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interview
リバー産業株式会社  河 啓一代表取締役社長  【平成21年11月2日掲載】

自然と共生 深まる愛着

資産としての住宅価値を高める

職人育て、現場を大事に

価格競争力で勝ち抜く 


大阪府を中心に、近畿圏で事業を展開するリバー産業(株)(本社。岸和田市)では、分譲マンションはじめ戸建て住宅などの開発・企画から建設、販売までの一貫システムにより、環境や省エネルギーに配慮した良質な住宅の提供に努めている。同社の創業者である河啓一代表取締役は、「住宅は資産であり、財産となるもの」とし”将来財産”を理念に掲げ、永く住み続けられる住宅の実現を心掛ける一方で、それを支える現場を重視し、技能工の育成に力を注ぎながら、自ら現場に出向き改善案などのヒントをつかみ、より川上に近づくことでコストダウンを図るなど「現場主義」を実践している。その河社長に、建設・不動産業界の現況や今後の見通しについて、弊社の中山貴雄代表取締役が聞いた。(文責・渡辺真也)

--まずは社長がお考えになる住宅・不動産業界の現況からお聞かせ下さい。

河社長

住宅資産に換算して、現在の日本は過去において約600兆円の資産を失っていると言われております。住宅の耐用年数を諸外国と比較した場合、イギリスで77年、アメリカで55年とされているのに対し日本は20年から30年とされています。特に日本の場合、一般的なサラリーマンでは耐用年数と同じ期間をローンの支払いに追われ、払い終わると同時に資産価値が失われるというのがほとんどで、これは大きな富の損失と言えます。

--戸建住宅にしろ、マンションにしろ多くの人は長期ローンを組みますね。。

河社長

そういった状況に加え、現在では核家族化が進んでいます。かつては育った家や土地を子供達で分け、それが一定の資産や財産になり、その代わり親の老後の面倒を見るという資産相続の形が続いてきました。それが今では遺産相続となった上、親の家はつぶしてしまうことが多い。それは不動産自体の価値、資産価値が欧米と比べて薄れてきたためで、特に中古不動産が停滞しており、ストックとしての意味がなくなりました。

--確かに、資産価値の点から言えば中古物件より新築の方が高いように思います。

河社長

現在の中古住宅は、資産性が持てないようになっております。最近でこそ200年住宅などといわれるようになってきてますが、資産性のない住宅は先進国では日本がひどいです。住宅に資産性を持たせ流通性が出てくれば家が財産としての価値が出てきます。ローンを払っているのに価値がないのはおかしな話で、では誰が得をしてきたのかといえば、銀行とデベロッパー、ゼネコンだけです。

--住宅の耐用年数を延ばすにはどうすれば良いのでしょうか。

河社長

耐用年数を延ばすためには、まず「将来にわたり、永く住みたくなるようなまちづくり」が必要でしょう。隣近所はどうでもいい、自分の家さえ良ければ−ではだめです。自宅だけでなく周辺環境、近所の家も良くなければなりません。そういったまちなみが形成されて住みたいまちになってくる。将来の財産になるようなまち、家づくりを行うことです。

--なるほど。

河社長

住みたくなるまち、家づくりが実現すればその家を壊すこともなく、ばかげたスクラップ&ビルドもなくなる。そうなれば省エネルギーにもつながります。住宅の耐用年数が長くなれば木材消費が減少し、コンクリートや鉄の排出熱などを抑制できる。CO2の排出を減らすことにもつながります。また、まちの成熟とともにリースが可能な住宅もひとつのあり方ではと思います。

--住みたくなる街、言い換えれば定住魅力とでも言えます。

河社長

住みたくなるまちの条件として、住宅の耐用年数が長いことは無論のこと、改修や補修などのメンテナンス費用が安いこと、 また花や緑など、自然があるとまちにも愛着がわいてきます。私の子供時代には家の周りに池があり川があり、山があり、家は粗末でしたがまち自体には愛着がありました。 それが地域力を生みだす元にもなります。確かにあの時代は地域力というものが強かった。産業でいえば中小企業が強かったことが、 ある意味で日本が活性化する国力のひとつでもありました。

--いわゆるコミュニティーの形成ですね。定住人口が増えればまち、地域として成熟していきますから。

河社長

かつて強大な力を誇った古代ローマ帝国は農民を中心とした中堅層が国を支える力となっていた。日本も中小や零細企業が中心となり、 また地域もそれなりの力を持っていた。ところが、現在の国民は老後の心配ばかりしている。先ほども言いましたが、 昔は土地を譲り受けることで老後はそう問題でもなかった。この土地をファイナンスの資源にしたことは一つの日本人の知恵です。 土地万能主義ではだめですけど、多少のストックがある方が国民が豊かになる、土地には多少の資産性を持たせたほうが良いと思います。 ただ、マーケット市場論理が必ずしもベストではなく、ある程度の規制をかけるべきでしょうけど。

--現在、建設業でも技能の伝承、技術の継承が課題となっております。

河社長

ホワイトカラーが増えていけば当然、そうなってきます。特に建設業は3Kとも言われるように若い人が敬遠する 職種の代名詞のように言われております。そういった社会風潮、間違った価値観といいますか、技能は世界とともに生きていくものです。 物づくりは短期にはできない。土地ころがしのように。人とのかかわり、古き良き日本の良さを活かしていくべき。 当社には職人さんを対象とした表彰制度がありまして、昨年は総額で1千万円を渡しました。

--特に職人さんの育成が大きな課題で、良い現場には必ず、良い職人さんがいるといわれます。河社長は昔から現場には必ず行かれるそうですね。

河社長

これからは現場の時代です。かつては名前、看板やのれんで十分に仕事ができました。名の通った会社だから大丈夫だろう、 古い会社だから信用できる−というのは昔から、大きな会社や有名な会社は「悪い事はしない」という神話みたいなものがありましたが、 これらがインターネットにより崩れてしまいました。このため現場主義の時代が来たのかなと思います。私が現場に行くのも机の前に座っているだけでは 改善案が出てこないからです。もっとも現場は迷惑がっておりますが(笑)。

--ところで、不動産も含めた建設産業全体の今後の見通しはいかがです。

河社長

ゼネコンの大半は来年はもっと苦しくなりますね。これまで一部上場会社や中堅会社は、ある種「聖域」とされ、倒産とは無縁と思われておりましたが、 これからはそうはいきません。今回の不況では不動産会社でも上場企業が潰れておりますが、当社のような小さな会社は案外、潰れておりません。 次はゼネコンと見ておりますが、少なくとも来年まではデフレが続くと見ております。その間、マンションなどでは在庫の吐き出しが出てくるでしょう。 その後、本格的な再編、特に3月末決算で大きな動きが出てくると思っています。また、そこをチャンスにできる会社もあるでしょう。

--それはどのような見通しから。

河社長

仕事がなくなることが大きな理由ですが、別の要素として価格競争がないことです。価格競争がないのは建設業界だけでしょう。 国に過保護にされて育った産業は他にありません。現に自動車産業や電化製品など他産業は競争によって伸びてきております。対応としては価格競争力と 良いものをつくること。安くて良いもの、対外的にも競争力を付けるものを生み出すことは簡単ではないですが、組織を挙げて取り組まなければ。 ユニクロなどが好例です。不況でも良い物は売れます。建設業も今後、生まれ変わること、いわば”チェンジ”することでチャンスは生まれてくると思います。

--現在の建設業経営者の多くは、今後の対応に悩んでおります。

河社長

パイが少なくなるのはあたりまえのことで、その中で生きていく努力をすべきです。国民にとっても良いことであり、建設業界もしんどいが、 競争の中で勝ち抜いていくべきです。だからこそ私は今がチャンスだと思っています。パイは必ず減ります。もともとパイ自体が多すぎで、 スクラップ&ビルドのように壊すことを前提としたパイなど、虚構にすぎません。

--すでに他の産業が経験してきたことを建設業界も経験する。

河社長

当たり前のことで、これまで国民を犠牲にしてきたわけですから。パイも減り仕事もへり、経営は厳しくなるでしょうが、その中で生き抜くべきで、 現場主義にこだわり、より川上に、資源に近づく。当社の場合、仕入れ先やメーカーから現金で買う場合もあります。それにより現場はコストダウンを図ることができます。

--メーカーと直接取り引きすることで中間コストを削る。リバー産業がローコストでマンションを提供できる仕組みがあるわけですね。

河社長

現在、よほど良い物件でない限りマンションは売れませんね。とはいえ現金で買われる方、また外国人の方も多いです。 特にユニバーサルシティ駅前のマンションは約8%が外国の方です。外国の方にしても、駅前でしかも梅田まで10分のマンションは良い買物らしいです。

--なるほど。いろいろとお話をお聞かせいただきましてありがとうございました。これからも良質な住宅供給を通じて、 住みよい、住みたくなるまちづくりへご尽力下さい。ありがとうございました。

リバー産業は、1963年(昭和38年)8月に河社長が岸和田市で創業を開始。創業以来、住宅の資産価値を高め、入居者の暮らしにゆとりと潤いをとする「将来財産」の基本理念に加え、現場一体となった徹底的なコストカット・現場主義を貫き、これまで数多くの良質な住宅の供給に務めてきている。

 主な取り組みでは、樹木や風、水、光などの自然の摂理を活用した透水性自然色舗装の採用はじめ、狭隘な敷地でも丘を作り、立体的な植栽と道を蛇行させることで緑化率より緑視率による体感温度を下げる工夫、外壁の遮熱断熱工法や高断熱Low‐Eペアガラス、屋上高反射塗装等の採用により環境に配慮し、省エネルギーを実現。

 また、安全・安心がキーワードとされる現在において、震災時の避難所と同等で、通常のマンションの1.25倍の強度の耐震等級2を取得、幅広い世代が長く安心して暮らせる住宅づくりにも務めている。

 また、日本初の取り組みとして、2003年に法制化されたシックハウス対策法に先駆けること7年前の1996年には「リバーカントリーガーデン京橋」において、超高層マンションでは初めて24時間常時換気システムを導入。導入に際しては実物大の実験室で実証実験を行い、健康マンションを実現。

 さらに、2005年には、環境省の二酸化炭素排出抑制対策事業地域協議会代エネ・省エネ対策推進事業の認定を「リバー平野ガーデンズ」と「リバーガーデンこのはな」で初めて認定され、2006年には「リバーガーデンコスモスクエア」「リバーガーデン出来島」で、マンションの運営管理が適正に行われているかどうかを第三者が検査する「マンション未来ネット」(国土交通省の補助を受け(財)マンション管理センターが運営)で、新築マンションでは初めて登録を行うなど、その先進性とこだわりは創業以来、不変のものとなっている。

 このほか、(財)建築環境・省エネルギー機構の建築物総合環境性能評価システム(CASBEE)の最高ランクであるSランクを、マンションでは西日本で初めて「リバー平野ガーデンズ」で認定。大阪市においては「リバー平野ガーデンズ」で2006年に大阪市の子育て安心マンション認定制度と「リバーカントリーガーデン京橋」では、大阪市優良建築物等整備事業での認定第一号を、それぞれ取得した。

 大阪府では、2003年に「リバーガーデン東大阪新庁舎アベニュー」で、100戸以上の大規模マンションとして66の基準をクリアしたことから大阪府防犯モデルマンションの認定第一号を取得、2007年には、透水性舗装や屋上緑化に変わる高反射塗装の提案により地域に貢献する企業として大阪府ヒートアイランド対策導入促進事業として採択されている。

 これらの取り組みにより、全国はなのまちづくりコンクールでの最優秀賞・建設大臣賞と優良賞・推進協議会長賞、大阪市緑化施設表彰など、数多くの賞を受賞している


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