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UR都市機構関西文化学術研究都市事業本部 瀬渡比呂志本部長 
                                      【平成25年06月17日掲載】

持っている力を次に繋ぐ

地域ごとの特性生かし「エコ」推進


 独立行政法人都市機構関西文化学術研究都市事業本部の瀬渡比呂志本部長はこのほど、本部長就任にあたっての会見を行った。会見で瀬渡本部長は、平成30年に完了となるニュータウン事業や、今後の学研都市のあり方について「持っている力を、次にどのように繋げ発展させていくかが課題であり、自らの大きな仕事」とし、数々のニュータウン事業に携わってきた経験を生かした今後の事業展開や抱負などを語った。

■就任に際しての抱負をお聞かせ下さい

 URが行っている関西学研都市の事業は、ご承知の通り最終盤にきています。学研都市建設促進法が昭和62年に制定されて以来26年たちました。URの法定事業の完了は平成26年当初を目指しています。我々の先輩方がロマンをもって作り上げられた事業を、きちっとやり遂げることは、絶対であろうと思います。
 それから、今までいろんな方々が積み上げて作ってこられたものをどう活用するか、また、どう発展させていくかということが今の時期大事なのではないかと考えています。学研都市のように努力して圏域をつくってきた所については、持っている力をどう次に繋げ発展させていくか、作ってきたものをどう活用するかが最大の点であり、私の大きな仕事だと考えています。

■事業の活用と発展を具体的に

 研究施設等だけでなく、ものづくりも可能なゾーンも作りはじめており、ものづくり系の企業も順次立地されています。それぞれの施設が相互に連携し合って相乗効果を生み、地域が発展していくことが大切。事業を進めている組織に関しても、URだけではなく、京都府、大阪府、奈良県など地元行政から、また関西文化学術研究都市推進機構など様々な組織が力を合わせて係わっています。学研都市が立地している施設の連携・発展、そして住民の生活の豊かさに繋がるようセンターゾーンを充実させていく―その道筋をURが今後も引き続き何らかの形で作っていくことも重要な役割の一つだと思います。

■木津中央地区に移転する京都大学大学院農学研究科付属農場に対しての期待は

 農場といいましても、これからの環境施策ですとかバイオなど、次の時代をリードするキーワードをたくさん持っている施設です。その施設が、今の時期に移転してくるということは、次の時代を予測する中核施設になるという見方をすればよいのはないでしょうか。木津北地区も、クラスターとして自然を生かした地域で、学研都市全体の里山として見ることができますから、新たな圏域の中の里山を作っていくというようなことも、エコとかバイオなどの背景の一つになると思います。

■エコタウンプロジェクトの実証実験を行われましたが、今後どのようにまちづくりに

 京都府や同志社大学と連携して、建物におけるエネルギーの有効活用についての実証を行っており、居住者自身がエコを意識したり、エコをステイタスと思えたりできるような取組みを行っております。木津や同志社山手もそれぞれ少しツールは違う面がありますが、切り口としては環境・エコということで、地域ごとの特性を生かしたエコを進めていきたいと思っています。

■平成30年にニュータウン事業完了となります

 学研都市の場合は、住宅だけではなく、施設用地の規模が大きいため、立地施設の決定はURだけでなく、地域づくりを施策とする公共団体と力を合わせて、どのような施設を誘致するかが重要です。学研都市の立地特性とか特区の意義とか、関西圏域全体の中でどのような役割を果たしているかというようなことを、圏域の力としてPRをして、それに注目してくださるところの誘致を進めたい。

■今までで思い出に残っている仕事は

 ほとんどが関西勤務であり、高度成長期以降の関西におけるニュータウン事業の大半に係わってきたので、そういった責任や自負を持ちながら仕事をしないといけないと思っています。関西でいえば北摂・北神・名塩という巨大なエリアを昭和60年頃から順次まちびらきしていきましたが、それらについては絶対やりきるという思いで取り組みました。それぞれの地域の特性を生かさなければいけないと考えておりましたので、相当一生懸命やったという思いです。
 もう一つは、阪神大震災の復興事業です。ちょうどハーバーランドを担当している時で、震災後すぐにHAT神戸を任されることになりました。一年後の目標に向かい持っている力を全部出し切らなければならないという思いで、本当に必死に取り組みました。また、これらを含めた事業経験の継承は行っていきたいと思います。都市再生事業として必要な事業を行い、それが技術の継承に繋がれば―計画論などをアーカイブスとして残すことが私のやるべき仕事の一つではないかと考えています。

■座右の銘やモットーなどがあれば

 あえて言えば「先憂後楽」でしょうか。まちをつくるということは、今の時代、そして次の時代に何をやっていけば良いのか、事業をやるのにどこを押さえておけばいいのかを、いつも最初に考えながら仕事を進めていきます。すごく派手な事業から地を這うような事業にも取り組んできました。仕事の中身もさることながら、先に向けての道筋を立て、思い悩み考え取り組んだ後に、それを喜ぶ人の姿を見て楽しむということでしょうか。

■趣味は

プライベートでも、まちづくりに係わることが好きです。奈良でまちづくりを考える会の事務局長をボランティアで務めています。

瀬渡比呂志(せと・ひろし)
 昭和54年3月京都大学工学部建築学科卒業。同年4月宅地開発公団、平成11年10月都市基盤整備公団、同16年7月独立行政法人都市再生機構、同19年6月西日本支社ニュータウン事業ユニット業務管理チームリーダー、同20年6月西日本支社大阪駅北都市整備事務所長、同21年12月西日本支社都市再生業務部長、同24年4月西日本支社ニュータウン業務部長、同25年4月西日本支社関西文化学術研究都市事業本部長。姫路市出身、59歳。


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