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interview
民主党・建設業法議連 中川治事務局長(衆議院議員)  【平成22年4月12日掲載】


持続可能な建設産業の実現へ

2年後に法改正を目指す

悪化する職人の待遇
技能者正当評価の検討も

経審や設計労務単価のあり方に疑問


建設業法の総点検と政策提言を行う「建設業法等を考える民主党議員連盟」(会長=奥田建衆議院議員)が3月30日に発足した。持続可能な建設産業の実現に向けて、石材業・解体業・煙突業など専門業種別の実態研究および労務賃金の基準認定、経営事項審査(経審)の問題などについて月1回のペースで勉強会を開催、議論を重ねながら二年後をめどに建設業法の改正を目指している。その議連事務局長として実務をとりまとめる衆議院議員の中川治氏(大阪18区選出)に設立の背景や今後の取り組みなどについて聞いた。(中山貴雄)

■今回設立した建設業法議連は業界から非常に注目されています。

中川事務局長

「最終的に議連の参加者は70人を越えた。財政難と景気後退の影響で建設投資は減っているが、500万人以上の方々が建設業で働いている。これからも必要な公共工事はたくさんあるが、現場で働く人たちの待遇があまりにもひどい。将来に希望が持てない状況であり、技術・技能が伝承できないという危機感を持っている」

■確かに職人の高齢化や低賃金は深刻化しています。

中川事務局長

「ここ数年国会で次々と労働法が改正され建設労働者に関する法改正もされた。それに伴って職人の待遇は悪化した。職人は30歳代が現場で一番の戦力になり、年齢とともに給料が上がるという仕事ではない。だからこそ若いときから手厚くしないといけない。今は職人がまともに飯を食えない。これでは結婚や家庭を持つという将来の生活設計も立てられない」

■現場の実態を議連の活動に反映させる?

中川事務局長

「そういうこと。業者では人を抱えて機械を持って頑張っているところほど不利になっている。例えば石材業や塗装業、解体業、警備業などでは分離発注が必要だと以前から言われてるが一向に進まない。経審では技能者を雇ってもあまり評価されない。施工技術者が必要なのはもちろんだが、彼らだけでも家はつくれない。技能者の評価のあり方についてもしっかり考えていきたい」

■ルールが現実から離れてきている。そのために不利益を被っている部分もあると。

中川事務局長

「議連では建設業法を逐条解釈してチェックを行う。産業構造が転換する中、守らなければならない業界と人を明確にしたい。光の当たっていない業界関係者の生の声を聞いていく。具体的には解体業などは『とび・土工』に『産廃処理』の許可があれば入札の参加資格がある。しかし最近は石綿など公害問題もあり専門性が必要となってきた。また、石材業には位置づけがない。建設業法では石材業というのは存在するが、国土交通省における許可がない。結局、石材の仕事が出来ない一般の建設業者と同じ扱いで入札が行われている。こんなケースが実はものすごく多い。煙突業もそう。ゴミ焼却場の建設工事では煙突工事はかなり叩かれ技術者と技能者にしわ寄せがくる。炉と建物と煙突を分離発注した方が健全な発注だと考えている」

■経審問題も以前から業界では指摘されています。

中川事務局長

「先日話をした行政書士会でも20年来、建設業法の改革を言っており経審もおかしいと問題意識を持っていた。設備投資をしたらそれも借金。借金して買うから当然。すると経審の点数がガクンと下がる。借金には前向きなものと後ろ向きなものがある。実例を挙げよう。知り合いの地元業者が大手デベロッパーの宅地開発に参画した時のこと。デベロッパーの都合で一時的に業者が土地を買い入れ保有することになった。銀行は経緯を知ってるから大手の信用でその業者に億単位の融資を行った。すると莫大な借金ができ業者の経審が下がりランクも落ちた。結局、この会社は優良で技術力もあったが公共工事から撤退した」

■やはり、あらゆる制度を見直す時期に来ているのでしょう。

中川事務局長

「先月末に国交省が発表した設計労務単価についても疑問を持っている。標準の労務費、要するに支払うべき労務費には社会保険、 雇用保険、健康保険はもちろん、教育研究費、例えば社員が10人いたら1人は研修に出ている計算をするとか、そういったものを含むべきだ。 今の労務単価の1.3倍から1.4倍を基準として出さないと実態にそぐわないのではないか。また日当で標準の労務費を公表するのもどうかと思う。 雨が降ったら仕事がない現場もある。年収で出した方が実態が分かるケースもあるだろう。公表の仕方も含めて課題は多い」

■パートやアルバイトの賃金と労務単価が比較されている気がします。保険や道具代など自己負担の部分がほとんど理解されていない。

中川事務局長

「やはり建設現場で働いている人を保障する必要がある。物品と人を同じように扱っては駄目。今回の発表を受けてある業者から 『ガードマン8,400円というのはやめてくれまへんか』という訴えがあった。この数字をベースに単価が叩かれるから。いずれにせよ、建設業法を変えようとする 動きは今までなかったこと。議連としては入札・発注・評価の仕方などありとあらゆるものを総点検する方針だ。建設の技術と技能がしっかり伝承できる持続可能な 業態にすることが最終目標になる」

■これからの議連の活動に期待しています。本日はお忙しい中ありがとうございました。

*「建設業法等を考える民主党議員連盟」の役員は以下の通り。
 (顧問)前田武志参議院議議員▽沓掛哲男衆議院議員(会長)奥田建衆議院議員(会長代行)川内博史衆議院議員(副会長) 室井邦彦参議院議員▽小泉俊明衆議院議員▽辻惠衆議院議員(幹事長)阿久津幸彦衆議院議員(事務局長)中川治衆議院議員(事務局次)長熊田篤嗣衆議院議員



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