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interview
大阪府住宅供給公社 戸田晴久理事長  【平成22年4月26日掲載】

公社賃貸 泉北NTでの活用が課題

住戸改善・ワンストップサービスなど

社債発行が大きな目標に

介護や子育て支援施設も研究 


高齢者から新婚、子育て世帯まで、さまざまな居住者ニーズに応えながら、良質な公的賃貸住宅の供給に努めている大阪府住宅供給公社。しかし、社会情勢の変化は公的賃貸住宅が果たす役割にも影響を及ぼし、特に賃貸住宅経営は一段と厳しさを増している。こうした中、安定した住宅供給とともに、公社の健全な経営に向け指揮を執る府住宅供給公社の戸田晴久理事長に、公社賃貸住宅の現状や泉北ニュータウン再生での役割などについて聞いた。   (渡辺真也)

■先ごろ、泉北ニュータウンの再生に向けて、大阪府と堺市、府公社、都市再生機構、タウン管理財団による府市等連携協議会が設立されましたが、まず、その中での府住供の役割からお聞かせ下さい。

戸田理事長

「泉北ニュータウンには、公社の管理する賃貸住約2万2,000戸のうち約4分の1にあたる5,300戸がありますが、全空家約950戸のうち約半分は泉北ニュータウンがしめています。千里ニュータウンと比べ流入人口の少なさが入居率の低さにつながっています。一方で府公社では、平成20年度に策定した『自立化に向けた十年の取り組み』に基づき、当分新たな建て替え事業は行わないことになっています。その中で、公社賃貸の4分の1を占める泉北ニュータウンでの空家をどうするかが問われている訳です」

■なるほど

戸田理事長

「自立化を目指す上での最大の課題である泉北の空家をどうするか、特に10年後、20年後を見据えた場合どうするか、これについて協議会では1万6,000戸ある府営住宅や8,000戸のUR住宅を含めた、公的賃貸住宅をどう活用するかについての部分で一緒にやっていこうとするものです」

■公的住宅の役割としては。

戸田理事長

「都市の住宅は長い間借家が主流でした。戦後に住宅金融公庫ができ持ち家も増えてきましたが、都市の住宅はかつては6割、現在でも4割程度の借家が必要と思っております。転勤など仕事の関係で持ち家では住めない人達などのニーズはあり、千里や泉北では分譲マンションなどの持ち家は可能ですが、土地の値段を顕在化させ、それを家賃で賄う賃貸経営には無理があります。そういう観点から、ニュータウンでの賃貸住宅経営は公的住宅が担うべきと考えます」

特に、高齢者でも所得制限を超えるため公営住宅に入居できない世帯、新婚子育て世帯など、公社が担う役割は多いと見る。

「調査によれば今後、人口は減少傾向にあり、公的賃貸住宅への入居者も減少するとの見方もありますが、入居者の形態には親子、夫婦、独居高齢者、 シングルマザー等のタイプがあり、単なる人口統計では計れない部分もあります。それら世帯構成を分析して、積極的に供給できればとの思いはあります」

■具体的な取り組みはされておりますか

戸田理事長

「泉北ニュータウンにおける空家率が昨年3月に8.7%あったものが、今年3月には7.6%と1.1%下がりました。これは鴨谷台団地で空家率の高かった4〜5階の空き住戸を、和室を洋室に変更したり、浴室設備の効率化とともに仕様変えするなどリフォームを施して募集したところ1日で埋ったという例もあります。これは若手職員が中心となりアイデアを出し、綿密なニーズ調査も実施したことが功を奏しました。募集は限定15戸でしたが、20〜30代の夫婦の応募が6割と最も多く、当初の想定が裏付けられました」

また募集方法についても、従来は公社に出向いての手続きが必要だったものを、今年度からは泉ヶ丘にあった募集センターの機能を強化、センターで全ての手続きを 可能としたワンストップサービスを開始した。

「10年後、20年後にも大規模な建て替えなしで現在の入居率が保てるかどうかが課題になります。泉北ニュータウンに関しては、住戸改善などのストック活用と 募集等でのサービス向上など公社独自の戦術的な取り組みは可能ですが、府営住宅、UR賃貸住宅、公社賃貸住宅を合わせて2万9,000戸という3つの公的賃貸住宅の 大きなボリュームをどう絞り込み、どの世帯をどこが扱うかといった戦略的な取り組みを今後議論する必要があります」

■今後、ニュータウンに必要な機能とは。

戸田理事長

「施設系のにじみ出しといった高齢者向けの介護施設や子育て支援施設、宅配サービスなども研究テーマとして取り組もうと考えております。 コンビニについては、今まで余剰地活用の観点から議論はありましたが、堺市が泉北ニュータウンで行ったニーズ調査でもコンビニを望む声が多くありました」

現在、泉北ニュータウンでのショッピング機能を担っているのは近隣センターで、商業店舗はもとよりATMや郵便窓口などの利用頻度は高いとされている。 しかし、泉北の場合、団地規模が大きく場所によっては不便な部分もある。高齢化に伴い買物は近場が便利となるため、その役割をコンビニが担えれるような仕組みを 議論する必要があるとする。

■公社の今年度の事業計画について聞かせて下さい。

戸田理事長

「自立化に向けた取り組みの中で、メインのひとつは千里ニュータウン内で活用用地を生み出して処分していくことを上げております。 昨年度は新千里西町でコンペを実施し、賃貸住宅の建て替えでは今春に吹田北千里駅前団地の第1期が竣工しました。駅前であり非常に人気が高く、 多くの方の募集がありました。今年度は千里ニュータウンで3団地650戸が竣工する予定で、これを如何に埋めていくかがポイントになります」

賃貸住宅の建て替え事業と再生地処分では今年度、それぞれ1件ずつを予定。建替事業は平成25年度には終了する見込みで、 今後はストック活用による住宅管理が事業の中心となる。

■保有地などの事業用地の処分では。

戸田理事長

「津田サイエンスとくにみ坂は今年度でほぼ完了します。昨年度で1番大きなものでは羽曳ケ丘住宅開発事業がありました。 南河内健康ふれあいの郷の一環として、ビオトープなど環境に配慮した戸建て住宅コンペを実施して事業者を決定いたしました。公社として残る大きな プロジェクト用地では箕面森町だけになります」

■今後は管理が事業の中心となる。

戸田理事長

「以前は、市場家賃でなく建設費を回収する家賃設定でした。民間より安いということで募集も受け身でしたが、 改正により市場家賃化が認められました。これにより集客努力や先程も言いましたがワンストップ手続きなど、 公的住宅といえども入居者に対するサービス向上への努力が求められようになり、民間では当たり前のことですが、積極的に市場に出て行かなければならない時代になりました」

■指定管理者制度の活用に関しては。

戸田理事長

「公社では府営住宅約13万8,000戸の管理代行を実施しておりましたが、競争性がない中で公社が担当することが合理的なのかどうかの 議論がありました。そのため試行的に3地区約1万8,000戸について4月1日より民間の指定管理者が行うことになり、 その中で民間と公社とのコスト比較やサービスについて府が判断することとなっております。我々としては、民間に対抗できるだけの競争力や体力を付ける ための努力を行ってまいります」

入居促進や居住者に対するサービスに加え、管理分野でも今後、民間事業者との競合が迫られる中、公社では今年度の経営方針の 「経営体力の強化」の中で、指定管理者制度の本格実施に向けた目標を掲げている。

「あと、今年度の大きな目標の1つに社債の発行があります。全国的に住宅公社の社債(公募債)発行は東京都公社だけで他にはありません。 初めての試みですが、その目的には市場評価を受けることにより、私も含めて緊張感を持ち、体質を変えることにあります」

■今後も良質な住宅の供給を目指してご尽力下さい。

戸田晴久(とだ・はるひさ)昭和47年4月大阪府採用、同59年4月建築部建築監理課主査、同62年5月住宅政策課民間住宅係長、平成元年4月住宅政策課主査、同4年4月開発指導課主幹、同6年4月企画調整部企画室主幹、同9年4月建築部住宅政策課参事、同10年4月建築都市部住宅まちづくり政策課参事、同11年5月公共建築室参事、同12年4月住宅まちづくり政策課長、同14年4月建築都市部副理事、同17年4月同部技監、同18年4月住宅まちづくり部長、同20年4月同部理事・大阪府住宅供給公社理事長、同21年三月大阪府退職。京都大学工学部建築学科卒。60歳。


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