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大阪府都市整備部 竹内廣行部長  【平成26年06月02日掲載】

大阪の成長、意識とスピード感持って

府民の安全・安心を守る


 今年4月に就任した大阪府都市整備部の竹内廣行部長は、東京と並び大阪を我が国の二極化とするためには「インフラの充実と大規模な自然災害等への備えが急務」だとし、今こそがその時期だと捉える。このため、「危機意識を持ち、スピード感を持って取り組まなければならない」と語る竹内部長に、就任にあたっての抱負と、大阪の成長を目指す上での事業展開について聞いた。

 

 「この時期の就任に責任とともにやりがいを感じています」と就任にあたっての抱負を語る。「この時期」とは、南海トラフ巨大地震等の災害に対し、府民の安全・安心に対処するための緊急な備えが必要とされており、また、大阪ひいては関西を成長させる上で早急に交通インフラ整備を強化しなければならない、いわば府民の安全・安心と大阪の成長、「これらが必要な時期」だと言う。

 特に、東京オリンピック開催が決定し、関連するインフラ整備が進むとされる東京に対して、東西の二極化を目指す大阪がこのまま何もしなければ、「ますます東京との格差が大きくなってしまう」との思いがある。

 このため就任に際し、「このままでは東京と大阪の二極化は実現できない。強い決意で交通インフラを整備し、大阪を成長させなければ」と、職員に対し「危機意識を持ち、切実感、スピード感を持って取り組んで行こう」と訓示を行ったとする。

 安全・安心の確保については、南海トラフ巨大地震対策やゲリラ豪雨等による浸水対策に取り組み、このうち南海トラフ巨大地震対策では「特に緊急で整備を要する箇所については、対策工事を3カ年で完了させる」とし、大阪の成長では、産業施策や観光施策を含め「トータルの施策と連携した都市経営を進めていく」とした。

 このうち、交通インフラの整備に関しては「企業をはじめ人やモノを呼び込むことで大阪の成長を図るためにも重要」との認識を示し、公共交通戦略で打ち出している北大阪急行延伸や大阪モノレール延伸、なにわ筋線、西梅田十三新大阪連絡線の重点四路線を着実に具体化し、道路では大阪左岸線の延伸をはじめとするミッシングリンクの解消に取り組む。

 また、既存の道路や鉄道についても「利用者の視点に立った取り組み」を心掛ける。その一つであるハイウェイ・オーソリティ構想では、取り組みの一環として進めてきた阪神高速や西日本高速等の料金体系一元化へ向けて国に働きかけてきた結果、平成29年度の実現に向けた合意が得られている。

 さらに、これら防災・減災と大阪の成長とともに今年度のテーマとしてインフラマネジメントの推進を挙げる。そのベースとなるのが、「限られた財源と人材を有効に活用するアセットマネジメント」で、インフラの整備と維持管理をトータルでマネジメントするものだ。

 既に大阪府では、10年前からインフラにおける維持管理の重要性を国に対して訴えるとともに、全国のアセットマネジメント担当者会議においても呼びかけ、他県への支援も実施しており、「これらをさらに進めていいきたい」と意欲を見せる。

 大阪等の大都市圏での南海トラフ巨大地震対策の遅れは「日本経済全体に影響を与える」ことから、首都圏はもとより中部圏等と連携しながら、「国の施策としての位置付けや財源措置などを働きかけていく」とする。

 また、アセットマネジメントの取り組みにおいて府では、老朽化した橋梁等の構造物の劣化経過等のデータをまとめたマニュアルを作成し他県へ提供しているが、そのデータの分析等において大学や研究機関の協力を得ており、 既存インフラの延命化等により更新時期を遅らす等の手立てを講じてきたが、「いつかは更新しなければならず、その更新にあたり、どのタイミングで行うかということに関して、外部有識者を含めた審議会を立ち上げております」と産官学が連携した取り組みの必要性も挙げる。

 技能労働者をはじめとする労務不足等の影響に関しては「昨年度の土木工事には大きな影響はなかった」としながら、「東北の復興工事やオリンピック関連工事が本格化すれば影響が出てくるのでは」と語り、 「防災対策等の必要な事業を実施する時に人材がいないというのは問題だ」と先行きに懸念を示す。

 人材不足に関しては「業界だけでなく、官民問わず建設に携わる者が少なくなってきている」とし、社会保険加入推進や設計労務単価引き上げ等の国の施策とともに、「我々も発注や入札等で考えていかなければならない部分もある」と人材確保と育成の必要性を強調する。

 仕事をする上では「熱い思いを持って取り組む」がモットーであり、職員には「チャレンジ精神を持て」と言う。その思いは、大阪府自体がこれまで、寝屋川流域下水道や連続立体交差事業、千里ニュータウンなど、 「全国でも初めてとなる制度や事業に取り組んできた」とし、現在ではハイウェイ・オーソリティ構想やアセットマネジメントなど、全国に先駆けて取り組んできた経緯からで、「規制や法律があるからできないとするのではなく、自ら制度をつくって仕事に取り組む気概を持ってほしい」。

 その流域下水道事業やモノレール延伸、関空二期の土砂採集事業など、それぞれの時代に必要な節目節目の事業に立ち会うことが出来たことから「全ての業務に思い出がある」。和歌山県出身。58歳。

 
 竹内廣行(たけうち・ひろゆき) 
昭和55年3月京都大学大学院工学研究科修了、同年4月大阪府採用、平成13年4月土木部交通道路室参事、同14年4月企画調整部企画室参事、同16年4月交通道路室道路環境課長、同18年4月交通道路室道路整備課長、同19年4月茨木土木事務所長、同21年4月交通道路室長、同23年4月住宅まちづくり部理事。


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