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岡下昌平衆議院議員(クルーズ船観光振興議員連盟事務局長)  【平成28年09月26日掲載】

クルーズ船誘致で堺泉州域の再生を

まずは「飛鳥II」を大浜に、来年秋メド


 昨年、クルーズ船で日本を訪れた外国人は112万人。当初目標としていた100万人の大台を実に5年前倒しでクリアした。そこで政府は、新たに2020年に500万人とする目標を掲げるとともに、その実現に向けて、今年度の第二次補正予算では「クルーズ船に対応した受入れ環境の整備」として、国費166億円を計上。さらに来年度の概算要求でも国費137億円(前年比66%増)が盛り込まれた。
 これから港を抱える自治体間でクルーズ誘致をめぐる熾烈な競争が予想される中、堺泉北港や阪南港を抱える泉州地域は具体的にどう取り組むのか。堺市選出で自民党のクルーズ船観光振興議員連盟(クルーズ議連)の事務局長も務める岡下昌平衆議院議員に聞いた。

■はじめにクルーズ議連の事務局長に就任した経緯について教えてください。

 「このクルーズ議連が設立されたのが昨年6月。既に自民党には港湾議連があったが、私の所属する自民党・志師会の二階俊博会長が『これは必ず大きくなる事業だ』と。それでクルーズに特化した議連を新たにつくることになった。その志師会の総会において、二階会長から私に『事務局長をやれ』と指示があった。『岡下、お前のところは堺泉北港がある。堺はかつて南蛮貿易で栄えた地域だ。いっぺん汗をかいてみろ』と。そして先月には、議連で提言書を取りまとめ、結果、第2次補正で166億円の国費をつけることができた。あわせて、民間事業者による旅客施設等の建設に対し、資金の無利子貸付制度もスタートさせた」

■国土交通省の資料によると、クルーズの誘致に関しては九州地区がかなり先行しています。

 「クルーズ船の寄港回数で言うと、昨年、大阪港は21回。一方で、博多港は259回、長崎港は131回。さらに今年は博多港で約400回、長崎港では約200回の入港を見込む。ものすごい勢いで伸びている」

■博多や長崎の寄港回数が多いのは何故でしょうか。

 「もともと、福岡や博多は連絡会議を立ち上げるなど、早くから熱心に誘致活動に取り組んでいた。また、地理的にも有利だと言える。例えば、ロイヤル・カリビアン社(米国)は上海を母港とし、台湾経由で博多、長崎、那覇などに寄港する大型船を就航させている。カジュアルカテゴリーのショートクルーズだが、このツアーがバカ売れしている。つまり博多港や長崎港については、こういったアジア圏の周遊ルートとして既に確立されている」
 「それに比べると大阪は遅れている。昨年の6月に議連を立ち上げた時点で、全国クルーズ活性化会議に参加していたのは天保山を有する大阪市だけ。堺市はもちろん、港湾管理者である大阪府も入っておらず、昨年8月にようやく加入した。港をどう活用して賑わいを創出するのか。その辺りの意識が低かったのではないか」

■先月開催された「堺泉州地域におけるクルーズ船誘致に関する連絡会議」では、クルーズ船誘致の候補先として、大浜(堺市)、助松(泉大津市)、新貝塚(貝塚市)の3つの岸壁を挙げましたね。

 「16万トン級の大型クルーズ船であっても、水深10m〜12mの岸壁であれば十分に受け入れられる。つまり喫水の面では、これらの岸壁はクリアしている。ただ、問題となるのは設備。クルーズ船が着岸した時には必ず給水しないといけない。今のところ、その設備が整っているのは大浜第5号岸壁だけ。従って、まずはここを主たる岸壁としてクルーズ船を受け入れる方針だ。全長350m〜360mの大型外国船を接岸するには長さが足りないが、大浜から始めることが現実的な選択だろう」

■今後の誘致活動については。

 「最初は日本船社にターゲットを絞りポートセールスを展開する。具体的には、『ぱしふぃっくびーなす』『日本丸』『飛鳥U』の3つ。この中で最も大きいのが乗客定員872人の飛鳥Uだが、来年秋頃をメドにこの飛鳥Uを一度大浜に受け入れたい。そうやって当面は日本船籍で実績を重ねながら、大型外国船の受け入れのためのハード、ソフト両面でのノウハウを積み上げる。それが一番の近道ではないか。実際、日本船の寄港実績がなければ、外国船は入ってこない。あわせて現状では、仮に外国の大型船が入港したとしても、CIQ(税関・出入国管理・検疫)などの問題もあって、とても対応できない」

■ソフト面では岸壁周辺の観光資源のPRが非常に大事です。

 「関西空港を抱える堺泉州域。その観光資源の中で、やはり大きなポイントとなるのが来年夏の百舌鳥・古市古墳群の国内推薦。これを勝ち得れば、最短で2019年には世界文化遺産に登録される。そうなると、『堺の港に行ってみようか』という船客も増える。また、『ふとん太鼓』や『だんじり』など地元に根付いた祭りも泉州の魅力の一つ。いずれにせよ、いかに堺泉州域に客を呼び込むか。その仕掛けをつくらないと。また観光資源の整備の他にも、歓迎行事といった寄港時対応など、まだまだ検討課題は多い」

■舞鶴市では外国船籍の受け入れまでおよそ5年かかった。まさに腰を据えて取り組むテーマだと言えます。

 「最大級のクルーズ船が入港すれば、その乗客だけで約5000人。そうなると、観光バスは最低でも100台必要になる。加えて、個人客はタクシーを何台も連ねて観光地をまわる。爆買いが失速したとも言われるが、外国人観光客の地域経済に与えるインパクトは依然として大きい。当然、誘致競争は激化している。日本の港は全国に約1000ヶ所あり、寄港地として選ばれることは容易ではない」
 「中世、堺は国際貿易港として繁栄し、黄金の時代とも言われた。しかし、その港がいつの間にか廃れてしまった。私はあの栄華を取り戻したいと思っている。政府はオリンピックが開催される2020年に4000万人に訪日観光客を増やし、その中でクルーズ船の観光客を5000万人にするという高い目標を掲げた。堺泉州域の再生のためにも、まさに関係者が一丸となってクルーズ船を呼び込む努力が必要だ」



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