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大商鋼材株式会社 藤本拓司代表取締役社長 【平成21年9月14日掲載】 |
画期的な新型覆工板プレストレスデッキ (1.4メートル×4.0メートル) 大幅な工期短縮とコスト縮減を実現 引合も活発 増産体制に |
昨年から金融危機の影響を受けて、建設業界も依然として厳しい状況が続いている。 そうした中、堅実経営で着実に業績を伸ばしている企業も少なくない。 その一つ、大商鋼材(株)(本社・大阪市、藤本拓司代表取締役社長)が産学官連携で開発した画期的な新型覆工板プレストレスデッキ (1.4メートル×4.0メートル)は、新建設産業を担うヒット商品にまで成長した。 引合も好調で、増産体制に入っているという。大幅な工期短縮、コスト縮減、作業効率の向上を実現する同ブレストレストデッキの 誕生秘話から受注状況など、さらには国土交通省が支援している「下請資金繰り支援事業」について、藤本社長に感想を聞いてみた。(水谷次郎)) |
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■新型覆工板プレストレスデッキ (1.4メートル×4.0メートル) は、 関西大学の坂野昌弘教授が考案した画期的な「鋼板プレストレス強化工法」を応用したもの。大商鋼材(株)らが坂野教授の 指導を受け、産学連携で開発された。 |
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藤本社長 | ||||||||||||||||||||
「覆工板が開発されてから四十年以上もの間、応力上の制約から長さは3.0メートル限界とされていました。 十年ほど前に私がお客様から長スパン化の要望を聞き、様々な方法を考えてみましたが、 総重量や耐久性などの面で、どれも芳しくありませんでした。そんな折、 ある会合で関西大学環境都市工学部の坂野教授を紹介していただき、鋼板プレストレス強化工法を知りました。 この工法を利用すれば母材を変更することなくシンプルな構造で、もしかしたら長スパン化に使えるのでは…と思いました。 それから、とんとん拍子で話が進み共同研究が始まりました。全くの別件で坂野教授にお会いしたのですが、そこから長スパン化が実現したわけで、 人の出会いというのは本当にわからないものですね」 |
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■需要は好調に推移。 五月末の決算は増収増 益。関西の躍進企業と して注目を集めている。 |
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藤本社長 | ||||||||||||||||||||
「各方面から引合があり、増産体制に入っています。自社で約500台保有していますが、それもフル稼働に近い形で回っています。 大阪と福岡を拠点とし、静岡県や千葉県など関東方面も含めて全国的に出荷しています。現在、引合物件は関西・関東方面から約330台。 徐々に広がってきているという実感がありますね。会社の活力につながっており、企業価値を高めています。 こういった取り組みが、社員の成長につながれば喜ばしいことだと思っています。私は常日頃、社員に対しては、まず自分がすこやかな精神を持つこと、 人のために生きられる人になってほしいと言っています」 |
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■プレストレスデッキ (1.0メートル×4.0メートル)は、桁材を省くことができて作業空間が広がる。 また、桁高さも低くなるため十分な作業高さが確保でき、土被りの少ない構造物に最適。 「作業効率の大幅なアップ」「工事全体の鋼重低減で経済的」というのが大きなメリット。 |
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藤本社長 | ||||||||||||||||||||
「製造コストは、通常よりも高くつきます。しかし、使い勝手がいいという現場からの報告を聞いています。 例えばNEXCO中日本高速道路(株)は名神高速道路の彦根管内料金所で、ETCのレーンに地下道を造る工事を積極的に進めていますが、 そこがちょうど幅員4メートル。路面が上がってしまうと、車が跳ねて危ないために、この覆工板が採用されています。 この工事を含めてNEXCO関連工事としては、中日本高速道路(株)と東日本高速道路(株)からの引合があり、 現在計四件の通路設置工事を進めています。国土交通省中部地方整備局の工事(三重県)でも採用される予定です」 |
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■神戸市建設局発注の三宮南地区高潮対策西工区土木工事におけるモデル現場のコスト縮減効果は、桁受不要で約20%の鋼重削減、 覆工板の撤去・復旧時間を約85分/日(72%)短縮、工期は九日間短縮(道路占用期間も短縮)、全体コストは施工コストの大幅な縮減(25.7%)によって、 約136万円の縮減を果たした。 |
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藤本社長 | ||||||||||||||||||||
「この工事は、古い雨水幹線(水路)を撤去し、新しいボックスカルバートに切り替えるものでした。 リース単価増によって約9%材料費がアップしましたが、桁を外したり付けたりするのが省略でき、大幅な工期短縮とコスト縮減を実現しました。 この覆工板を使うと、すぐ作業に入れますので、本来行わなければいけない掘削、取り壊し・設置作業にその時間が使えるというわけですね。 また、一日当たり何もしなくとも世話役やガードマンなどには約十万円以上の経費がかかります。材料費が少し高くついても、 全体としてコストは下がる。さらにこの工事に際しては、神戸市が国道二号線を止めて工事を進めました。道路占用期間が短くなることは、 それだけみなさんに迷惑をかけなくて済む、交通環境にも配慮した工法だと思っています」 |
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■国土交通省は七月から「下請資金繰り支援事業」をスタートさせた。下請の建設企業や資材業者を対象に、 元請企業に対して保有する債権や手形をファクタリング会社(債権の買取会社)に譲渡し、早期の現金化を国が支援するもの。 八月末の利用実績は約八億円で、徐々に増えている。 |
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藤本社長 | ||||||||||||||||||||
「主に設計変更があった場合ですが、下請に対する工事費の支払いについて、三カ月間待たされるはザラ、長い時は半年以上も待たされます。 理由は、元請と発注者の間でトラブルになるケースも多いと聞いています。話がつくまで待ってほしいと。しびれをきらしてこちらから声をかけると、 すでに元請が破錠しかけているということがありました。その間、苦労して取り立てている債権だから15%程度の間接的な経費はすでにかかっています。 人件費だけでも相当かかり、労務費というのはすごいんですよ。そうであれば、私は15%渡し(債権買取の設定利率、年15%が上限)でも85%手に入るほうが よい場合があると思いますね。一千万円の債権が五百万円になって赤字になるよりも、原価ぎりぎりで債権が回収できればメリットが大きいと言う現場は たくさんあります。最終的には、末端にいる業者が一番苦労している。国と締結したファクタリング会社が債権を買い取ってくれるこの制度は、 良いシステムだと私は思っています」 |
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