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大阪労働局労働基準部 三浦一志安全課長  【平成27年06月29日掲載】

「命綱GO活動」さらに推進

新たな取り組み
「STOP!転倒災害プロジェクト2015」


 第88回全国安全週間が今年も7月1日から7日まで「危険見つけてみんなで改善 意識高めて安全職場」をスローガンに展開される。昭和3年(1928年)に開催されて以来、「人命尊重」の基本理念の下、一度の中断もなく続けられている。大阪府の建設業における昨年の死亡者数は14人で一昨年より7人減少し、統計開始の昭和23年以来、過去最少となった。災害態様を見ると、最も多い墜落・転落に続き、転倒が2番目となっていることから、大阪労働局では、建設業労働災害防止協会大阪府支部など関係団体と連携して、昨年度から推進している「命綱GO活動」に加え、今年度新たに「STOP!転倒災害プロジェクト2015」を展開する。その活動の中心となる大阪労働局労働基準部安全課の三浦一志課長に、重点項目や目標などを聞くとともに、取り組みを紹介する。

■まずは昨年の大阪府内における労働災害の発生状況についてお聞かせ下さい。

 昨年の全国での死亡災害が全産業、建設業ともに増加した一方で、大阪では、全産業で53人と一昨年より15人減少、とりわけ建設業では14人と一昨年より7人減少し、過去最少となりました。これはひとえに関係者のご努力と感謝いたします。しかし、建設業につきましては、依然として死亡災害の全産業に占める割合がトップであり、また、休業4日以上の死傷災害は、全国では減少しましたが、大阪では増加し、全産業8,138人のうち836人と一割以上を占めております。
 昨年は、6月末時点で死傷災害が3000人を超えたため、8月から10月にかけて3カ月間緊急的な対策を実施し、主に建設業及び製造業に対し集中的な監督指導や監督署長による管内の主要企業約150社への要請を行い、増加の歯止めに努めました。今年は、年初から現場への立ち入りやパトロールを強化しております。その結果、5月末時点の速報値で建設業につきましては、前年同期と比較して18.9%の減少で推移し、死亡者数も2人と、前年同期の8人と比べて大幅に減少しております。

■依然として墜落・転落災害が多く発生しております。

 そうですね。墜落・転落災害を発生場所別に見ますと、「はしご」、「脚立」、「踏み台」からの墜落が最も多く、足場からの墜落の約二倍となっています。はしごはあくまでも昇降するための用具です。そのはしごを立て掛けてその途中で作業するというのは、非常に危険ですので避けていただきたいですね。現在、ローリングタワーや高所作業車の確保に加え、脚立の正しい使用方法の教育など、取り組みの徹底を呼びかけております。

■今年度の大阪労働局としての取り組みは。

 平成25年度から取り組んでおります「ゼロ災・大阪『安全見える化運動』」を引き続き展開し、昨年度から始めた「命綱GO活動」についても積極的に推進いたします。また、今年は、新たな取り組みとして「STOP!転倒災害プロジェクト2015」を労働災害防止団体等と連携して実施し、転倒災害防止の取り組み例を公表するなど、事業場における安全衛生意識の向上を軸とした対策を推進しております。
 転倒は、全産業の死傷災害において1番多い災害であり、2番目が墜落・転落、3番目がはさまれ・巻き込まれと続き、この上位3種の災害で死傷災害全体の52%を占めております。建設業では死傷災害836人中、墜落・転落306人に次いで、転倒が2番目の89人となっております。「転倒」という身近なテーマから職場の安全意識を高めて安心して働ける職場環境の実現を目指していただきたいと思います。

■最後に、建設業における取り組み及び留意事項についてお伺いします。

 足場からの墜落・転落災害防止措置の強化として、労働安全衛生規則の一部を改正し7月1日から施行します。また、これに併せて平成24年に策定した「足場からの墜落・転落災害防止総合対策推進要綱」についても5月に改正いたしました。この背景には、足場からの墜落災害が増加傾向に転じていることや、墜落災害の9割で現行の規則が求める措置の違反が見られることから、より効果的な墜落防止措置を講じるためです。
 具体的には、足場における高さ2メートル以上の作業場所に設けられる作業床の要件として、改正前は、幅40センチ以上、床材間の隙間3センチ以下とすることなどに対し、改正後には、床材と建地との隙間を12センチ未満とすることなどが追加されました。更に、足場の組み立て等の作業に係わる業務に就く労働者に特別教育を行うことが義務づけられました。ただし、施行日(7月1日)以前から既に足場の組み立て等の作業に従事されている方に対しては、2年間の猶予がありますので、事業者の皆さまには、計画的に労働者が特別教育を受講できるよう配慮をお願いいたします。

■景気が徐々に回復している中での労働災害減少は、「安全見える化運動」を含めた取り組みが大阪で浸透してきているからではないでしょうか。これからも災害防止にご尽力下さい。

 三浦一志 (みうら・かずし)
 昭和56年4月労働基準監督官任官、平成22年4月鳴門署署長、同26年4月大阪労働局労働基準部健康課長、同27年4月から現職。


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