■協力会との強い結びつきも不可欠だった。 |
「当社の協力会は杭施工店と杭製作工場で構成され、当社を含め三位一体で成長を遂げ、回転貫入鋼管杭の市場でシェアナンバーワンを獲得できた。協力会はまさにファミリーであり互いにリスペクトし合える関係にある。また、協力会各社は当社の拡大を期し施工機の購入や工場設備投資を進めてくれている。われわれはそれに応え、潤沢に仕事を出し続けなければならない」 |
■中低層の建築物を中心にシェアを伸ばしてきた。現在の売上構成については。 |
「用途分野別の売上高を大まかに説明すると、3分の1が共同住宅系、3分の1が工場の設備投資案件、残りが土木分野の付帯構造物や特殊な施工条件下における工作物で構成されている。共同住宅については4〜5階建てが中心だが、ここ数年で6階〜10階建ての割合が増えている。当社ではRC造13階建てまでの実績を有している」 |
■1月末には社長就任後初の決算を終えましたね。 |
「昨年の建設業界は、ここ数年続いた好環境から一転した。人口減少や諸般の事情により共同住宅建設が下振れるとともに、米中貿易戦争による経済不安から設備投資も縮小や見送りが生じた。そのほか、消費増税や、自然災害の頻発など非常に厳しい1年だったといえる。ただ、前期から微減したとはいえ、3ヵ年計画で掲げた150億円の売上目標を2年続けて達成できた。そして、この2月からスタートした新たな3ヵ年計画『Awake The Future』では最終年度で200億円の売上目標を掲げた。回転貫入鋼管杭の付加価値をいっそう高め、未踏の市場を開拓していきたい」 |
時代を先取る商品開発 人材投資も惜しまず |
■メーカーの使命として商品開発にも力を入れています。 |
「当社では昨年、2つの新製品を世に送り出した。一つは、粘土質地盤で高い支持力と貫入力を発揮する『N―ECSパイル』(大臣認定取得)。この開発により、どんな地盤の現場であっても当社品で対応できるようになった。もう一つは、現場溶接を不要にする機械式継手工法『ECS―MJ』。例えば、406ミリの杭径の場合、一箇所の溶接に45分かかるところが、MJ継手を使えば6分でおさまる。接続方法は簡便で継手同士をカチッとはめてピンとネジで固定するだけだ。市場では現場施工の省力化・省人化へのニーズが非常に強く、この機械式継手にはかなりの手応えを感じている。 |
■この10年で売上は6倍の150億円、社員数は3倍の140人と驚異的な成長を果たした。原動力は何か。 |
「先代社長の三輪富成(現三誠HD会長)はもともと技術屋だが、経営に対しては実直で厳しかった。もちろん、創業者としてのカリスマ性もあったが、働きやすい環境をつくってくれた。人材投資にも力を入れ、社員教育には時間と費用を惜しまなかった。おかげで社員同士が、良い意味での切磋琢磨が常となり、強いチームが出来上がった。 |
Copyright (C) NIKKAN KENSETSU SHINBUNSHA. All Rights Reserved.
当サイトを利用した結果に関するトラブルなどに関しては、当社としては一切責任をとりかねます。