日刊建設新聞社 CO−PRESS.COM |
南 正晴・大阪府公共建築室長 【平成21年11月16日掲載】 |
整備・運営で地域連携へ 既存ストックの活用が課題に |
公共建築は、地域の交流の場や憩いの空間、また観光スポットとして多くの人々が利用するだけでなく、まちなみや景観形成の上においても重要な役割を果たしている。大阪府が整備する公共建築の保全管理を担当する住宅まちづくり部公共建築室では、時代変化やニーズの多様化に対応した整備・運営に努めている。その公共建築室の南正晴室長に、府内の公共建築の現況や整備における課題などを聞いてみた。 (編集部・渡辺真也) |
---まずは公共建築の役割についてお聞かせ下さい。 |
南室長 |
公共建築は行政施策や教育、福祉など、様々な分野に関わる各種の行政目的を実現する施設としての大きな役割とともに、地域の人々の生活と密接に関わっています。具体的には、地域の景観形成や快適な居住環境の実現の上でも重要な役割を果たし、特に近年では、地域との連携を図りながら公共建築をいかに整備していくか、施設完成後の運営の在り方も含めて考えていくべきといった気運が高まってきています。誰もが利用しやすく、親しみやすいとか、まちなみや環境に十分配慮されているなど、まちづくりの上においても貢献することが期待されています。 |
---公共建築はある意味、町のシンボルやランドマーク的存在で、立地場所も重要なポイントになるのでは。 |
南室長 |
高度成長期には、新築の施設が多くありましたが、現在は既存ストックをどう活用するのかが課題となっています。活用にあたっては、施設のあり方を十分に議論した上で、建替えか、改修か、あるいは他の施設と集約するかがポイントとなり、立地という点ではおのずと限られてきます。 |
---近年では公共建築の整備、維持管理手法も変わってきている。 |
南室長 |
新しい施設を整備するより既存ストックの有効活用ヘ−との流れの中で大阪府では現在、耐震化という大きな行政課題があります。耐震化に関しては、平成18年に策定した大阪府住宅・建築物耐震化10ヵ年戦略プランを踏まえた府有建築物耐震化実施方針に基づき、平成27年度までに耐震化率90%以上を目指して取り組みを進めておりますが、進捗率は今年3月末で約64%となっています。ですから今後の課題としては、これをいかに計画的に早く進めていくかであります。 |
---それらを進めていく上での課題は。 |
南室長 |
現在、公共建築室が保全している対象施設は、246施設で延べ床面積では約81万平方メートルあります。この中には警察や病院、学校、府営住宅などは含まれていません。このうちの46%にあたる112施設が建設後既に30年以上を経過しています。この膨大なストックをいかに活用するか。建替えや改修、あるいは統合・廃止するかを検討した上で計画を立てなければなりませんし、合わせて財源をどう確保するかです。また建築工事だけでなく設備機器の更新も必要ですから、それら大量のストックをどうしていくか、その対応が課題となっています。 |
---その対応策はありますか。 |
南室長 |
そのひとつとしての耐震化であり、地球温暖化対策も含めた設備機器の省エネルギー化改修などがあります。特に設備機器に関しては大阪府はESCO事業にいち早く取り組んでおり、これまでに15事業・20施設で省エネルギーの実績として20%を超える削減を行っています。しかしこれも一部の大規模施設に限られており、それ以外はまだまだ難しいものがあります。いずれにしましても公共建築を取り巻く社会環境が大きく変化しております。今日的意義に照らして必要な施設がどうか、維持管理や運営コストの徹底した縮減など、これは大阪府に限らずどの自治体でも同じだろうと思いますね。 |
Copyright (C) 2000−2009 NIKKAN KENSETSU SHINBUNSHA. All Rights Reserved.
当サイトを利用した結果に関するトラブルなどに関しては、当社としては一切責任をとりかねます。