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(株)リュウクス 謝花一成社長  【2019年09月02日掲載】

高品質フライアッシュで実現する「100年コンクリート」

普及のための課題クリア、県内生コン工場との提携進む


  沖縄を拠点にフライアッシュ(石炭灰)混和材の製造販売を手がける「リュウクス」(沖縄県うるま市)。同社は石炭火力発電所の副産物であるフライアッシュを改質し安定的に供給するノウハウを確立。100年コンクリートを実現する混和材として有効活用を促す。国内唯一の専業メーカーでもある同社は「生コンの施工性が不安定になる」などフライアッシュコンクリート普及に向けての様々な課題を解決し、純沖縄県産の混和材を改質から分級まで一貫生産する体制をいち早く整備。そのほか市場拡大に向けて琉球大学、台湾大学との共同研究や独自技術による製造装置の開発および販売にも力を注ぐ。大阪出身の謝花一成社長は「環境保全の問題とコンクリートの早期劣化という2つの課題を同時解決したい」と意気込む。事業内容や今後の展開などを聞いた。

■生コンクリートの混和材として使用する高品質フライアッシュ(CfFA)の専業メーカーとして沖縄を拠点に事業展開されています。設立の経緯から。

 「平成24年1月に関西在住の沖縄出身者の団体、『WUB(ワールドウチナーンチュビジネスアソシエーション)関西』のメンバーを中心にゼロテクノ沖縄(現リュウクス)を設立しました。当時の親会社、ゼロテクノ(今は資本関係なし)は大分大学発のベンチャー企業で、CfFAの基幹技術と量産技術の開発に成功していました。
 日本では石炭火力発電所から年間1300万トンのフライアッシュ(石炭灰)が排出され、その処理が大きな課題です。当社は廃棄物であるフライアッシュの有効活用とコンクリートの早期劣化という二つの課題解決を目指し、100年コンクリートを実現するCfFAの製造販売を手がけています。私自身は大阪育ちで堺の建設会社に勤めておりましたが、両親の出身地である沖縄のお役に立ちたいという思いも強かった」

■国も指定副産物としてフライアッシュの有効利用を義務付けしています。

 「現状では、フライアッシュは土壌改良材やセメント材料として粘土のかわりに使われるケースがほとんど。まだまだ有効活用されているとは言えません。一方、コンクリートの機能を高めるフライアッシュ混和材については、JIS規格は定められているものの、現場で扱いづらいために浸透していません。フライアッシュには石炭の燃え残りである『未燃カーボン』が含まれますが、この不純物が生コンクリートの施工性や品質に悪影響を及ぼすからです。たとえば、一般のコンクリート向けのJIS規格U種に関しては、未燃カーボン量の基準を5%以下としています。しかし、1%〜5%の含有量ではスランプロス・エアロスが増大し性状が安定しないうえ、コンクリート内に空隙ができ強度低下を招く。さらに空気量の項目において生コンクリートのJIS規格を満たさないものになりがちです」

■未燃カーボンを可能な限り除去することが有効利用への大きな課題だった。

 「当社では、加熱改質という方法により、未燃カーボン量を究極の1%以下まで取り除き、従来のフライアッシュコンクリートの課題をクリアし、さらに国内で初めて加熱改質から分級までの一貫生産体制を整えました。そして、この未燃カーボン1%以下のフライアッシュのことをCfFAといい、コンクリートに混ぜると『ポゾラン反応』が起こり、経年とともに建物の強度と美しさが向上します。『ポゾラン反応』というのは、フライアッシュの粒子が化学反応を起こし、コンクリート内部の組織が緻密化していくこと。これによりコンクリートの強度が長期的に増進し長持ちする。加えて外部からの塩分や水分、炭酸ガスを遮断するため塩害にも強く、さらにアルカリ骨材反応ついてもフライアッシュを入れることで防ぐことができます」

  NETIS登録され、建築工事でも多くの実績

■海に囲まれ台風の多い沖縄では、塩害などによる劣化問題を抱えています。県もフライアッシュの利用指針を定めるなど、CfFAへの期待も高い。これまでの実績については。

 「本土のみなさんはフライアッシュコンクリートといえば、土木構造物に使うイメージが強いと思います。もちろん、当社のCfFAも橋脚や橋台などで多く採用されていますが、沖縄県内では戸建て住宅といった建築分野での実績も多い。大型の建築については、公共では豊見城市庁舎や中城村庁舎、民間では銀行の支店や大型医療施設、ホテルなどです。このような建築構造物の場合、鉄筋が多くて狭いところまでコンクリートを流し込まないといけない。採用にあたっては、長寿命化はもとより、流動性や仕上がりの綺麗さが求められる。当社のCfFAはそれら条件をクリアしたということです」

■とはいえ、従来のCfFAはコスト面も課題だった。今回、低コストで製造できる装置を開発したそうですね。

 「『新型ハイブリッド加熱改質装置』と名付け特許も取得しました。この装置では、高周波誘導加熱(IH)方式を採用し、原料のフライアッシュを導管部分(細い金属管)で600度に予備加熱した後、酸化炉に送って未燃カーボンを自燃させて取り除きます。未燃カーボンをエネルギー源に省エネ操作できるところが最大の特長で、昨年、発明大賞の発明奨励賞を受賞しました。既にパイロットプラントも完成しています。この新型装置を導入すればエネルギーコスト(電力・燃料費)を従来の約3分の1に抑えることができますし、大幅な小型化による導入コストの削減、さらに未燃カーボン量に影響されない生産能力も実現できます。
 これからはこの新しい加熱改質装置と、同じく自社開発した粒径を高効率に選別する最新の分級機を積極的に売り込んでいく方針です」

  琉球・台湾大学と共同研究、高付加価値品を積極展開へ

■昨年には経済産業省の「はばたく中小企業・小規模事業者300社」に選ばれました。将来に向けた取組みは。

 「現在国内で流通しているCfFAは、JIS規格U種のものがほとんどですが、当社としては高付加価値品、いわゆるCfFAT種を普及させたいと思っています。CfFAT種は非常に粒子が細かく、高強度コンクリートや補修材に適しており、高価なシリカフュームの代替材としても注目を集めています。国内でこれを供給できるのは当社だけです。直近では九州新幹線のトンネル吹付コンクリートの一部に使われています。『早期に強度が出てリバウンドも少ない』ことが決め手になりました」

■高付加価値品の展開には手応えを感じていると。

 「たとえば、琉球大学とは補修材の共同研究を行い、CfFAT種を補修用のモルタルなどに混ぜると、表面が緻密化し、薄い塗膜でも塩分の浸透等を十分防げることが実験で証明され、特許も出願しました。
 また、アジア展開については台湾を足がかかりに販路拡大を目指しています。沖縄と同様にコンクリート問題を抱える台湾ではフライアッシュはエコな混和材として認知され普及しています。台湾には沖縄総合事務所が設置した勉強会で何度か訪れ、台湾大学にも当社のCfFAT種を供試しました。すると、『こんな高品質なフライアッシュがあるとは思わなかった』と驚かれ、今では台湾大学および大手企業と産学連携で次世代の新しいコンクリートをつくろうと研究に取り組んでいます」

■最後にひとこと。

 「会社設立から7年以上経ちましたが、実績を一つ一つ積み重ねることで口コミが広がり、沖縄県内の施工業者さんから『リュウクスのフライアッシュを使いたい』と言っていただけるようになりました。沖縄本島には生コン工場が約40工場あり、そのうち、約20工場と提携し、当社の混和材入りコンクリートとしてJIS規格も取得しました。近畿においてもしっかり生産体制を整え、このような提携関係を構築していきたい。当社のフライアッシュは国土交通省のNETIS(新技術情報提供システム)にも登録され、近畿自動車道紀勢線の橋脚工事での実績もあります。まずは公共工事からご検討いただければと思っています」

 
 


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