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大阪府住宅まちづくり部 堤勇二部長    【平成29年02月20日掲載】

都市魅力向上へ取組み進める

密集市街地対策 新たな手法で成果


 住み良いまちづくりを実現し、都市魅力向上を目指し各種の施策を推進している大阪府住宅まちづくり部。安全・安心はもとより、住み心地まで考慮した住宅や建築物をはじめ、景観にも優れた都市空間と街並み形成に努めながら、将来における大阪のまちづくりの方向性も描いている。これらの取組みの成果を踏まえながら、「活力と魅力ある大阪を目指す」とし、さらなる事業展開に意欲を示す堤勇二部長に、今後の事業推進にあたっての見通しを聞いた。

■まずは、今年度におけるこれまでの取組みについて。

 今年度の成果としては就任以来の課題であった「グランドデザイン・大阪都市圏」を昨年12月に策定することができました。平成24年6月に策定した「グランドデザイン・大阪」と合わせて大阪の将来像が出揃ったことになります。
 また、府の住宅まちづくり行政の大きな方針として、従来の住宅まちづくりマスタープランに代わる「住まうビジョン・大阪」を策定しました。同ビジョンでは、大阪らしさを出すため、従来型の安全・安心を主眼としていた計画だけでなく、活力と魅力ある大阪を目指すための具体的な施策を示しました。
 事業として取り組んできたのは、密集市街地対策です。就任前の平成25年度と比べて現在では予算は7倍、老朽住宅の除却戸数は20倍になっています。推進にあたっては都市整備部等と連携して密集市街地対策推進チームを立ち上げ、地元市と一緒になって進めています。これまでの成果としては、対馬江大利線、寝屋川大東線や三国塚口線といった延焼遮断帯の整備について、従来の住宅の除却と延焼遮断帯となる道路拡幅を個別に実施していたものを一緒に進めるといった新たな手法を導入しました。

■なるほど。

 また、うめきた2期に関して、新たに基金を設立し、民間企業から2千万円の寄附をいただきました。グランドデザイン・大阪で掲げた全面みどり化に向け事業の実施段階に入っていきます。 さらに、万博とIRに関連している夢洲のまちづくりにも取り組んでいきます。

■府営住宅関連事業では。

 昨年、今後10年間の活用方針を示す「大阪府営住宅ストック総合活用計画」を策定しました。この中では、耐震化率、建替事業量のほか、子育て支援への空室活用、単身入居者死亡にかかる未返還住宅の解消も目標に掲げました。また、府営住宅の市町移管については、地域のまちづくりや、福祉施策と緊密に連携した住民サービスの提供を進めるため、大阪市への移管実施に続き、大東市、池田市とも合意いたしました。
 このほか、「住宅建築物耐震10カ年戦略・大阪」を昨年に策定しました。前計画では、住宅の耐震化率を全国一律の90%としていましたが、大阪の地域性等を踏まえ、計画年数を延ばすとともに、目標については95%を目指すこととしました。府有建築物に関しても、10カ年戦略を受けた形で「新・府有建築物耐震化実施方針」を昨年8月に策定しております。

■建設業界では、担い手の確保育成が課題となっています。

 人材の確保育成に関しては、商工労働部と連携して人材確保推進会議において女性や若者が建設業界で活躍できるよう、取組みを進めています。特に女性の活用に着目し、左官や鉄筋、とび等の分野で女性が進出しやすいような環境整備を図っていくことを考えています。また、建設団体や各社が取り組む入職促進事業等に表彰制度等で支援していきます。
 女性の登用については、住宅まちづくり部でも取り組んでいます。ここ数年、建築職の採用人員の半数以上は女性で、昨年からは高卒程度の採用区分の職員も採用しています。今後は女性の力を活用してソフト・イノベーション≠ノ取り組んでいきたいと考えています。
 これは、例えば府営住宅に関わる業務の中で、府営住宅の設備仕様などの設計、市町移管、指定管理者との協議等で、女性ならではの切り口や視点で、様々な提案を期待するものです。
 また、勤務時間も働きやすい時間に変更することで女性の活動領域を広げることができると思います。少子化の中では、建設業においても女性の能力を活かすことが求められていくと思いますね。

■今後の取組みは。

 住まうビジョン・大阪のもとに、大阪に住まう魅力の情報を発信し、大阪への移住や定住を促進します。また、新大阪から阿倍野まで11kmを「みどり化」するため「みどり化ビジョン・大阪」の策定に取り組みます。さらに、定住魅力あふれる都市空間を形成するための、新しい「都市景観ビジョン・大阪」の策定に取り組みます。
 東西二極の一極となる大阪を実現するため、広域的な都市構造への転換を目指し策定したグランドデザイン・大阪都市圏においては、紀州と淡路島の紀淡海峡を「紀淡海峡トンネル」でつなぐ大阪湾環状道路の形成を目指すことも構想しています。これは、関空活性化はもとより、万博やIRへのアクセス、防災上でも有効で経済効果も期待できることから、関西成長への新たな起爆剤として国家プロジェクトを目指していきます。

■ありがとうございました。



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